本連載では、Appleの最新情報を噛み砕いて解説する。第8回はAppStoreで配信が始まった「ショートカット」アプリについて、その概要を紹介したい。

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WWDC 2018で「iOS 12」について発表されたのは、6月上旬のことである。あれから早くも3か月が経過し、ついに正式版の提供が始まった。本連載の第1回でも取り上げたが、筆者はiOS 12で登場した「Siriショートカット」機能に期待していた。

このSiriショートカット機能は、実は設定アプリ内に標準搭載されている機能と、アプリとして別途配信される機能の2種類に大別される。

「設定」アプリのショートカット

設定アプリで利用できるショートカット機能は、かなりシンプルな仕様となっている。ざっくり言うと、Siriで特定の操作を呼び起こすための「フレーズ」を自由にカスタマイズできるというものだ。特定の操作とは、ユーザーが最近利用した機能であり、自由に選択することはできない。筆者が検証した範囲では、いまのところ複数操作を組み合わせることもできないようだ。

例えば、指定のメモを起動したり、特定のウェブサイトにアクセスしたりする“いつもの”動作を、使いすいフレーズで呼び起こせる。それは「買い物リスト」でも良いし、「ディードットを読みたい」でもなんでも良い。「マスター、いつもの」だってOKだ。

こうした登録操作は、設定アプリ内の「Siriと検索」にある「ショートカット候補」の欄から行える。また、登録したフレーズは「マイショートカット」として保存され、管理できる。

App Storeの「ショートカット」アプリ
一方、今回紹介したい「ショートカット」アプリは、App Storeからインストールするもので、先述の設定内の機能とは連携はするものの、内容的には全くの別物となっている。

同アプリには、プログラミングのパーツのようなものが用意されており、それを組み合わせて、自由な動作を組み立てられる。例えば、「最新の写真を取得」>「共有」という流れを指定したら、“最新の写真を選択して、共有メニューを開く”という動作が、iPhoneによって半自動的に実行される。

↑最新の写真を選択して……

↑共有メニューを開く、と。

こうしたレシピを実行するには、「ショートカット」アプリ内にあるボタンタップすればよい。ショートカットアイコンとしてホーム画面に設置することも可能だ。ウィジェットから操作してもよい。あるいは、任意のSiriのフレーズとして設定しておくこともできる。

なお、フレーズを登録した場合には、先述の設定アプリ内にある「マイショートカット」でまとめて管理される。

レシピをカスタマイズすることで、より効率的な作業が行えるようになる。

例えば「最新の写真を取得」>「共有」というレシピの間に「イメージのサイズを変更」を組み込めば、画像を自動縮小する作業もiPhoneに代行してもらえる。あるいは、レシピの出口を共有メニューの起動というアクションではなく、Dropboxへの保存やウェブへの投稿に変更してもOKだ。プログラミングの基本の「き」ーー面倒な作業を、いかに人の手で行わずに機械にやらせるか、という部分が肝になる。

ちなみに、ショートカットアプリは、そもそも「Workflow」というアップル・デザイン・アワードの受賞アプリが元になっている。2017年に、Appleがこれを買収し、今秋のアップデートで名称を「ショートカット」へと改め、リニューアルオープンしたというわけだ。

また、Macで「Automator(オートマタ)」アプリケーションを利用していた人にとっては、「ワークフロー」を構築するのと、ほぼ同様の感覚で利用できるに違いない。こうした自動化機能に親しんでいる人にとっては、ショートカットアプリを扱うのは造作もないことだろう。

一方で、プログラミング的素養がない人にとっては、こうしたレシピをゼロベースで組み立てるのはかなり難しいと思う。そこで活用したいのが、ショートカットアプリ内にある「ギャラリー」という画面。ここには参考レシピ集が用意されているので、こちらを参照しつつ、細部を微調整していくのが、多くの人にとって現実的な利用方法となりそうだ。

今回のショートカットアプリに関して言えば、ITに精通した一部の人が使えるツールだったものが、公式アプリとして多くの人の手に触れやすい形で提供されるようになったわけだ。決して敷居は低くないが、使いこなした際のベネフィットも大きいので、ぜひ色々と挑戦してみて欲しい。

関連サイト
iOS 12 - Apple(日本)

text井上晃(ゴーズ)
(d.365

掲載:M-ON! Press