昨年7月に死去した作曲家の故・平尾昌晃さんの遺産相続を巡るトラブルが注目を集めています。

瀬戸の花嫁」「よこはま・たそがれ」「カナダからの手紙」などのヒット作を生み出した平尾さんの遺産は、楽曲著作権や不動産など約60億円とみられています。この分配を巡って、三男と、平尾さんの3度目の結婚相手となった妻が対立。三男は9月26日記者会見で、妻が代表取締役社長を務める音楽出版管理会社の職務執行停止の仮処分を東京地裁に申し立てたことなどを明らかにしました(その後、妻は社長職を解任されたため、申し立ては取り下げ)。

 これについて、ネット上では、「泥沼の争い」「離婚と再婚を繰り返していると大変ですね」「著作権印税は誰のもの?」「再々婚の妻と実子ならどっちが有利なのかな」など、さまざまな声が上がっています。

 オトナンサー編集部では、遺産相続の優先順位や分配方法について、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

配偶者と子は「2分の1」ずつ

Q.遺産相続の優先順位と相続割合について教えてください。

牧野さん「遺言がない場合、民法により、相続人になれる人の範囲と順位が定められています。民法の規定により相続人となる人のことを『法定相続人』 といいます。法定相続人とは、配偶者(夫や妻)、子(直系卑属)、父母(直系尊属)、兄弟姉妹(傍系血族)の4種類の人です。

配偶者は常に相続人となり、他の親族が共に法定相続人となる場合の各相続分は、以下の通りです。直系尊属と傍系血族は上の順位の相続人がいない場合のみ、相続人となります」

1.配偶者と子が相続人の場合・・・・・配偶者2分の1、子2分の1
2.配偶者と直系尊属が相続人の場合・・配偶者3分の2、直系尊属3分の1
3.配偶者と傍系血族が相続人の場合・・配偶者4分の3、傍系血族4分の1

Q.子の相続について教えてください。「腹違い」の兄弟や、養子がいる場合、相続の分配は変わりますか。

牧野さん「子が複数いる場合は均等になります。子には、養子、非嫡出子(婚姻関係がない男女の間に生まれた子ども)も含まれます。非嫡出子の場合、父親の相続については、認知されなければ相続人になりません。非嫡出子と嫡出子の相続分は同じです。また、養子が普通養子の場合は、養親・実親双方を相続することができます。特別養子の場合には、実親との法律的な親子関係を切ってしまうので、養親しか相続することができません。

なお、子が死亡している場合、子の直系卑属(子や孫など)が、兄弟姉妹が死亡している場合は、兄弟姉妹の子(被相続人の甥姪まで)がそれぞれの相続権を引き継いで相続人(代襲相続)になります」

Q.遺言のある/なしではどう変わるのでしょうか。また、遺言の効力とはどのようなものでしょうか。

牧野さん「遺言がない場合、民法の規定では、内縁の配偶者(夫や妻)や結婚によって親族となった息子の嫁などは法定相続人とならないので、遺産を相続させることができませんが、遺言によりこれらの人へも遺産を贈与することができます。

遺言がある場合、遺産は、原則として遺言で指定された人が指定された通りに相続します。ただし、たとえ遺言があったとしても、法定相続人の持つ『遺留分』を侵害することはできません」

Q.「遺留分」とは何ですか。

牧野さん「遺留分とは、被相続人の兄弟・姉妹以外の相続人に対して保障された相続財産の割合のことです(民法1028条)。

例えば、配偶者と子1人の法定相続人がいる人が、生前世話になった介護士に全財産を遺言で贈与(遺贈)する旨の有効な遺言を残した場合でも、配偶者と子には、遺留分の2分の1が保証されるので、結果的に全財産の半分しかその介護士に贈与することができないことになります。

遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人の場合は被相続人の財産の3分の1、それ以外の場合は全体で被相続人の財産の2分の1です」

著作権は複数の相続人で共有できる

Q.平尾さんのような著作権者が亡くなった場合、その権利はどのように相続されるのでしょうか。

牧野さん「著作権は財産権なので相続対象になり、遺言で相続する人が指定されていれば、その人が相続します。複数の人が指定されていれば、指定された人たちの共有になります。有効な遺言がない場合、法定相続人が法定相続分を相続することになります。例えば、配偶者と子1人の法定相続人がいれば、特定の楽曲の詩や曲の著作権を配偶者と子が2分の1ずつ共有することになります。

配偶者と子が2分の1ずつ著作権を共有する場合、その著作権から得られた印税は配偶者と子が2分の1ずつ分配を受けることになります。遺産分割協議により、『子が特定の一曲の著作権を相続する代わりに配偶者が銀行預金100万円をもらう』ことで合意することも可能です」

Q.遺産相続でもめた場合、どのように解決を図りますか。

牧野さん「相続人の間で遺産分割の話し合いがまとまらなければ、最終的には家庭裁判所に解決を求めることになります。家庭裁判所では通常、まず調停(裁判ではなく話し合い)を行い、調停が整わなければ審判(裁判と同じ)を行うことになります。

審判の結果に納得できなければ、高等裁判所に抗告することができます。調停は弁護士を付けないで本人で行うこともありますが、審判は実質的には裁判ですから、弁護士に委任するのがスムーズでしょう。弁護士に依頼すれば弁護士報酬の支払いが必要になります」

Q.遺産相続でもめないために知っておくべきことは。

牧野さん「最近では、金額の多寡を問わず、遺産相続をめぐる紛争が増えています。遺産相続争いは、何億円、何千万円という遺産のある富裕層の出来事と思われがちですが、実は、実際に争われている遺産額は400万~500万円ほどのケースが最も多いのです。

自分には関係ない話だと思わず、残された親族間で争いにならないように、遺産の分配について具体的に記した遺言を残しておくことをお勧めします。法的に有効な遺言を残しておくために、弁護士や司法書士などの専門家に相談するとよいでしょう」

ライフスタイルチーム

遺産に著作権がある場合、相続はどうなる?