Credit: ICRAR/University of Amsterdam
Point
・中性子星やブラックホールなどの強力な重力を持つ天体は、近くの天体を貪ることで強力なジェットを放出し、観測されることがある
・今まで、中性子星のジェットは磁場の弱くなったものからしか出てこないと考えられていた
・今回、太陽の10兆倍もの磁場を持つ中性子星からのジェットが観測されたことで、ジェットの生み出される仕組みに再考が求められる

理論をはみでた、ロマンな「ジェット」のニュースです。

アムステル大学の研究者たちが率いるチームは、強力な磁場を持つ中性子星Swift J0243.6+6124から、電波のジェットが放出されていることを発見。本来中性子星のジェットは磁場の弱いものからしか出ないとされており、これまでの理論では予測されていないものです。研究は“Nature”で発表されました。

中性子星は星の最後の姿の一つです。巨大な恒星が最後に超新星爆発で吹き飛んだ後の残骸で、強力な重力によって圧縮・崩壊しています。その崩壊は強力な磁場を生み出し、その強度は太陽の数兆倍にも及び、何千何百年の内に次第に弱くなります。

中性子星やブラックホールは時折、連星のうち暗いほうの天体である「伴星」近くの軌道で見つかります。伴星からのガスの供給によって、中性子星やブラックホールは、物質の一部を光速近くまで加速された強力なジェットで吹き飛ばすのです。

天文学者たちはこの数十年の間、磁場の弱まった中性子星からのジェットしか観測していませんでした。「十分に強力な磁場があると、中性子星がジェットを生み出すのに十分な距離にまで物質が近づくのを妨げる」と広く考えられていたのです。

強い磁場を持つ中性子星は、太陽の10兆倍もの強力な磁場を持ちます。そのように強い磁場を持つ中性子星からのジェットを観測したのは、今回が初めてです。今回の発見は、全く新しいクラスのジェットの供給源を明らかにしました。

ジェットには、中性子星やブラックホールによって抽出された巨大な重力エネルギーを周囲の環境に戻すという役割があります。強力な磁場を持った中性子星からのジェットを発見したことは、想像に反するものでした。どのようにジェットが生み出されるのかについては、まだ不明点が数多くあると示されたのです」と、准教授ミラー・ジョーンズ氏は述べています。

 

異常なペースで星を生み出す「モンスター銀河」の詳細を観測 世界で初めて成功

 

via: Phys Org/ translated & text by SENPAI

 

従来の理論では予測不可能な「中性子星ジェット」を発見