【mamagirlWEBリニューアル記念】パパゲストインタビュー 鈴木おさむさん(前編)

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育児について、パパって本当はどう思っているの?放送作家の鈴木おさむさんによる『ママにはなれないパパ』(マガジンハウス)は、そんな問いに答えてくれる父親目線の育児本。2015年に待望の第一子・笑福(えふ)くんを授かり、育児のため1年間休業することを選択した鈴木さんの奮闘の日々が、ユーモアあふれる筆致でつづられています。パパになって4年目を迎えた鈴木さんに、「mamagirl」読者に勇気を与えるメッセージをいただきました!
おじさんが育児に奮闘する姿は、幸せで楽しい
――『ママにはなれないパパ』を読むと、悩みながらも楽しんで子育てされている様子が伝わってきます。子育て中は、イライラしたり、テンパったりしてしまうこともあると思いますが、そういった感情を笑いに変えるコツがあれば、ぜひ教えてください。鈴木おさむさん(以下、鈴木):意図的に笑いに変えようとしているつもりじゃないんです。つらいことも笑いに変えるのがテレビの仕事なので、「いまの状況は面白いかも?」と考えるクセがついているんですね。自分が置かれている状況を、俯瞰で見てあげることで、楽になることってあるんですよ。――俯瞰で見てあげるとは?鈴木:階段で転んだときって、恥ずかしいじゃないですか。でも、周りから見れば、面白い光景ですよね。育児も同じ。45歳のおじさんが、赤ちゃんに振り回されている状況は、俯瞰で見ると、すごく幸せで楽しい光景だと思うんですよ。――なるほど。育児に追われているママたちが、自分の置かれている状況を俯瞰で見るには、どうすればいいでしょうか?鈴木:子育てについて、ブログで発信してみてはどうでしょうか。今日の出来事をブログに書くとき、「子どもが泣きやんでくれなかった」とは書かないでしょう? 「子どもが泣きやまなかったから、自分はこういう行動を取った」って書くと思うんですよね。ブログでもツイッターでもいいけど、書くことで、自分の気持ちを客観的に整理することができるんじゃないかと思います。


「小手先の工夫は通じない」と知ることが大切
――著書の中に、奥さまが海外ロケで家を空けていた期間のエピソードが出てきますよね。「添い乳」でしか眠れなくなってしまった笑福くんに、夜ぐっすり寝てもらうために、芸人さんを家に呼んだり布団をママに見立てたり……。すごく工夫されていると感じました。鈴木:でもね、うちの場合、芸人さんが来ようが布団をママに見立てようが、最終的には寝なかったんですよ。工夫が通じなかったから、5〜6時間、子どもをだっこしたまま朝を迎えるしかなかった。今振り返ると、子どもが僕を試していたんじゃないかとも思えます。腰も痛かったし、とても大変だったけど、その一夜を経て、子どもとの友情が強まった気がしました。育児において、小手先の工夫は通じない。そういったことを、身をもって経験するのは大事だなと思いましたね。――著書には、パパの不器用さも赤裸々に綴られていますよね。パパのやる気を削がずに、手際よくやる方法を教えるにはどうすればいいと思いますか?鈴木:オムツを替えるとか沐浴をさせるとか、テクニック的なことは、大人なら3回やれば覚えると思うんです。お母さんに比べたらお父さんのほうが不器用かもしれないし、手際が悪くて怒られることもあるかもしれないけれども。でも、失敗を恐れていると、人って覚えないんですよ。――確かにそうですね。鈴木:よく「夫が手伝ってくれない」「育児に対してコミットしてくれない」という話を聞きますけど、お父さんにチャンスを与えていない人が、けっこう多いんじゃないかと思うんです。0歳児をお父さんに預けるのが不安で、ちょっとした外出もできないとかね。うちの場合は、奥さんが出産から半年で仕事に復帰しました。毎週月曜日は「ヒルナンデス」に出るために、10時に出発して、15時まで帰ってこないわけです。その5時間、僕は息子とどう過ごすか考えるようになるわけですよ。これは父親以外でも同じだと思うんですけど、相手が0歳といえども、2人でいる時間が長ければ長いほど絆は深まるんですよね。――まずは、パパに任せてみる姿勢が大事でしょうか。鈴木:何回もチャンスをあげることが大事ですね。失敗したときに、お母さんが「もういいよ」って手を出しちゃうと、お父さんも覚えません。覚えられないと面白さも感じられないし、やる気がなくなってくるんじゃないかな。


人生のゴールから逆算して、育休の取得を決めた
――育児休暇を取得することで、キャリアが止まってしまうことを恐れる人も多いと思います。鈴木さんは、そういった恐れはありませんでしたか?鈴木:もちろん、ありました。「放送作家業を休みたい」と言ったときに、「いいね」と受け入れてくれた番組もあったし、「ほかの人に失礼だから」という理由で終了になった番組もあったんです。それでも僕は、新しい命に向き合うことで、何かを得られるだろうと思った。今まで積み上げてきた実績がリセットされてもいいという覚悟は、40代だからできたのかもしれません。――テレビ業界は、仕事一筋で競争社会というイメージがあったので、その第一線にいる鈴木さんが「父勉」のために育休を取ったと聞いたときは、とても驚きました。 鈴木:テレビ業界の大先輩たちを見てきて、キャリアとは何かということを、けっこう前から考えていたんです。仕事に邁進した結果、60歳を過ぎて奥さんから離婚届を突きつけられたり、体を鍛えるしかやることがなくなったり……。会社でどれだけ出世しても、退職すれば、自分しか相手にする人がいなくなってしまうんですよね。もちろん、仕事を通して世の中をワクワクさせたいとか、感動させたいという気持ちもあるけど、自分の人生をもっとトータルで考えるようになったというか。「自分はどう老後を送り、どう死を迎えるか?」という人生のゴールから、逆算するようになったんですよね。――仕事と育児が天秤にかかった場合、どう優先順位をつけていますか?鈴木:この夏は、7月31日まで舞台稽古があって、8月2日からまた劇場に入らなきゃいけなかったんです。8月1日だけぽっかり空いていて、テレビ番組の会議を入れてもいいし、体を休めることもできました。でも以前から、「この日は子どもと2人で海に行く」と決めていたんです。そんなことしたら、疲れるのはわかっているんですよ(笑)。だけど、子どもと向き合うことで得るものも大きいし、何より楽しい。自分の時間を使うのに、仕事とプライベートを分けて考える必要はないと思います。1日24時間の中で、育児に向き合う時間と仕事でがんばる時間は、僕の中ではイコールなんですよ。――疲れやストレスが溜まったときは、どうしていましたか?鈴木:うちは夜泣きがなかったので、23時以降は何をしてもいいと決めてもらっていたんです。仕事をしてもいいし、ブログを書いてもいいし、友だちとお酒を飲みに行ってもいい。夜中に飲みに行っても、次の日の朝7時にご飯を作ることができればいいと、奥さんと話し合ってルールを決めていました。だから夕方になると、23時くらいから飲みに行ける人を探していましたよ。そうやって、ストレスが溜まらないように、自分の中でコントロールしていましたね。後半へ続く(10月3日(水)公開予定)

プロフィール鈴木おさむ(すずき・おさむ1972年千葉生まれ。放送作家。2002年、交際0日で森三中・大島美幸さんと結婚。2015年、待望の第一子・笑福くんを授かる。夫婦生活を描いたエッセイ「ブスの瞳に恋してる」はシリーズ累計60万部を突破。

鈴木おさむさんの最新刊『ママにはなれないパパ』作品概要

「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス刊/定価1300円+税)

作品概要男がまったくわからない、「乳首痛い」問題。妻の不在で、一気に深まる父子の関係。 なりたいのは「イクメン」ではなく、「父親」。 「添い乳」の威力を思い知り、途方にくれる。 母親を守ろうとする、息子の必死さにショック。など全53話のエッセイと「父の気づき」 (プレスリリースより)「実は旦那さんの出来ることって少ないって思うんです」――43歳で一児の父となった鈴木おさむさん。お子さんの誕生をきっかけに一年間の育児休暇を取得。完徹で寝かしつけた夜のこと、毎日の料理当番の大変さ。鈴木さんが綴る言葉は、真剣に向き合ったからこそみえてきたリアルな説得力があります。父親になるために勉強をする「父勉」という概念は、育児にどう携わっていいのかわからないパパの参考に。これから子どもを迎えるプレママ・パパにもおすすめの一冊です。企画・構成/mamagirl編集部  取材・文/東谷好依
(mamagirl
掲載:M-ON! Press