近年続くパンブーム。専門店からコンビニ商品まで、話題の商品が日々登場している。

【写真を見る】「パン好きの牛乳」はベルギーのPUR NATUR(ピュアナチュール)社と技術提携して開発された

その一方で、「パンと一緒に飲む飲み物」も気になるところだ。一般的に「パンと言えば牛乳」というイメージがあるが、それは本当なのか?その疑問を解決すべく、ずばり「パン好きの牛乳」という商品を製造・販売しているカネカに話を聞いた。

カネカはもともとベーカリーや菓子店向けに業務用食品素材を提供する、いわゆる「To B」事業を中心にしているが、2018年4月からは一般消費者向け(To C)に「パン好きの牛乳」を製造・販売している。今回お話をうかがったのは同社の乳製品事業開発・ストラテジックユニット リーダー、吉岡敏志氏。

――「パンと牛乳」という組み合わせはある意味当たり前のように語られますが、その組み合わせに合理性というか、何か根拠はあるんでしょうか?例えば「消化にいい」とか。

吉岡:そういった科学的な根拠があるわけではないと思います。ですが、消費者の方に対して行った調査の結果として、「パンと一緒に牛乳を飲む」という方が非常に多い、というデータが出ています。消費者自身が「パンと牛乳は相性が良い」と感じているのだと思います。

――なるほど。それではあらためて「パン好きの牛乳」開発のきっかけを教えてください。

吉岡:データによると、もともと牛乳がもっとも多く飲まれているのは40代・50代の女性です。逆に20代・30代の方が牛乳を飲む機会は減っている。

ですので、牛乳市場を活性化させるには、20代・30代の方を新たに取り込みたい。この世代にはパン好きの方も多いので、パンと牛乳は鉄板の相性だよね、ということで「パンに合う牛乳」というコンセプトで企画・開発しました。

――ちょっと意外です。小中学校での給食もあって、牛乳消費は小中学生あたりが一番多いのかと思いました。逆に40代、50代女性の消費が多いのは何か理由があるのでしょうか。

吉岡:女性の40代、50代が多いのはご自身が飲まれるというのと、家族用に購入されるというのが大きいと思います。逆に20代・30代、特に独り暮らしの方ですと「自分で買って自分で飲む」というのが少なくなるようです。

――たしかに、大人で独り暮らしになると、意識して「牛乳を買って飲もう」という人は減るかもしれませんね。

――「パン好きの牛乳」と他の牛乳とはどこが違うのでしょう?

吉岡:「パン好きの牛乳」は、ベルギーに本社のあるピュアナチュール(PUR NATUR)社との技術提携により、牛乳独自のコクは保ちつつ、後味がすっきりした仕上がりになっています。パンの味を邪魔しないので、牛乳自身を味わいながらパンをより美味しく召し上がっていただけます。

また、今回採用した製法により、生乳を加工する際に生じる加熱臭が低減されています。牛乳が苦手な人の中には「臭いがダメ」という方もいらっしゃいますが、本製品ではそれもある程度軽減されています。お客様の中には「牛乳は嫌いだけど、これだったら飲める」という方も多くいらっしゃいます。

――なるほど。その他の差別化ポイントはありますか?

吉岡:20代・30代の方に手に取っていただけるよう、パッケージデザインは意識しました。牛乳のパッケージは商品名のほか、成分や産地を文字で表記するだけのシンプルなものが多いですが、加えて「パン好きの牛乳」ではコップに注がれた牛乳とパンという“食シーンを連想させる”デザインを採用しています。

――商品は主にベーカリーに置かれているということですが。

吉岡:私どもがもともと全国のベーカリーさんとお付き合いがあるというのもありますが、商品名のとおり、まずは「パン好きの方にお届けしたい」というのがあります。

また、ベーカリーに置いていただいてパン好きの方にアピールすることで商品自体のブランド認知も進めていきたいと考えています。ベーカリーのスタッフで実際に飲んでいた方からも、「美味しいのでお客様におすすめできる」との言葉をいただいてます。

――販売エリアが限定されているのは?

吉岡:「パン好きの牛乳」は特殊な製法のため、今のところその設備がある大阪でしか製造できないんです。

加えて、本商品の生乳はすべて北海道産なので、賞味期限の問題もあって販売エリアが限られています。設備の改善と流通ルートの確保で、現在は北海道・東北・沖縄以外のエリアでは順次販売できるようになりました。

――北海道産の生乳を使用しているのにはこだわりが?

吉岡:はい、この「パン好きの牛乳」に限らず、私たちが携わる乳製品の基本は北海道にあると思っていますので、北海道産にはこだわっています。

――本日はありがとうございました。

どうやら「パンには牛乳」というイメージが強いのは、私たち自身の好みが大きく影響しているようだ。ふだんから牛乳を愛飲している人もそうでない人も、あらためて「自分にとってパンと相性がいいと感じる飲み物」を探してみるといいかもしれない。(東京ウォーカー(全国版)・桑原健太郎)

株式会社カネカ、乳製品事業開発担当の吉岡敏志氏(左)