誰もが一度は経験したであろう修学旅行の意外と知らない真実──。

【写真を見る】日本修学旅行協会が発行する「教育旅行年報 データブック2017」。1872(明治5)年から現在に至るまでの修学旅行の歴史が事細かに記されている

小・中学校、高校に関わらず、学校行事の中で最も印象深い思い出・出来事にあげる人も多いだろう。しかしその起源が訓練であったことや、行き先などの詳細がいつ・どのように決まるかなど、その歴史や仕組みはあまり知られていない。

そこで今回、円滑な修学旅行の実施を目的に、調査・研究・情報発信を行う公益財団法人 日本修学旅行協会の竹内秀一理事長に話を伺い、その知られざる実情を紹介する。

修学旅行の始まりは軍隊の行軍練習

現在では当たり前のように、事もなげに実施されている修学旅行だが、そのルーツは遠足にある。

竹内氏によれば、「遠足というのは、かつて軍隊でいうところの行軍練習として始まった」とのこと。目的が目的だけに学校行事とはかけ離れているように思えるが、当時の学生は日の丸のハチマキをして、日の丸弁当を持参し、歩きながら目的地を目指したそう。まさに行軍そのものだ。

その中で、先生を育てるための教育機関・高等師範学校の生徒たちから、“それだけではつまらない”という声が上がった。そこで先生が考え出したのが、学びの要素を取り入れることだった。

そうして1886(明治19)年2月15日から25日にかけて、東京師範学校で初めての“長途(ちょうと)遠足”なるものが行われた。

通常の行軍練習に加えて、目的地に到着後、現地で植物や鉱物の採取、生物調査などが追加された“長途遠足”。この学びの要素を含めて数泊するというのが、修学旅行の始まりといわれている。

しかし、その誕生は折しも日本が世界との戦争へと足を踏み入れていく激動の時代。だんだんと戦時色が濃くなる中で、関東の学校が関西に向かう時は、二見浦(三重県)に宿泊して伊勢神宮を詣でてから、奈良・京都へと向かう。

その逆に、関西から関東へ向かう学校は、靖国神社を訪れるという要素が加えられた。ちなみにこれは、戦争が激化した1940(昭和15)年に修学旅行が制限・規制されるまで続けられたそうだ。

そのため、今の修学旅行とは少々イメージが異なるが、「大事なのは観光要素よりも学びの要素が取り入れられていること」と竹内氏はその意義を教えてくれた。

■ 学校や先生にとっても“学習計画の集大成”という一大行事

生徒のためのイベントと思われがちな修学旅行だが、実は学校や先生にとっても同じことがいえるという。その理由を竹内氏は「修学旅行には、旅行中はもちろん、事前事後の学習を含めて、一番時間とお金と手間がかかっている」と教えてくれた。そして、何よりも“学び”に重点が置かれる修学旅行は、事前事後の学習を含めて“考えること”が重要だと続けた。

「例えば、高校2年生で沖縄に行くのであれば、1年生の時から沖縄を題材にした授業を行い、知識を積み上げながら現地での学習につなげていくんですね。沖縄県に行くときに、沖縄戦ってどういうものなのかを知らなければ意味がありませんから。そして学んだことを振り返り、みんなで共有する。だから、どんな体験をするのかというのが非常に重要です。

ですので、一番つらいのは、災害によって目的地を変更しなければならなくなったとき。下準備を全然していないわけですから、そうなったときに学びの効果があるのかというところが大きな問題です」と竹内氏は語る。

つまり、修学旅行はその前後を含めて莫大な労力がかかっており、それに見合うだけの成果がほしいと学校や先生も考える。修学旅行は学校全体にとって重要な行事といえるのだ。

■ 生徒の入学前に開始?修学旅行の準備は驚くほど早い

一度に100人単位が一斉に移動する修学旅行。傾向としては、中学校は3年生の春、高校では2年生の秋から冬にかけて行われることが多い。では、いつごろからその準備は始められるのだろうか。この疑問について、竹内氏は次のように語ってくれた。

「高校の場合、該当する生徒(2年生の秋から冬に行く)が入学する直前の3月には決まっています。それから旅行会社に見積りを依頼して、それが出てくる1年生の5月ごろには、少なくとも宿泊先と交通手段を決めていないといけない。それだけの人数の予約を直前にすることは無理ですからね」

これが中学校になると、1年生の秋ごろに決定し、3年生の春の実施に向けて準備を進めていくことが多いのだという。

実施する1年以上前に準備を始めているからこそ、万全の体制で修学旅行に臨むことができるのだ。

今回は修学旅行の成り立ち、学校における立ち位置、実施に向けた準備について紹介した。連載「みんなの修学旅行」では今後、修学旅行にかかるお金の内訳、旅行先を決定する要素、今後の展望なども掘り下げていく予定だ。(東京ウォーカー(全国版)・安藤康之)

みんなの思い出に残る修学旅行の歴史と仕組みに迫る(※写真はイメージ)