ブランド価値を下げたくない。そのためには、たとえ売れ残った商品でも安値で叩き売るわけにはいかない。いっそのこと、まとめて処分する方が得策だーーこんなファッション業界の慣習に、世界中が「No」を突き付けた。イギリスを代表する高級ブランの一つ、バーバリーはその世間の反発に折れるしかなかった。が、コトはバーバリーだけの問題ではない。環境負荷を無視するファッションブランドの振る舞いに、世界中が厳しい目を向け始めた。(JBpress

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不買運動にまで発展

 英高級ファッションブランド、バーバリーが2018年の年次リポートを発表したのは2018年6月のこと。すると、このリポートはすぐにネット上で炎上、物議を醸すことになった。

 何が問題だったのか。報告書には、バーバリーが売れ残った服やアクセサリーなど3700万ドル(約42億円)相当を、新品のまま焼却処分していると記載されていたのだ。バーバリーの言い分としては、同社の知的財産を守り、製品が盗まれないための措置だということだが、現実には、割引やセールで安く売りさばくとブランドイメージや商品の価値が下がるため、それを防ぐのが目的だったと批判された。

 特に激しく反発したのは、セレブや環境保護団体、環境意識の高い消費者などだ。衣料品などを作る際に使う資源や労働を無駄にしている点、焼却処分にする際に環境に与える悪影響への懸念などを指摘した。ファッション業界は世界全体の二酸化炭素排出量の10%を占めているとも言われている。

 この問題を受けて、ネット上からはバーバリーに対する不買運動「#boycottBurberry」が起き、英国会議員らも発言。ある英労働党所属議員は、「環境庁はこの売れ残り製品に対して行われる目に余る行為を摘発する時だ」と声を上げた。

 もちろんこうした行為は今に始まったことではなく、これまでも問題視されていた。だが昨今のSNSの普及や環境問題への意識の高まりが、強い反発の醸成に一役買うこととなった。

 この騒動により追い込まれたバーバリーは、2018年9月にプレスリリースを公開、「バーバリーは直ちに、売れ残った製品を破壊する行為を止めることにした」と発表せざるを得なかった。

 もっとも、この問題は何もバーバリーだけの話ではない。他にも同様に新品の衣料品を焼却処分などで破壊している企業は少なくない。ただ温暖化対策への意識が高まっているいま、こうした環境にストレスを与える無駄な行為を防ぐ手立てについて、いろいろと議論になっている。

 そもそも、この売れ残りの「廃棄処分」の問題はどれほど蔓延しているのか。

 最近、バーバリーと同じようなタイミングで、新品の廃棄処分が問題視された企業がある。高級ブランドカルティエやピアジェなどを傘下に持つスイスのラグジュアリー製品大手リシュモンだ。リシュモンは5月、売れ残った高級時計の値段が下がるのを懸念し、過去2年で5億ユーロ分の製品を廃棄処分にしたと報じられた。

 その背景には、アジアでの売り上げ減があった。低迷の原因のひとつとされるのが、中国政府の汚職撲滅政策で、これまで官僚などのギフトにされてきた高級腕時計などが大量に売れ残っているのだという。結果として、あぶれた商品がヤミ市場で安売りされ、商品のイメージダウンや価値が下がりかねない状況になった。そこで同社は時計などを買い戻し、バラバラに解体、金などは再加工され、部品はリサイクルに回されているという。だが実態は、多くが廃棄処分にされているとも指摘されている。いずれにせよ、環境に優しいとは言いがたい対策だ。

 またスウェーデンのファストファッション大手H&Mも、デンマークテレビ局による調査報道で、2013年から60トンに及ぶ製品を焼却処分にしていると指摘されている。H&Mは、「破損などがあったり安全ではなかったりする製品」を処分しているだけだ、と否定しているが、報道では、きちんと調査した結果、安全な製品も焼却されていたと結論付けられた。

アマゾンも家電や家具を廃棄処分!?

 こうしたメーカー以外にも、廃棄処分の疑惑はいくつも噴出している。しかも、問題はファッションブランドにとどまらない。ドイツのTV局によれば、ネット通販大手アマゾンも、ドイツで新品や返品された製品を廃棄処分にしているという。実際に処分に従事したことがある従業員への取材から、冷蔵庫洗濯機携帯電話からマットレス、家具までが廃棄されている実態を明らかにした。

 この話は、日本も他人事ではない。実は、日本では売れ残った衣料品がどれほど廃棄処分されているのかについて詳細で正確な数字は見当たらないが、日経新聞9月26日に「日本だけでも廃棄量は推定年100万トンに近く、その多くが焼却処分される」と報じている。朝日新聞7月3日付けの記事で、「再販売される一部を除き、焼却されたり、破砕されてプラスチックなどと固めて燃料化されたりして実質的に捨てられる(新品衣料の)数は、年間10億点の可能性があるともいわれる」と指摘している。どうやら日本もかなりの数の売れ残り品を廃棄処分にしているらしい。

 どうして、これほど大量の“廃棄対象品”が生まれてしまうのか。もちろん最大の理由は、需要予測の“読み外し”だ。バーバリーの場合も、販売時点で需要と供給がマッチしていなかった。今年売れ残りが増えた理由は、中国での消費の冷え込みが背景にある。高級時計を売るリシュモンのような企業も同様で、時計の生産は2年も前に始まるため、販売される際には汚職撲滅政策で需要が変化してしまっていた。

 イメージが大事な高級ブランドなら、すでに述べた通り、売れ残りをセール品などにすることでブランドイメージが崩れるのを避けたいという意識が働く。高級路線らしい価格を維持するためになら、売れ残った商品は焼却処分にしてしまうほうが得策ということだ。

 また、H&Mのようなファストファッションの台頭も廃棄処分が目立ってきている理由だといえる。商品のサイクルは早くなり、数多くの安価な新しい商品が次々と店頭に溢れることで、売れ残りが増えることになる。そうなれば、処分しなければならない商品が大量に出るのは当然だと言える。

 とはいえ、メーカー側のそんな言い分はもはや通用しない。特に近代のファッションメーカーは、環境や人権にも責任をもって行動することが求められる。さもないと直ちに糾弾され、反発や炎上、挙句にはすぐにSNSなどを使った不買運動などの憂き目にあうことになる。環境保護的な観点からは、エネルギーや資源を使って製品を作っているという「責任」があることを自覚しなければならない時代になっており、その流れは止まらないだろう。

AIで需要予測の精度を上げよ

 廃棄処分の問題をクリアする一つの方法は、生産過程をできる限り短くすることだろう。そうすれば、供給量を状況に応じて変えることが可能になり、過剰生産を食い止めることができるからだ。ただそれには設備投資や根本的な生産の見直しが必要になるために、簡単に実現することはないが、できる限り早くその方向に舵を切るのが賢明だ。さもないと、炎上などでブランドが傷つくことになる。

 また高級ブランドならオーダーメードを増やすという手もあるし、ビッグデータを使ったAI(人工知能)によって需要予測の精度を上げるということも考えられる。

 バーバリーは今回の反発を受けて、売れない商品に対して「再利用、修理、寄付、そしてリサイクルという取り組み」を強化すると発表している。だが世界的に見ると、年間9200万トンが廃棄処分されており、バーバリーだけでなく、業界全体として同じような措置を取らない限り、環境へポジティブインパクトを与えるほど状況を変えることはできない。

 とにかく、環境のためだけでなくメーカー自身のためにも、まず大量に生産して焼却処分するといった無駄はもうやめるべきだ。各メーカーが、すぐにでも変革に乗り出す時期に来ているということだろう。

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