秋は紅葉の季節。赤く染まる木々が作り出す風景は私たちの目を楽しませてくれますが、本来緑色の葉っぱが秋になると赤く染まる理由については考えたこともない人が多いのではないでしょうか。今回は紅葉が起こる秘密について迫ります!

美しい紅葉は木々たちの生存戦略の副産物!?

秋といえば木々が赤く染まる「紅葉」をイメージする人も多いのではないでしょうか? 多くの人がその風景の美しさに惹かれ、紅葉を見に行ったり写真に収めたりします。

しかし、よく考えると「紅葉」は不思議な現象だと思いませんか? もともと緑色だった葉っぱが秋になるとこぞって赤や黄色に染まるのです。もちろん、人間に見てもらおうと木が葉を赤く染めているわけではありません。

実は、紅葉は秋から始まる気温の低下や日照不足が影響しており、これらの環境の変化を感じた木々たちが生き残るための戦略として行うある動きによって、結果として生み出された産物なのです。

紅葉は、枝と葉の栄養交換経路が遮断されることで起こる

植物は、葉っぱにある「クロロフィル(クロロフィール)」という葉緑素が光エネルギーを吸収して栄養に変える、光合成という仕組みで生きているということは学校の授業でも習うことですね。葉っぱで出来た栄養は、枝との栄養交換経路である師管を通って全体に送られます。

この仕組みによって木が育っているわけですが、秋になるとこの仕組みにある問題が起こります。それが「気温の低下」と「日照時間の減少」です。

気温が下がり日照時間が短くなってくると、温度も光の強さも足りなくなり光合成の効率が悪くなります。葉っぱ自体も栄養を消費しているため、次第に木全体が栄養不足になり生きていけなくなります。さらに秋から冬にかけての乾燥した空気が水分を葉から蒸発しやすくしているのも状況を悪くします。

そこで木は生き残るための戦略として、葉への栄養供給をストップさせてしまいます。すると、葉緑体の機能低下が加速し、クロロフィルが減少していくのです。

こうして初めて葉に含まれる他の色素の色が見えるようになります。クロロフィルの減少と同時に、本体に送られず葉に溜まった栄養が日光に当たることによって「アントシアニン」と呼ばれる物質に変化します。このアントシアニンは赤色の色素なので、葉内のアントシアニンが増えていくにつれてだんだんと葉が赤く染まっていくわけですね。ちなみに黄色になる葉っぱは、もともと葉に存在していた「カロテノイド」という黄色の色素がクロロフィルの減少によって見えるようになったためです。

こうして美しい紅葉は作られていくのです。紅葉にはその美しさからはかけ離れた、シビアな植物の生存戦略が関係していたのですね。

植物が起こすさまざまな現象には理由があり、その理由を探るのが「農学」

私達の目を楽しませてくれる紅葉ですが、その裏には木々が一生懸命生き残るための工夫が隠されていたのです。そう考えると、紅葉も少し見方が変わってきませんか?

このように植物が起こすさまざまな不思議な現象にはちゃんとした理由が存在し、その理由を研究し明らかにするのが「農学」という学問の一つの役割です。

さまざまな自然の不思議について、その理由を知りたい、学びたいという人はぜひ農学の門を叩いてみてはいかがでしょうか? 当たり前のようにある木々や花などの自然の見方が少し変わるかもしれませんよ。


【出典】
毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20141126/mul/00m/040/00600sc
・国立科学博物館
http://www.kahaku.go.jp/userguide/hotnews/theme.php?id=0001217205482884&p=2
・日本植物生理学会
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=388
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1344