10月17日(水)より上演される舞台「キ上の空論#9 みどり色の水泡にキス」で、ヒロイン・ミドリ役を演じる新垣里沙へのインタビュー後編。“ガキさん”の愛称で親しまれる彼女に、これからの目標や転機となった役などについて聞かせてもらった。

【写真を見る】卒業後は演劇の道に進み、いくつもの舞台で主演、メインキャストを務めてきた新垣。「キ上の空論」シリーズでは2度目の主演となる

モーニング娘。から演劇界へ…新垣里沙・オファー途切れぬ役者となった今。主演舞台「キ上の空論#9」も開幕間近! より続く】

■ 舞台が好きだからと留まらず、映像にもチャレンジして

――2.5次元、時代物に現代劇にと、幅広いジャンルを経験されていますが、役者として自分の得意な方向というのは見えているんですか?

うーん。得意というか、好きというなら「キ上の空論」のような、ナチュラルな会話劇の方が好きですね。ミュージカル2.5次元より、お芝居の原点というような作品が。1つ前に、椿鬼奴さん主演の「ロックの女」(2018年)に出ているんですが、あれも会話劇で、すごく楽しい舞台でした。「キ上の空論」とは正反対で、めちゃくちゃ激しい会話劇だったんですけどね。

――2.5次元への出演、確かに少ないですが、「暁のヨナ」(2016年・主演)も「ロマンシング サガ ~ロアーヌが燃える日〜」(2017年)も良かったですけどね。衣装も華やかで。

2.5次元はその2本だけなんですけど、ストレートな舞台と違う楽しさはありますね。「ヨナ」は漫画も面白くて、2.5次元ものはお客さんがアニメや漫画のキャラクターをイメージして来るところがあるじゃないですか。そのキャラクターにどれだけを自分を近づけられるかという、オリジナルの舞台とは違う役作りの仕方も勉強になりますね。キャラクターになれるというのは普段ではない経験ですし。

――ご自分としては舞台と映像、どちらの方に気持ちが強いですか?

それも難しいなあ…。舞台は本当に大好きで、その時、その空間でお客さんを巻き込んで作っていくという感覚が良いんですよね。これからもずっと続けていきたいお仕事です。でも、映像にも興味というか、チャレンジしていきたいという気持ちも強いです。特に映画はまだ数えられる程度しか経験がないので、どんな世界なのかを知って、もっと勉強していきたいです。

そこで得たものを舞台の世界に持ち帰りたいという気持ちもあるし、次に中島(庸介)さんの舞台に呼んでもらった時、今より成長した姿を見せたいと思ってます。

――では、役者としての目標はどういうところに置いていますか?

役者って年齢を重ねるほどに引き出しが増え、哀愁や人間的な面白味、その人が背負ってきた人生が出てくるものだと思うんです。だから色々なことを経験して、それを全てお芝居の表現に繋げていきたいです。

モーニング娘。からのスタートで、最初は可愛い役、アイドルっぽい元気な子、分かりやすく気が強い女の子とかが多かったんですが、「殺人鬼フジコの衝動」(2013年・主演)で殺人鬼を演じてから、ガラッと来る役が変わったんですよね。アイドル的な見られ方がなくなって、役者として役を頂いている感じになったような。本当に幅広い役でオファーを頂くようになりました。

――役者としての幅が生まれたわけですね。

フジコは13歳から始まって、35歳まで。殺人鬼なんかになりたくなかったけど、そうならざるを得なかった女性で、お芝居に、フジコが背負ってきた色んな思いが求められたんです。周りからあんな役もやれるんだねって言われるくらい衝撃的な役ではあったんですが、それを演じることで役者として変われたと思っていて、役を頂けたことに本当に感謝しています。

ハロプロの外、手探りで進んでいった演劇の道

――今ハロー!プロジェクトでは昔以上に演劇に力を入れていて、モーニング娘。の後輩では工藤遥さんが卒業後、戦隊もので頑張っていて、℃-ute矢島舞美さん、中島早貴さん、Berryz工房須藤茉麻さんなど、演劇に進んだ方も多いです。そういう後輩の姿を見てどう思いますか?

時間がなくて見に行けてないんですが、「次、矢島がこれに出るよ」「須藤がこれやるよ」とかは教えてもらってるんですよ。私が一度出ていた舞台に後輩が出ることもあって、そういうのは繋がっていってる感じがしてすごく嬉しいですね。

私が卒業した時って、本格的に演劇に進んだ子はいなくて、ハロプロを出た後はバラエティとかでのタレント活動がほとんどだったんですよね。だから演劇に進みたいと言った時、会社もどうしていいか分からない感じがありました。

――外部作でいうと高橋愛さんと、小川麻琴さんが何本か。真野恵里菜さんがハロプロの活動と並行してドラマと舞台を何本か。

愛ちゃんはミュージカルで、演劇でというと、本当に真野ちゃんがその後にっていうくらいだったんじゃないかな。最初は自分でも手探りの感じでしたけど、会社も応援してくれたので、それも頑張れた(理由の)1つですね。

――ちなみに、生田衣梨奈さんは新垣さんの舞台をよく見に来てくれているみたいですね。

生田、来てくれますね。モーニングの活動で忙しいだろうに、1つの舞台を3回も見に来てくれたこともあって。そういうのは舞台をやっている側からするとすごく嬉しいです。

映像は「ここを見てください」と言いやすいですけど、舞台は生のお芝居、1つの瞬間に対し、全体であったり、1人の芝居であったり、見どころが色々な部分にあるので、二度三度と見てもらいたいんですよね。

――ないとは思うんですが、もし生田さんから女優の道に進みたいと相談されたらどうしますか?

ないと思うって、そんな(笑)。私はいいと思いますよ。お芝居だけが女優ではないし、あの子はアクションができるし、格好良く決まるから、アクション女優はありじゃないですか。彼女からそういう話は全然聞いたことないですけどね(笑)。でも、舞台を見るのはすごく好きみたいですよ。

――では改めて、「みどり色の水泡にキス」上演に向けての言葉をお願いします。

いつもは稽古が終わって「よし、いけるぞ」って自信が付いてから知人や皆さんをお誘いするんですが、今回は今の時点で「絶対見に来てください!」と自信を持って言える作品です。「キ上の空論」の独特な空気感と、岐阜弁も珍しいところなので注目してほしいです。

――岐阜弁はどういうものなんですか?

ちょっとイントネーションが違うのと、語尾が「やお」「やもんで」とかになるんですよ。私も「キ上の空論」で初めて知ったので、勉強をしながら台詞を入れている最中です。あと、今回「キ上の空論」にしては珍しく映像の演出も入るんですよ。シリーズを見てくれている方にも新鮮な舞台になると思います。私たち役者と一緒に日常のお芝居を楽しんでいただけたら嬉しいです。

「キ上の空論#9 みどり色の水泡にキス」は10月17日(水)から10月24日(水)まで、東京・池袋のあうるすぽっとにて上演。新垣は11月17日 (土)に全国ロードショーを開始する村上虹郎、広瀬アリス主演の映画「銃」にも出演している。(ザテレビジョン

モーニング娘。5期メンバーとして活動した新垣里沙。高橋愛の後を継ぎ、7代目リーダーも務めた