MBS・TBS・BS-TBS“アニメイズム”枠にて好評のうちに放送を終了したTVアニメ「ハッピーシュガーライフ」(原作:鍵空とみやき/月刊「ガンガンJOKER」にて連載中)。
松坂さとうと神戸しおを中心とした“甘くて痛い”戦慄の純愛サイコホラーである本作が、大きな話題を呼んだ本作について草川啓造総監督と原作者である鍵空とみやき先生を直撃。「ハッピーシュガーライフ」誕生秘話からアニメ化する際のこだわり、キャストの印象、誰もが衝撃を受けた「あの」ラストのことまで語っていただいた。
原作もアニメも“目”の表現にこだわった
――原作はどのようなところから着想されたのかお聞かせください。
鍵空とみやき(以下、鍵空) 「悪の教典」という映画を観た時のインパクトがすごくて、あのようなダークなキャラクターを描いてみたいなと思ったのがきっかけかと。
――ダークな部分はそこから生まれたのですね。本作はキャラクターがかわいいからこその怖さもあります。そこは何か意図が?
鍵空 いえ……描いていたらかわいい感じになってきてしまいました。元からかわいいキャラの方が描きやすかったというのもあると思います。
――草川総監督は、原作の第一印象はいかがでしたか?
草川啓造(以下、草川) 絵柄は少女漫画っぽい感じなのに内容はサイコホラーという、絵柄と内容のギャップがすごいインパクトでした。ミステリアスな部分も多くて、一気に最後(その時点の最新刊)まで読んでしまいましたね。
――それは総監督を担当すると決まってから読まれた?
草川 そうです。「この原作をアニメ化します」と渡されて(笑)。ただ、最初は先入観なく読んで、すごく面白いなと思いました。
――アニメ化するにあたり、どのような魅力を描こうと思いましたか?
草川 この作品は心理描写やモノローグ(心の声)が多めなので、それをどうやって映像に落とし込もうかなと。比喩的な表現も結構多く、アニメ化するにはチャレンジングなことがいろいろできそうだなと思いました。
――事前に鍵空先生を交えて話し合いもしたのでしょうか?
草川 キャラクターの年齢や部屋がどういう構造になっているかなど、原作にはっきり書かれていない設定を聞いたりはしました。あとは、まだ原作がない先の展開についてとか。
――より具体的に意識したポイントを教えてください。
草川 キャラクターの目が特徴的なんですよね。なので、目のバリエーションは原作からいろいろ抽出しました。それによってニュアンスをうまく伝えようかなと。
――目のインパクトは原作を読んでいてもすごくありました。やはり描かれていた時もかなり意識したのですか?
鍵空 そうですね。漫画でもアニメでも目の強いものはインパクトが違うなと感じていたので、いろいろ模索しながら描いていました。
草川 さとうの目が一番バリエーションありますよね。渦巻きみたいになっていたり、瞳孔にちょっと線が入っただけのシンプルなものとか、逆にハイライトがいっぱい入っているものとか。
鍵空 目と表情は気を遣っています。
――アニメでは目の渦巻きが動いていたのも印象的です。
草川 せっかくアニメなので動かそうという発想ですね(笑)。動かしたほうが面白いだろうと。そういうところはアニメならではの表現を追求した結果です。
――そのほかにアニメならではの表現や、本作の特徴があれば教えてください。
草川 カットをいっぱい積んで見せていくやり方を取りました。原作もコマ割りが細かいといいますか、短いセリフに対してもコマがある印象でしたので、それを意識してアニメにも落とし込んでいます。制作会社的にはつらいところではあるんですけど(苦笑)、カット数が400近くいっている話数もありますね。
男性陣の変態な演技が秀逸
――キャラクターはみんな強烈な個性を放っています。その印象はいかがでしたか?
草川 しおちゃんかわいい! 天使! 三星がおかしくなるのもやむなしという感じですよね(笑)。
さとうはサイコチックというかサイコホラーの主役ではあるんですけど、普通の生活を送れているので、そんなにクレイジーなキャラクターではないのかなという気もしました。
――裏でやったことはクレイジーを通り越していますけどね。でも、やっぱり小さい子は草川総監督的にいいですか?
草川 それは答えづらいですね(笑)。すごく天使だと思います!
――原作で描いていて楽しかったキャラクターや、逆に苦労したキャラクターはいますか?
鍵空 男性陣の表情やしぐさは、描いていて本当に苦労しました。こんな顔は初めて描いたというのも多かったです。でも、イケメンの顔を崩すのは案外面白かったです。
草川 (笑)。アニメでも原作の絵を参考にして、さらにアニメで映えるようにという感じで作っています。
――その部分も含めて、映像になったものをご覧になっていかがでしたか?
鍵空 第1話(1st Life)を見た感想としては、全体的にキラキラしていてあまり見たことのない演出もあってよかったと思いますね。
――演出ということでは、砂糖菓子(コンペイトウ)を原作以上に強調しているのも印象的でした。
草川 後の話数で出てくる“瓶に詰まった砂糖菓子”を第1話から象徴的に使ったら面白いかなと思って。オープニングにも入れていて、全編通して同じテイストで味付けしている感じですね。
――キャラクターの話に戻ると、キャストの皆さんの演技はどうでしたか?
草川 皆さん本当に素晴らしい演技をしていただきました。(しお役の)久野さんは思っていたとおりの天使ボイスを出していただきましたし。
あと、花江さんの三星がすごかったですね。変態っぷりが半端なくて、度肝を抜かされました(笑)。北埋川が活躍する回での石川界人さんの演技もまたすごくて。
――総監督のほうから何かディレクションはあったのですか?
草川 基本的に大きな変更をお願いすることはなくて。個々のシチュエーションに対して「もっと張ってください」とか「ここは弱めで」など言った程度です。
――鍵空先生はアフレコをご覧になってどうでしたか? 描いている時は頭の中で声が流れていたりしたのでしょうか?
鍵空 (描いている時に)声のイメージはあまりしていなかったのですが、皆さん素敵なお声で素晴らしい演技をしてくださって、それぞれのキャラに合っているように感じました。特に男性陣は変態的な演技がすごくて、インパクトが強かったです。
ほかにも、メイン役以外では第1話で店長を演じた小林沙苗さんがいい演技をしていたなと思って。本当に皆さん素敵です。
草川 叔母さん役の井上喜久子さんもそうですね。第1話で初めて演じていただいた時、みんな「こういう感じだよね」と納得して一発OKでした。メインの2人はもちろん素晴らしいんですけど、周りの人たちもこんなに素晴らしいのはなかなかないですね。
原作もアニメもラストまで見てほしい
――声以外にアニメの特徴として音があります。音楽や効果音で特に気を遣ったところを教えて下さい。
草川 効果音を重厚な感じにしています。「サイコホラー的な要素もありますので」と上野さん(音響効果の上野励さん)にお伝えしたら、ハリウッド映画のような厚い音をつけてくださって。
また、特殊な画面処理が入る場面が多くて、それに対してがっつりと効果をつけていただいて….それをダビングの際に(場面に応じて)外したり足したりしながら作っています。
鍵空 効果音はすごく使い方が上手だなと、見ていて思いました。
草川 オンエアで初めて音楽や効果音がついたのを見たわけですから、新鮮でしたよね?
鍵空 そうですね。本当に新鮮でした。
――ストーリーで特に思い出深いシーンを教えてください。
草川 第9話のしょうこの“あのシーン”は本当にオンエアできるんだろうかと、コンテの段階で心配になっていました(笑)。
――あそこは原作でも衝撃的でした。あの展開は最初から決めていたのですか?
鍵空 かなり前半、第2話~第4話ぐらいで決めた気がします。早いうちに決めて、そこに至る物語を描いていったという感覚ですね。
――アニメの脚本・ストーリー部分に関しては、鍵空先生も意見を言われたのでしょうか?
鍵空 そうですね。といっても、そこまでリクエストしたわけではなくて。(脚本を読んで)原作をしっかりくみとってくれていると思ったので、基本的にはお任せしました。
草川 待田(堂子)さんは原作のある作品はきちんと原作の意図をくみとって書いていただけたので、大きな直しはなかったですね。
――ラストの展開については、原作とアニメとで異なるものになるのでしょうか。
草川 原作の最新刊(第8巻)が出たばかりなので、アニメでどうなるのか気になっていたと思います。アニメでも最後まで描きたいと思い、原作のプロットをいただいてアニメと原作で同じ結末になるように作りました。細かいセリフやシチュエーションは違うものになるとはと思いますけど、大筋では同じラストになったのではないでしょうか。
鍵空 そのはずです。同じラストでもアニメは動いてしゃべるので、たくさんの気持ちを感じることができたんじゃないかと思います。原作もがんばりますのでどちらも見守っていただけたら嬉しいです。
――アニメに続いて原作のラストも楽しみです。最後にメッセージをお願いします。
草川 今までに手がけたことのないジャンルの作品に関われて、作り手である僕もドキドキしながら作りました。これからも応援してもらえたら嬉しいです。
鍵空 アニメは原作にはない魅力がいっぱいあります。アニメ同様、原作もラストまで楽みにしていただけたらと思います。
なお、本作のスペシャルイベント「ハッピーシュガーライフ フェスティバル」が2018年12月2日(日)に開催予定だ。このイベントでは、メインキャストのほか、主題歌を担当したアーティストも登場予定。こちらもお見逃しなく!
(取材・文/千葉研一)
【イベント情報】
■スペシャルイベント「ハッピーシュガーライフ フェスティバル」
・日時:2018年12月2日(日)
昼の部 開場 13:00 開演 14:00
夜の部 開場 17:00 開演 18:00
※開演時間は変更になる場合がございます。
・会場:有楽町朝日ホール
・出演:花澤香菜、久野美咲、花守ゆみり、花江夏樹、洲崎綾、ReoNa(昼の部のみ)、ナナヲアカリ(夜の部のみ)
・チケット販売情報については、公式サイトをご確認ください。(https://happysugarlife.tv/festival/)
>> アニメのラストは原作と同じところに着地した!? 話題のサイコアニメ「ハッピーシュガーライフ」放送終了記念、草川啓造総監督&原作者・鍵空とみやき先生インタビュー! の元記事はこちら
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