税金滞納者は絶対に逃さないーー。徴収率を上げようと、「ミラーズロック」という徴税ツールを取り入れる自治体が全国にじわじわと広がっている。税滞納者の車を差し押さえるために使われる、いわば「徴税兵器」だ。

今年だけでも、山梨県北杜市和歌山県白浜町が導入したことが伝えられているが、もともと発案したのは東京都庁の職員で、2011年から都が使い始めたものだ。いったいどのようなものなのか。10月初旬、東京都主税局の小野誠・徴収指導課長に話を聞いた。

●剥がせば「封印等破棄罪」

ーーミラーズロックとはどのようなものですか

「まず、臨海部を担当する都税事務所の職員が発案したアイデアです。臨海部はタワーマンションが多く、そこでは機械式の立体駐車場が一般的。機械式の立体駐車場ではタイヤが進むスペースはありますが、他に余分なスペースがほとんどありません。そこで、タイヤに金具をつける装置が使いにくいという問題にぶつかり、ミラーズロックが考案されました。

ミラーズロックはビニールテープやマグネットを使って、運転席側のドアに『運行を禁ずる』と掲示します。そのためスペースに悩まされることがありません。またタイヤをロックする装置に比べて軽量で持ち運びもしやすい、という利点があります。作業時間も5分の1程度に減りました」

ーーそれだと剥がすことも簡単にできてしまいませんか。また効果は上がりましたか

「確かに物理的には可能でしょうが、それをすると封印等破棄罪に問われます。税の滞納に加えて、刑事罰を受けるということは心理的に相当つらいはずです。

効果は上がりました。目立つテープが貼られますので、『恥ずかしいから取ってくれ』という反応が増えました。1週間以内に払うか払う約束をしていただいたら、外すようにしています」

ーーミラーズロックは費用面では高くつかないのでしょうか

「ひとつあたり、8000円程度だと聞いています。タイヤをロックする装置は1万5000円から2万円程度ですから、安く済むと考えていいのではないでしょうか」

●研修のため、地方の市町村から職員受け入れ

ーー地方の市町村に対して東京都主税局として何かしていることはありますか

「主税局が持っているノウハウを地方に広げようというのは大きな命題です。地方からは任期1年などで職員の受け入れをしているほか、こちらからも短期間ではありますが研修のために地方に出向くことがあります」(期間の差はあるが2017年度は計48人を受け入れ)

ーー地方の市町村がミラーズロックを導入する背景にはどのようなことがあると考えていますか

「地方は小規模な自治体であれば特に、住民と近い行政をしていて厳しい徴税がしにくいという要素があるのかもしれません。一方で、ミラーズロックをすれば目立ちますから、徴税にはかなり役に立つと思います。

東京と地方はよく比べられ、財源的に対立しやすいところはありますが、『対国』という意味では同じ地方自治体ですから仲間です。しっかり協力していきたいという思いです」

●都税徴収率、99.0%で過去最高

ーー現状、都税の徴収率はどの程度でしょうか

「2017年度は99.0%と過去最高になりました。ミラーズロックも当然貢献してくれています。推移を振り返れば、リーマン・ショック(2008年)があった影響で下がった時期もありましたが、ここのところは徴収率は上昇傾向が続いています。

ただ、オリンピック後に景気がよくない可能性を指摘する声もあります。税の徴収は景気の動向にもかなり左右されますので、楽観はできません」

(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama

(弁護士ドットコムニュース)

徴税兵器「ミラーズロック」 羞恥心に抜群の効き目…東京都が考案、全国に拡大中