トヨタソフトバンク10月4日、新しいモビリティサービスの構築に向けての戦略的提携を結んだことを発表し、新会社新会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)株式会社」を両社の合弁で設立した。発表会にはトヨタの豊田章男社長とソフトバンク孫正義社長が出席。国内の株式時価総額1位と2位の会社のトップが顔を揃えたことで話題を集めたが、この新会社「モネ テクノロジーズ」は果たしてどんな未来を我々に見せてくれるのだろうか?

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両社の提携は必然だった?
発表会にはトヨタから豊田社長のほか、友山茂樹副社長も出席。この2人、トヨタが運営する自動車関連のポータルサイトGAZOO.comガズードットコム)を立ち上げたことでも知られ、友山副社長は同社の情報システム本部本部長やコネクティッドカンパニー President、それにGAZOO Racing Company Presidentなども務め、クルマIoT化については最前線に立つキーパーソンだ。

発表会で登壇し、握手を交わす豊田章男社長と孫正義社長(中央)。向かって左端は新会社の社長を務める宮川潤一ソフトバンク副社長、右端は友山茂樹トヨタ副社長。

実はこの2人、今から20年前に中古車のネット商談システムであった「ガズードットコム」の立ち上げ時に、孫社長から新たなシステムの導入を提案され、断りに行った経験があるという。「当時は血気盛んな課長と係長だったので、いろいろ失礼もあったと思う」と豊田社長は振り返るが、20年の時を経て当時からクルマネットワークの連携を進めてきた2人が社長と副社長になり「クルマを造る会社から、モビリティサービスを提供する会社へ」転換を図る中で、ソフトバンクと手を組むことになるのは、必然だったと言えるかもしれない。今回の提携について、声をかけたのはトヨタの方からだったという。

ガズードットコム」立ち上げ時の豊田・友山両氏の写真を背景に当時のことを語る豊田社長。

一方で、ソフトバンクも昨今はモビリティ関連の企業群への投資を積極的に行っている。トヨタも出資するライドシェア大手、UBERの筆頭株主はソフトバンクであり、それ以外にも自動運転や物流、マップなどモビリティに関連する企業を多く抱える。単なる通信会社ではなく、モビリティに強いIoT企業になっているからこそ、世界のトヨタパートナーとして選んだと言えるだろう。

UBERなどのライドシェアは単なる配車アプリではなく、AIを活用したモビリティラットフォームを提供している」とモビリティとAIの連携の重要性を述べた孫正義社長。

どんなモビリティの未来を切り拓く?
では、ソフトバンクトヨタ、そして「モネ テクノロジーズ」はどんな未来を実現しようとしているのだろうか? 豊田社長は自身のプレゼンテーションの中で「今、自動車業界は100年に一度の転換期を迎えている」として、その課題を「CASE(コネクテビリティ、自動運転、シェアリング、電動化)」と表現した。こうした課題に取り組むために、今回の提携が不可欠だったと強調。一方、孫社長は世界で年間125万人といわれる交通事故の死亡者数に触れ、その解決のためにはモビリティとAIの連携を進めていく必要があると説く。

CASE」というワードで「100年に1度の転換期」を迎えるクルマ社会の課題を説明する豊田社長。

クルマ社会の最大の課題とされる交通事故。その9割以上は人為的なミスが原因だ。また、同じく課題の1つとされる渋滞も、流れを最適化すれば同じ台数のクルマが走行していても解消は可能と言われる。こうした課題を解決するためには、自動運転やAIの活用が不可欠だ。「モネ テクノロジーズ」の事業は「MaaS(Mobility as a Service)」と呼ばれ、クルマや人の移動に関するデータを用いて需給を最適化し、移動における社会課題の解決や新たな価値を創造することと定義される。

具体的には、CES2018でトヨタが発表した「e-Palette(イーパレット)」を活用し、移動コンビニや病院シャトルなどのサービスを実現。現在でも4人に1人、将来的には3人に1人が65歳以上になると言われる高齢化社会の問題や、今や820万人いると言われる買い物困難者問題などの解決を目指す。

新会社「モネ テクノロジーズ」の事業でキーとなる電動の自動運転車両「イーパレット」。

移動コンビニや病院シャトルなど、想定される「イーパレット」の活用法を説明する宮川社長。

2018年内に事業を開始し、2020年代半ばまでには「イーパレット」による自動運転を利用したモビリティサービスAutono-MaaS」事業をスタートさせるのが「モネ テクノロジーズ」の目標。高齢化や地域の活性化などの課題解決に向けて、自治体とも連携し、全国100地区での展開を目指す考えだ。

日本社会の抱える課題について、パネルで数字を示しながら説明する宮川社長。こうして見ると、モビリティで解決可能なものが多いと感じられる。

発表会は両社長のトークセッションによって締めくくられたが、その席上、「未来のクルマはどうなるのか?」という問いに対して豊田社長は「わかりません。ただ、”愛車”と呼ばれるように“愛”の付く存在ではあり続けたい」と語り、孫社長は「車体だけでなく、それをコントロールするセンターまで含めて、今のスマホ以上に半導体の塊になることは間違いない」と述べた。将来的に、クルマのカタチがどうなるにしろ、モビリティとAIの連携が飛躍的に進むことだけは間違いなさそうだ。

ショップや病院のほかにも、移動式オフィスなど様々なサービスに活用可能な「イーパレット」。クルマではなく、モビリティと呼ぶのにふさわしい存在となるだろう。

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ニュースリリース

text増谷茂樹
(d.365

掲載:M-ON! Press