あのナベツネも愛読していると言われるマキャベリの『君主論』。16世紀イタリアで書かれたリーダー論の古典だが、今も会社や組織のリーダーを目指すものにとって普遍的なテキストとして読み継がれている。政界や会社組織のなかで目的のためなら手段を選ばない人物が、「ずるい」「非情」というニュアンスを含みつつ“マキャベリスト”と揶揄されることも少なくない。そんな影響力を持つマキャベリの『君主論』を「もしも小学生が読んだら」という設定で書かれた『よいこの君主論』(架神恭介、辰巳一世、ミサオ/スクウェア・エニックス) は、難しい『君主論』の内容を「小学生の覇権争い」という物語形式でわかりやすく解説した入門書。2009年に発売されヒットした書籍だが、9月25日コミカライズの1巻が発売された。

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 君主を目指す各グループリーダーは、統治の方法も仲間の集め方も実にさまざま。しかし、最終的に専制君主を狙う彼らは、いずれも君主になるための手段を選ばない。他のグループで不満をもっている人たちを見つけては、リーダーの陰口を吹き込んで内部分裂を起こしたりゲームや物で釣って上手く自分のグループに誘導して引き込む。誰もが“友達”という名の構成員、部下を集めることに必死になっているのだ。しかし、ただ人員を増やしても意味がない。例えば男子のリーダーが治めるグループに女子が入った場合、女子の気持ちを理解してあげないと不満がたまり、やがては他のグループに取られてしまう。

 また、もともとリーダーだった人が他のクラスになり、副リーダーだったたかしくんが代わりにリーダーとなったグループでは、以前のように室内で遊ぶことがなくなり、たかしくんの好きなサッカーばかりやらされた結果、メンバーが反感を持つようになる。本来ならこういった世襲制のグループは、もともと決まっていたルールをはみ出さずに維持し続ければ統治するのも簡単なんだそう。しかし、たかしくんが自分本位にそのルールを変えてしまったので、メンバーは他のグループにあっさりと鞍替えしてしまうのだ。

 さらに、遠足ではさまざまな思いが交錯する。お菓子選びひとつとっても、すでに戦いは始まっているのだ。例えば、ある者は10円、20円の安いお菓子を買ってみんなに分け与える。またある者は、高価なものや他の人が持ってこないような珍しいものを用意して注目を集める。そうやって自分を優位にするためにいろいろと試行錯誤しながら準備をするのだ。

 そして、バスの座席も彼らの運命を大きく左右する。くじ引きで決まったとなりの人をグループに引き込んだり、中にはバスの移動中に他のグループリーダーを潰してそのグループを乗っ取るものまで現れる。しかし、マキャベリが言うには「良い極悪非道」と「悪い極悪非道」があるというのだ。「政権を奪い取るために必要な悪行を一度だけおこなってその後は悪行を繰り返さず民衆の心を掴んでいけばそれは“良い極悪非道”になる」そうだ。『よいこの君主論』で、実際にマキャベリが語る「良い極悪非道」の使い方を実践し政権を奪い取り、メンバーに慕われる良い君主となるのは果たして――。

 うーん、それにしても。こうして見てみると派閥争いで誰と組むか知恵を絞ったり、物で釣って従わせたり、どこかで見覚えがあるような気がしてならない。そう、誰が総理大臣になるかの争いも、会社の出世競争も、小学生クラスリーダーを目指してやっていることと大して変わらない。あるのはそれがお金や役職なのかお菓子ゲームなのかといった違いぐらいだ。職場の人間関係でなんか割を食ってる気がするという人は、もしかしたら職場のプチ・マキャベリストの策謀にはまっているのかも。リーダーを目指す人だけでなく、よいこだけでなく、オトナの組織をうまく泳いでいくためにもオススメしたい1冊だ。

(ダ・ヴィンチ電子ナビより)

『よいこの君主論』(架神恭介、辰巳一世、ミサオ/スクウェア・エニックス)