三菱電機男性社員5人が2014~2017年の間、長時間労働が原因で精神障害疾患を患い、労災認定され、うち2人は過労自殺していたことが9月27日、判明しました。報じたのは、朝日新聞の同日刊、衝撃のスクープでした(参照:朝日新聞刊9/27)。

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※画像はイメージです(以下同じ)
 さらに労災認定された5人のうち3人は、専門業務裁量労働制(いわゆる裁量労働制)が適用されており、過労により自殺した社員1人もそのなかに含まれていました。朝日新聞によると、2012年自殺したこの男性技術者(当時28歳)は、残業という概念のない裁量労働制のもとで実質100時間の残業が数ヶ続いて、精神障害を発症していたといいます。

 三菱電機は「この件とは関連はない」としながらも、今年3月に約1万人の社員を対に適用していた裁量労働制を撤し、議論を呼んでいます。
  
 そもそも裁量労働制をめぐっては、今年の通常国会で、拡大されるはずだった対者が、労働時間の不適切データ問題が原因で、働き方革関連法案から全面削除されるなど、何かとゴタついた経緯があります。一体、裁量労働制とはどのようなものなのか、めて確認してみましょう。

そもそも裁量労働制って何?

 裁量労働制は、「みなし労働制」のひとつで、労働基準法第38条の3及び第38条の4に基づく制度です。裁量労働制が適用された場合、実際に働いた時間とは関係なく、労使であらかじめ定めた時間働いたものとしてみなされるという特徴があります。

 ただし、裁量労働制が適用できる職種は限られており、「ゲームソフトウェアの創作の業務」「建築士の業務」「弁護士の業務」や「事業活動の中枢にある労働者」といった「専門業務」の19職種と、「企画業務」に分類される職種が対となっています(参照:「専門業務裁量労働制」「企画業務裁量労働制」)。

 そして、先ほどもちらっと触れましたが、政府が先の通常国会の最重要法案と位置づけていたのが、働き方革関連法案。しかし、厚生労働省が提出した労働時間のデータが不適切だったとして、国会が紛糾。法案自体は2019年4月に施行されることが決まりましたが、裁量労働制の対範囲拡大については、削除されました

 裁量労働制は、長時間を招きやすく、労働者に負担が重くのしかかる制度として、問題視されています。また、本来ならこの制度を適用できない職種の労働者にも、裁量労働制を適用している例も多くあります。

 そして、これまでに違法適用のあった企業の驚くべき事例をご紹介します。

「名探偵コナン」などのスマホ用アプリ制作会社の事例

スマホ 依存

 2016年に『イケメン』『名探偵コナン』などのスマホアプリ制作会社サイバードに入社した女性は、専門業務裁量労働制に適用されると説明され、1日10時間8分のみなし労働時間を設定されました。

 しかし、入社1かから、7080時間の時間外労働をすることになりました。また、休憩もほとんど取られておらず、上示で徹夜での業務や、休日出勤をしなければならないこともありました。これらの長時間労働の結果、彼女は適応障を患ってしまいました。

 さらに、専門業務裁量労働制を適用できる「ゲームソフトウェアの創作の業務」とされていましたが、実際にはソフト開発とかけ離れた業務に従事させられていたことも分かっています(参照:「裁量労働制ユニオン」)

 また、大規模な建築プロジェクトを数多く手掛けるプランテック総合計画事務所に勤務する20代女性は、100150時間の残業で、1日20時間労働を強いられることも少なくなかったそうです。それなのに1日のみなし残業時間は8時間だったため、それ以上の残業代は支払われませんでした。

 このように、裁量労働制を適用しているにもかかわらず、過酷な労働時間や、裁量が極端に少ないケースというのもあります。この女性は、結果的に精神疾患を患うほど追い込まれてしまいました(参照:「ブラック企業ユニオン」)

大手企業も例外ではない…野村不動産の事例

野村不動産
野村不動産が入居する新宿野村ビル CC BY 3.0
 これまで中小企業を紹介してきましたが、大手企業も例外ではありません。

 大手不動産会社である野村不動産の東京本社に勤務していた50代の男性は、入居者とのやり取りや仲介業者の対応、またトラブルによる呼び出しなどで、1か最大180時間という長時間労働になり、2016年9月自殺してしまいました。

 野村不動産では、本来は「事業活動の中枢にある労働者」にしか適用できない企画裁量労働制を営業担当の社員にも適用していたとして、東京労働局から是正勧告と事業者の表の措置が取られました。そのことによって、現在では同社は企画裁量労働制を止するなど、大きなニュースとなりました。

「おかしいかな?」と思ったらまずは相談を

 制度が正しく運用されれば、会社にとっても労働者にとっても、メリットの大きい裁量労働制度ですが、実際には、労働者に過度な負担を強いるケースが少なくありません。それは、中小企業に限らず、よく知られた大企業も同様です。

 プランテック総合計画事務所で働いていた女性は「ブラック企業ユニオン」のブログで、「内部の人々にはこれが当たり前だと言われ続けたため、騙し騙し働いて来た結果、自分はまだ大丈夫と思って行った病院でその日に即入院を勧められました」とコメント。また、「自分が通常ではあり得ないような労働時間で働き、またその対価を支払われないことがあまりに恥ずかしかった」とも述べています(参照:「ブラック企業ユニオン」)。

 自分がブラックな職場環境に置かれていることは、周囲に言い出しにくいことですし、自分自身でそのことを認めてしまうこともツラいことです。しかし、身体を壊してしまってからでは遅く、体調が回復するのにも、長い期間を要する場合もあり、最悪の事態に発展してしまうケースもあります。

 もし自分の労働環境に少しでも疑問があるという方は、知り合いや上、労働基準監督署など一度相談してみることをおすすめします。

TEXT湯浅肇>

【湯浅 肇】

美術館でマネジメントのかたわら、写真メインに数多くの時事ネタマルチメディア関連の記事も執筆。常に新な切り口で情報発信をアラサー男子

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