Point
・ネコの死因第一位は腎臓病によるもので、平均寿命は15歳
・マクロファージの細胞死を抑制する因子とした見つかったAIMが、ネコの腎臓病の改善に使えることを発見
・AIMを利用したネコのための薬が開発中であり、2022年の発売が目標

世界中で飼われ、愛され続けている猫。大事な家族の一員という人も多いと思いますが、その平均寿命は15歳と、人間に比べ遥かに短いものです。そしてその死因の多くが、腎臓病によるものであることがわかっています。

しかし今回、猫の腎臓の働きを改善する可能性のある研究が発表されました。“AIM”というタンパク質の働きを研究してきた東京大学の宮崎徹教授が、その研究過程で、猫の腎臓病の改善にこのAIMが役立つことを発見したのです。研究の成果は“Nature Medicine”で2016年に発表されています。

Impact of feline AIM on the susceptibility of cats to renal disease
https://www.nature.com/articles/srep35251

宮崎教授は、試験管実験において免疫細胞であるマクロファージの自殺を妨げる因子としてAIMを発見しました。生物の細胞には、細胞が必要でなくなった時に自殺する「アポトーシス」という仕組みがあります。AIMは、“apoptosis inhibitor of macrophage”(マクロファージ・アポトーシス抑制因子)の頭文字をとったものです。

しかし、このAIMが具体的に生体内で何をしているのかは長い間わかっていませんでした。発見のきっかけとなったのは、実はたまたますれ違ったノーベル生理学・医学賞を受賞したジョセフ・ゴールドシュタイン博士からの助言とのこと。博士の言葉からヒントを得た宮崎教授が、AIMの機能を持たないマウスを太らせてみたところ、動脈硬化や肥満がひどくなったのです。

Credit: 東京大学

他分野を横断的に調べる重要性に気付いた宮崎教授は、様々な病気についても調査。その研究過程で、ネコの腎臓病にAIMが関わっていることが判明しました。

一般に腎臓病は、死んだ細胞が尿管を詰まらせた結果、腎臓に負担がかかることで起こります。ヒトのAIMは普段はIgMという免疫グロブリン(抗体の仲間)にくっついた形で血中に存在します。腎障害が起こると、AIMはIgMから離れて尿に移行し、尿管を詰まらせている死んだ細胞に取り付いて標識となります。この標識に周りの細胞が反応し、死んだ細胞を食べることによって尿管の詰まりは解消されるのです。

しかし、ネコのAIMはIgMと強力にくっついていることが判明しました。そのため、腎障害が起こっても尿に移行することがありません。死んだ細胞は放置され、腎障害はどんどん進んでしまうのです。

そこで宮崎教授は、ベンチャー企業(株)レミア(L’Aimia)を設立。現在AIMを利用したネコの治療薬を開発しており、2022年までには商品化を予定しています。この薬によって、猫の寿命が15歳から30歳にまで延びる可能性があるとのことです。

 

大切なあなたのネコと、もっと長く楽しい時を過ごせる未来がもうすぐ来るかもしれません。

 

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via: 東京大学/ text by SENPAI

 

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