アニメはたらく細胞』が中国のアニメ最大手配信サイトビリビリ動画」において、全話の累計視聴総数が1億回を突破した。日本国内の配信サイトでも、軒並みトップレベルの累計視聴総数を記録しているが、なぜ中国でこれほどの人気を得ているのだろうか。

【大きい画像を見る】「はたらく細胞」教育機関・医療施設向け素材無償提供のご案内 (C)清水茜/講談社・アニプレックス・davidproduction


はたらく細胞』では、人間の体内にある白血球や赤血球、血小板といった主に免疫細胞を擬人化し、対外に侵入してくる細菌やウィルスなどとの攻防が繰り広げられる。イケメンで仕事熱心な白血球と、体内の隅々に酸素を運搬するドジッ子女の子な赤血球を中心に、実際の身体のメカニズムに基づいて描かれているため、非常に勉強になる作品である。

実際に、連日の猛暑で熱中症社会問題になった7月には、正しい知識を啓蒙するために原作の第6話「熱中症」を全ページ無料で公開したり、アニメ放送後には教育機関・医療施設向けに素材の無償提供することを発表したり、アニメの枠を超えた話題を呼んでいる。

■中国での人気の理由について、ビリビリ動画の見解は?

日本動画協会の「アニメ産業レポート2017」によると、日本アニメの国別海外展開状況で中国が1位を記録しており、言わばアニメを買ってくれるお得意さんだ。日本の新作アニメは中国でほぼ同時期に配信されており、中国のいわゆるオタク層は、毎シーズン日本のアニメを楽しみにしている。

しかし、一方で国内全体のシェアを見れば、中国オリジナルアニメが上回っており、日本のアニメは中国において一部のニーズに需要があると言わざるを得ない。そんな中でのアニメはたらく細胞』の「ビリビリ動画」で配信された7月期TVアニメ視聴数第1位、全話累計視聴総数1億回突破という記録は、一般層にまで人気が波及したからだと担当者は語る。

「原作自体のストーリーが凄く面白いですが、アニメ化で更にパワーアップしました。キャラクターも凄く可愛いですし、声優さんたちの素晴らしいパフォーマンスが加わったことで、本当に生き生きしてますね。人体に関する知識もたくさん紹介されているので、コアファンだけでなく、一般の方々も凄く受け入れやすい作品で、保護者の方々からも絶賛です」(ビリビリ動画担当者)

■中国オタク事情を長年見てきた識者は語る「中国のアニメ視聴者にとっての驚き」

中国オタク文化の中心にあるコスプレにおいても、赤血球や血小板といった可愛い女の子キャラクターコスプレが人気だ。中国のコスプレ事情に詳しい中国カメラマンに聞いたところ、「キャラクター可愛いのと衣装製作が簡単なことからコスプレをする人が多いです」と、キャラクターの魅力が人気を呼んでいるようにうかがえた。

一方で、中国でオタク文化が形成され始めた1993年頃から2006年まで中国に滞在し、中国オタク事情を発信している百元籠羊(ひゃくげん・かごひつじ)さんは、同作品が中国で爆発的な人気になったのは「面白くてためになる、誰でも語れる作品」だったことが大きな理由に感じられたと語った。

実際に、中国のネットではこの作品に関して「これは良い科普(科学普及)作品だ!」「今までの擬人化ネタで一番ためになる作品かもしれない」「学校でなんとなく覚えた知識でネタを理解したりツッコミを入れたりできるのが楽しい」などといった声が見られるそうだ。

「もちろん、中国のオタク界隈ではアニメクオリティ血小板などのキャラクター萌えについても熱く語られていますが、中国における爆発的な人気や一般層にまで広がる話題性を見ていくと、やはり『誰でも語れる』『知識を学べてためになる作品』という部分がかなり大きいようです。中国では「役に立つもの、意義のあるもの」が好まれる傾向も強いですしね」(百元籠羊)

また、中国ではアニメマンガを、知識を学ぶ方面に活用することが少なく、日本のいわゆる「マンガで学ぶ」的な作品にも馴染みが無かったという話も聞こえているようで、「『はたらく細胞』が少年マンガ的なノリでありながら、真正面から人体の知識をテーマに扱い、勉強と娯楽を両立していることが、中国のアニメ視聴者にとっては結構な驚きとなった模様です」とのことだった。

日本にとっても中国にとっても“ためになるアニメ”なのは間違いなく、それが一般層にまで広がったのは共通しているようだ。
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元籠羊
十数年の中国生活をとりあえず終えて帰国。中国に広まった日本のオタク文化や、中国のオタクな若者達に関する情報をブログから発信。『オタ中国人の憂鬱 怒れる中国人を脱力させる日本の萌え力』を出版しており、様々なニュースサイトなどに寄稿をしています。【ほかの画像を見る】「はたらく細胞」(C)清水茜/講談社・アニプレックス・davidproduction

「はたらく細胞」赤血球(C)清水茜/講談社・アニプレックス・davidproduction