これまで数々の映画の題材として扱われてきた“銀行強盗”。泥臭いものからスタイリッシュなものまで、様々な趣向を凝らした作品が生みだされてきた。そんな銀行強盗ムービーの最新作『ザ・アウトロー』が10月20日(金)より公開。そこで今回は、本作とあわせて過去の名作をチェックしていきたい!

【写真を見る】アメリカン・ニューシネマの傑作として名高い『明日に向って撃て!』など、名作揃いな“銀行強盗ムービー”

■ タフな男たちのぶつかり合いに痺れる…『ザ・アウトロー』

ロサンゼルスを舞台に切れ者の強盗集団とワイルドな刑事たちの戦いが描かれる『ザ・アウトロー』。ジェラルド・バトラー扮する刑事のニックは、“伝説の強盗”メリーメンが企てる3000万ドルをねらった銀行強盗計画にたどり着き、追い詰めていくが…というストーリーだ。

華やかなロサンゼルスの街とは対照的に、ひたすら乾いた渋い映像で痺れるような男たちのぶつかり合いを描いた本作。特に52日間の撮影のうち10日を費やし、徹底的にリアルさを追求したという銃撃シーンは圧巻。息をもつかせない緊迫した空気感に、シビれること間違いなしだ。

ストップモーションの代名詞…『明日に向って撃て!

1890年代の西部開拓時代を舞台にした『明日に向って撃て!』(69)は、実在の銀行強盗ブッチ・キャシディ(ポール・ニューマン)とサンダンス・キッド(ロバート・レッドフォード)の2人組を描いたアメリカン・ニューシネマの傑作。堅気の仕事に付けない生粋のアウトローのカッコよさが詰まっている。

ストーリーは、強盗によりお尋ね者となってしまった2人に追手が迫るという逃避行で、刺客に追われ、山賊に襲われ、警察にも見つかり…と徐々に追い詰められいく様子がつづられる。ストップモーションを駆使した美しいラストは映画史に残る名シーンとして知られており、未見の人はぜひチェックしてほしい!

■ 事態は思わぬ方向へ…『狼たちの午後』

アル・パチーノ主演の『狼たちの午後』(75)は、銀行強盗モノとしては変わり種の一本。本作の犯人たちは、決して手練れとは言えず、銀行に乗り込んだものの、そこにお金はなく、警察にも囲まれ…とトラブル続き。目的は果たすことができず、仕方なく籠城という手段を取るが、マスコミの問い詰めに応じるうちに、何故か世間からはヒーローとしてはやし立てられるという、思いもよらないストーリーが展開していく。

本作は実際に起きた銀行強盗事件を映画化しており、その犯人の目的はゲイの恋人の性別適合手術を受けさせるためだったという。ちなみに本作の収益によって、その恋人は無事に手術を受けることができたそう。アカデミー賞で6部門にノミネートされた、アル・パチーノ初期の代表作の1本だ。

■ 強烈なインパクトを残す冒頭5分間…『ダークナイト

意外かもしれないが、ここでアメコミ映画の『ダークナイト』(08)を紹介したい。本作では、冒頭にジョーカーピエロのマスクを被った集団が、銀行を襲う場面が描かれている。分け前を巡って強盗同士が殺し合うなど、他人同士が対立するよう仕向けて、人々が怖がるのを楽しむというジョーカーの異常なスタイルが凝縮されており、観るものを作品の世界へと一気に引き込んでいく。

マイケル・マン監督の傑作『ヒート』(95)など様々な映画のオマージュが盛り込まれている部分も、映画好きなら見逃せないポイント。また銀行強盗を題材としたゲーム「PAYDAY2」には、本作のパロディが登場するなど、5分程度の場面ながら、のちの作品にも影響を与える強烈な印象を残していることがわかる。

■ 音楽が鳴り響く興奮度マックスのカーチェイス…『ベイビー・ドライバー』

最後に紹介したいのが、天才的なドライビングテクニックを持ち、逃がし屋という形で銀行強盗に加担する主人公を描いた『ベイビー・ドライバー』(17)。エドガー・ライト監督によるスタイリッシュなカーアクション×音楽演出が冴えわたっており、楽曲に合わせてのギアチェンジヘアピンターンなど、ノリノリでユニークなカーチェイスを楽しむことができる。

そんな本作は、銀行強盗の見せ方も独特で、車中で音楽を聴いてノリノリになりながら犯行が終わるのを待つベイビーの視点からチラッと映す程度。個性的な作品で知られるライト監督のセンスの良さが炸裂している。

『ザ・アウトロー』をきっかけに、これらのバリエーション豊かな作品もあわせてチェックして、奥深き“銀行強盗映画”の世界を味わってほしい!(Movie Walker・文/トライワークス)

切れ者強盗集団とタフな刑事たちの戦いを描いた『ザ・アウトロー』