前半、右MFの伊東、左MFの原口はともにボールロストが目立った

 日本代表は12日、キリンチャレンジカップパナマ代表と対戦し、9月のコスタリカ戦に続き3-0の勝利を収めた。東京五輪世代のDF冨安健洋シント=トロイデン)がA代表デビューを飾り、ロシアワールドカップ(W杯)に出場したDF槙野智章(浦和レッズ)、MF原口元気ハノーファー)、FW大迫勇也ブレーメン)以外は代表歴ひと桁のフレッシュなメンバーを先発として送り出した森保一監督。16日にはFIFAランク5位のウルグアイ戦を控えているだけに、DF吉田麻也サウサンプトン)やDF長友佑都ガラタサライ)、DF酒井宏樹マルセイユ)らを温存したのも頷ける。

 対するパナマのガリー・ステンペル監督は、30時間の長旅や時差ぼけなどをマイナス材料に挙げていたが、ロシアW杯に出場したメンバー9人をスタメンに送り込んだチームは、明らかに9月に対戦したコスタリカよりも格上だった。

 立ち上がりからパナマのボールポゼッションに、日本は劣勢を余儀なくされる。その一因は両サイドMFにあった。右のMF伊東純也柏レイソル)はスピードを武器にするサイドアタッカーだが、パナマもスピードがありフィジカルも強い。このため伊東はボールロストが目立った。

 一方、ロシアW杯では右サイドで起用されたものの、この試合では本来の左サイドで起用された原口は、得意なはずのカットインを試みても二人目で引っかかり、こちらもボールロストが少なくなかった。大迫のポストプレーからサイドに展開しても起点を作れないため、日本の攻撃にはなかなかリズムが生まれなかった。正直、ドリブルで相手を剥がせるMF中島翔哉ポルティモネンセ)か、キープ力のあるMF堂安律フローニンゲン)を入れた方がいいのではないかと思ったほどだ。

状況を一変させた青山のキラーパス、南野の先制弾をお膳立て 後半には両サイドMFが…

 これに関して森保監督は、「チームとしても、まだ何試合もしているわけではないので、今日初めてお互いにプレーする選手もいます。もっともっとクオリティーを上げてミスを少なくするのに越したことはない。選手は姿勢を見せてくれた。ミスをしたらミスした選手が取り返す。周りの選手もリアクションしてくれたのを前向きに評価したい。トライしてミスしても、取り返すリアクションをしてくれた。ミスをしたら全員で守る。それをポジティブに捉えたい」と庇った。

 そんな状況を一変させたのが、キラーパスを得意とするMF青山敏弘サンフレッチェ広島)だった。青山は前半23分にDF室屋成(FC東京)へのサイドチェンジで決定機を演出し、同25分にはGK権田修一サガン鳥栖)のスローを受けるとロングパスで大迫につけ、原口のドリブルからゴール正面でFKを獲得。そして同42分、パスカットからMF南野拓実ザルツブルク)の先制点をお膳立てした。

 そして後半になるとパナマも疲れたのか、日本ペースで試合は進む。前半は機能していなかった両サイドMF、伊東は中央に入ってフィニッシャーになることで2点目を決めただけでなく、サイドにスペースを作って右SB室屋の攻撃参加も引き出した。3点目はFW川又堅碁(ジュビロ磐田)のシュートが記録としてはオウンゴールになったが、自陣左サイドからスピードに乗ったドリブルで右サイドへと流れた原口の得点と言ってもいいだろう。

 トップ下の南野頼みの攻撃が、後半は両サイドのMFが機能し、追加点を奪取した。これはチームにも、選手個人にとっても好材料と言っていい。

これまでは守備を固める相手をいかに崩すか、16日ウルグアイ戦はいかに勝機を見出すか

 試合後の森保監督は「10月のキリンチャレンジカップの2試合で、できるだけ多くの選手にピッチに立ってもらいたかったし、プレーを見たかった」と語り、「公式戦でA代表初選出がいたり、経験のある選手と一緒にプレーすることで、融合というか、化学反応があったかどうか分かりませんが、チームの融合と全体の戦術浸透はできたので、次の試合につながると思う」と手応えを口にした。

 まさに、その通りだろう。先月のコスタリカと今回のパナマ、11月のベネズエラキルギスは来年1月のアジアカップに向けて、守備を固める相手をいかに崩すかのシミュレーションとなるマッチメイクではないだろうか。しかしウルグアイは違う。パリ・サンジェルマンのFWエディンソン・カバーニら世界有数のアタッカーを有しており、強国からいかに勝機を見出すかという試合になる。

 ただ、12日のテストマッチでウルグアイは韓国に1-2と負けているだけに、アジア遠征における彼らの“本気度”は微妙なところでもある。(六川亨 / Toru Rokukawa)

前半、左MFの原口(左)、右MFの伊東はともにボールロストが目立った【写真:田口有史】