いまや日本人の2人に1人が「がん」に罹るリスクがあると言われており、今やがんは国民病のひとつとなっています。ですが、食習慣や生活環境の改善で多くのがんが予防できることが分かってきました。

そこで、科学的な研究で明らかにされた日本人のための「がんを防ぐための新12か条」(財団法人 がん研究振興財団)について栄養士が解説します。(※1)

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1条 たばこは吸わない
たばこは肺がんだけでなく、胃・膵臓・子宮頚がんなどのリスクを上昇させ、心疾患や脳卒中などの原因にもなります。吸っている人はまず禁煙にチャレンジしましょう。

2条 他人のたばこの煙をできるだけ避ける
たばこは吸っている本人だけでなく、周囲の人の健康にも悪影響をもたらすので配慮が必要です。最近では分煙がだいぶ進んできましたが、吸わない人もたばこの煙をできるだけ避ける事が大切です。

3条 お酒はほどほどに
飲酒は食道・肝臓・大腸がんをはじめとした多くのがんのリスクを上げますが、適量なら心筋梗塞脳梗塞のリスクを下げることが知られています。

お酒はアルコール量に換算して1日23g程度を心がけるこ(※2)と。多く飲んだ日があったら翌日は飲まないようにし、週に2日はお酒を飲まない休肝日を設けて肝臓を労わることも忘れずに。

【お酒の種類別に見るアルコール量23g】
日本酒なら1合(180ml)
●ビールなら大瓶1本(630ml)
●焼酎や泡盛なら1合の2/3(120ml)
ウイスキーやブランデーならダブル1杯(60ml)
●ワインならボトル1/3程度(240ml)

4条 バランスのとれた食生活を
主菜・副菜・主食が揃った彩り豊かな献立は、炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルをバランスよく摂ることができます。偏食することなく、さまざまな食品を食べるよう心がけましょう。

【食べ過ぎるとリスクを上げる可能性があるものとは】
牛肉・豚肉・ヒツジ肉などに含まれる動物性脂肪、輸入ナッツ・穀類に混入することがあるアフラトキシン、ハム・ソーセージなどの加工肉に含まれるニトロ化合物が挙げられます。

特にハムやソーセージなどの加工肉について、国際がん研究機関(IARC)は毎日50g以上食べると大腸がんのリスクが高まると発表しています。(※3)平成27年度国民健康栄養調査によると、日本人の平均摂取量は1日平均12.4g。(※4)普通に食べる程度なら気にせずとも大丈夫ですが、食べ過ぎている場合は、食生活を見直す必要があります。

5条 塩辛い食品は控えめに
減塩によって、日本人に一番多い胃がんを予防することができます。1日あたりの食塩摂取量として男性は8g未満、女性は7g未満が目標です。(※5)だしを効かせたり、かんきつ類ハーブスパイスの風味を利用したりして減塩を心がけましょう。
塩辛や練りウニのような塩分の多い食品が好きな人は、週1度くらいに抑えましょう。

6条 野菜や果物は不足にならないように
世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)の研究で、野菜や果物の摂取が口腔・食道・胃がんのリスクを低下させる可能性が高いことがわかっています。野菜や果物の目安は、1日に合計400g以上を食べること。野菜小鉢を5皿(5SV)、果物は1皿(1SV)を目安に意識してみましょう。

7条 適度に運動する
家事や仕事を含め、1日の身体活動量の多い人ほど、がんだけでなく心疾患や糖尿病のリスクも低くなります。離れたコンビニエンスストアやスーパーに行く、目的地から離れた駐車場を使うなど、普段からカラダを動かすことが健康につながります。1日合計1時間くらいの運動が、続けやすくほどよい運動量です。

8条 適切な体重維持
日本人の場合、欧米人よりも肥満によるがんへの影響は少ないとされています。
しかし、糖尿病や脂質異常症などの原因となるので、太り過ぎは改善したいもの。
また、痩せによる栄養不足も免疫力を低下させ、感染症を引き起こしたり、血管の壁がもろくなって脳出血を起こしたりするので注意が必要です。

中高年期男性(40歳以上)のBMI(体重kg/身長m×身長m)で21~27、中高年期女性(40歳以上)では21~25の範囲内になるように体重をコントロールしましょう。

9条 ウイルスや細菌の感染予防と治療
がんを引き起こす細菌やウイルスがあります。特に、肝炎ウイルスやピロリ菌については地域の医療機関で一度は検査を受けてみることをおすすめします。

【がんの原因となるウイルスや菌】
肝炎ウイルス:B型・C型肝炎ウイルスに感染している人は肝臓がんに罹患しやすいとされています。
ヒトパピローマウイルス:ほとんどの女性が感染しているウイルス。1/100~1/1000の確率で子宮頚がんが発生します。
ピロリ菌:胃がんの発生因子のひとつとされていて、中高年の感染率が高いことが分かっています。

10条 定期的ながん検診を
がんの自覚症状は進行してからのことが多く、早期で症状が出ることはあまりありません。がん検診は、症状のない早期がん・前がん状態のうちにがんを発見するのに有効です。1年~2年に一度はがん検診でカラダの状態をチェックするのがベスト。

11条 身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
やせる・顔色が悪い・貧血がある・下血やおりものがある・咳が続く・食欲がない、などの体調の変化に気がついたら、医療機関での受診をおすすめします。

12条 正しいがん情報でがんを知ることから
がんに効くとされる健康食品などが出回っています。根拠の乏しい方法を鵜呑みにせず、正しい情報をとり入れましょう。もし、疑問を感じたら、かかりつけ医などの専門家に相談することも重要です。

自分のカラダは自分で守ることが大切です。「毎日すること」「毎日食べること」を見直し、ストレスのない範囲で出来ることから改善し、がんになりにくいカラダを目指しましょう。

【参考・参照】
(※1)公益財団法人 がん研究振興財団 がんを防ぐための新12か条
(※2)国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ 飲酒と死亡リスク
(※3)農林水産省 国際がん研究機関(IARC)による加工肉及びレッドミートの発がん性分類評価について
(※4)厚生労働省 平成27年国民健康・栄養調査報告 第1部栄養素等摂取状況調査の結果
(※5)厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要

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[文:あすけん 管理栄養士]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

「がんを防ぐための新12か条」とは?栄養士の視点で解説!