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米中間の貿易摩擦が中国の消費者の購買意欲減退を招いており、中でも新車など大きい出費を控える傾向が統計で表れ始めています。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、欧州大手自動車メーカーVWの中国内での売上げが大きく落ち込んだことを指摘。米中貿易戦争のダメージが範囲を広げ、欧州不況に連鎖することを論理的に解説しています。

米中貿易戦争の影響が欧州に波及するメカニズム

先日の記事「世界同時株安で分かった、日本に飛び火する米中貿易摩擦の火花」では、「なぜ米中貿易戦争が日本に影響を与えるのか?」という「理論的な話」をしました。今回は、「米中貿易戦争が欧州に影響を与え始める」という実例についてお話しします。先日の話、「そのまんま」になっていることがご理解いただけるでしょう。まず、こちらをごらんください。

中国自動車販売が減少、GMやVWなどに打撃
10/10(水)13:55配信

香港(CNN Business)

 

世界最大の自動車市場である中国で販売台数が減少し、米ゼネラル・モーターズ(GM)や独フォルクスワーゲン(VW)といった欧米の大手メーカーが軒並み窮地に立たされている。国内の株価低迷や米中通商問題を受けて、消費者の購買意欲が減退していることが要因とみられる。

米中貿易戦争で中国消費者の購買意欲が減退し、GM、VWの販売台数が減っているそうです。

VWは9日、9月の中国での販売台数が前年同月比で11%近く減少したことを明らかにした。その前日にはGMが、7~9月期の中国販売について前年同期から15%落ち込んだと発表。英ジャガーランドローバーも、9月の中国での売り上げが46%減少したことを受け、国内の1工場の稼働を2週間にわたって停止中だとしている。
(同上)

  • VWは9月、前年同月比で11%減少
  • GWは7~9月期、前年同期比で15%減少
  • ジャガーは9月、前年同月比で46%減少

中国汽車工業協会(CAAM)によると、同国での販売台数は7、8月ともに減少が続いている。VWは米国との貿易摩擦で「消費者の間に漠然とした不透明感」が生まれ、新車に大金をつぎ込むことに二の足を踏ませていると分析する。
(同上)

VWによると、販売台数が減っているのは、米中貿易摩擦で、「消費者の間に漠然とした不透明感が生まれ」ているからだそうです。

今回とりあげたいのは、VW、すなわちフォルクスワーゲンです。VWというと、毎年トヨタ販売台数世界一を競っている」会社。VWグループ、2017年の世界新車販売台数は1,074万1,500台でした。前年比4.3%増加し、トヨタを抑えて世界一の座を守っています。

このVWグループ。中国での販売台数は2017年、なんと418万4,200台。中国市場は、VWの販売台数の約4割(!)を占めている。ちなみに欧州での販売台数は432万8,500台。中国一国で、欧州全体とあまり変わらない台数売れている。

その中国市場で、VWの販売台数が減りはじめた。これから米中貿易戦争がさらに激化すれば、ますます減っていくことでしょう。4割を占める市場での販売台数が減っていく。このことは、VW全体の業績に大きな影響を与えるに違いありません。