Point
・大切な人を亡くした多くの人が、その死後に故人の「声」を聞いたり「姿」を見るといった体験をしている
・科学者の中には人の「知覚」を「修正された幻覚」と考えている人もおり、その現象も何ら非科学的なことではないとしている
・もし故人が見えたとしても、それは脳が「悲しみ」を処理するプロセスの一環であり、パニックに陥る必要はない

「死者の声」と聞くとおぞましいイメージが湧いてきますが、それが「癒やし」になる場合もあります。

イギリスのデボン州に住むマリア・ルイーズさんは、20年前に亡くした「母の声」が時々聞こえてくることがあります。人生における大きな決断をする時に、母が背中を押してくれるというのです。

彼女が「正気を失っている」と思う人もいるかもしれませんが、ウェールズにおける最新研究において、配偶者を亡くした13%の人々が、死んだはずの配偶者の声を聞き、14%の人々が姿を見たことがわかっています。そして中には、故人に「触れる」ことができたと感じている人さえもいました。

興味深いのは、そのような現象を経験している人のほうが、経験していない人と比べてはるかに「悲しみ」に対して上手に対処することができているといった点です。

昨年、シンガーのセリーヌ・ディオンは2016年に亡くした最愛の夫レネ・アンジェリルを、今でも「感じる」ことができると語っていました。時々、22年間連れ添った伴侶の「声」が聞こえてくるのです。

セリーヌ・ディオン

このような、死者の「声」や「臭い」や実際の「姿」を知覚する現象は、心理学者によって “Experienced Continued Presence(ECP)” といった名前が付けられています。

ECPが「死後の世界」を証明していると語る人がいる一方で、科学者たちはこれをより理論的に説明します。彼らは、私たちが感じる「知覚」はすべて、脳が作り出した「予測」から始まっていると言います。

私たちが何かを体験したとき、私たちは心にその出来事のスキーム(枠組み)を形成し、次に何が起こるのかを予測します。そしてこの「予測」が、景色・音・臭いといった現実世界からのフィードバックを受けることにより変化を起こし、「知覚」を発生させます。つまり、科学者は「知覚」を「修正された幻覚」であると考えているのです。

すなわち、脳は人生において一貫して行動を共にしたパートナーについて「予測」することに慣れており、たとえこの世から姿を消した後であっても、脳がその存在を「知覚」してしまうのです。

多くの人が故人について、生前お気に入りだったアームチェアや、ダイニングテーブルに座っている幻を見るのはそのためであると考えられます。

大切な人を失った人の多くが経験するECPですが、その体験について進んで語ろうとする人は多くありません。その最も大きな理由は、体験者がECPについて語ることで、「頭がおかしくなってしまった」と判断されかねないと思っているからです。

もしあなたに故人が「お気に入りのイス」に座っているのが見えたとしても、パニックになる必要はありません。それはあなたが精神的におかしくなったサインではなく、悲しみを処理するためのプロセスの一環なのです。

 

幽霊はなぜ科学的に証明できないの?ある物理学者の回答

 

via: dailymail / translated & text by なかしー

 

死者を感じる「ECP」は科学的に説明が可能である