今月10日は、73回目となる朝鮮労働党(以下、労働党)の創建記念日だった。北朝鮮は、ソ連から帰国して間もない金日成氏が、平壌の公設運動場で開かれた朝鮮共産党以北5道責任者および熱誠者大会で基調演説を行った1945年10月10日を、同党設立の日としている。

北朝鮮の人々にとっては太陽節(4月15日金日成主席の生誕記念日)、光明星節(2月16日金正日総書記の生誕記念日)などと並び、政治的に重要かつ喜ばしい日のはずだが、多くの党員はワイロを払ってまでお祝いの行事をサボろうとしている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

中国との国境にほど近い平安北道(ピョンアンブクト)龍川(リョンチョン)の情報筋が挙げたサボりの理由は、ワタリガニ漁だ。

9月から始まり10月になって最盛期を迎えたワタリガニ漁だが、産卵を終えて脂の乗ったメスが多く獲れるのは10月に入ってからだ。

「9月まではオスが美味いが、10月からはメスが美味しくなる。味も栄養も満点なので、カニを買い付けようとする中国の密輸船がひっきりなしに出入りしている」(情報筋)

地域住民はこぞってワタリガニ漁に出かけている。それは党員も例外ではない。「党員証を持っていてもメシは食えない」と考える彼らは、漁とカネ儲けに忙しく、党創建73周年など眼中にない。予め幹部にワイロを渡し、10日朝に行うべき金日成主席と金正日総書記の銅像への献花をサボって、カニ漁に繰り出す。この時期に1年間の収入を確保しようとしているのだから、無理もないだろう。

(参考記事:北朝鮮でイカ漁が最盛期…「イカラッシュ」で漁村はてんやわんやの大騒ぎ

別の情報筋によると、北朝鮮の新義州(シニジュ)税関と中国の丹東税関は、党創建を記念して10日を休日とした。新義州税関の職員は朝から銅像に献花するなど、記念行事に参加はしたものの、その態度は真面目とは言えない。

「今年の党創建記念日の行事は新義州税関の政治検査員がワイロをせしめる日だった。党への忠誠度を買われて選抜された彼らは、行事が終わった後に不正行為を摘発された税関職員や貿易業者から札束でワイロを受け取っていた」(情報筋)

(参考記事:3年間で一生分の収入を確保する北朝鮮の税関職員

政治的に敏感な事項を除けば、大抵のことがカネとコネの力でどうにかなるのが今の北朝鮮なのだ。

(参考記事:拝金主義蔓延の北朝鮮、革命の「聖なる池」でもカネを払えば泳げる!?

開城市に建てられた金日成・正日氏の銅像(2016年10月6日付労働新聞より)