おいおい何だこれは」。東京都世田谷区に住む会社員男性(30代)の不安は膨らんだ。「アダルトサイトを閲覧しているあなたの姿をウェブカメラで撮影した。家族や同僚にばらまかれたくなければ、仮想通貨で金銭を支払え」。10月9日夜、受信ボックスに届いた一通の不審なメールには、こうした趣旨の記載があった。単なる「迷惑メール」として瞬時に消せなかったのは、自分が現在使っているパスワードも付記されていたからだ。

●まさか…自分のパスワードを送りつけられる

メールに付記されたパスワードは、男性が複数使っているうちのひとつ。8桁以上の英数字からなるものだ。「不幸中の幸い」とでも言えばいいのか、金融機関(ネットバンク)で使っているものとは異なったが、それでもやはり気持ち悪い

しかも、男性は「ヘビーユーザーではないが、アダルトサイトを見たことがないと言ったらウソになる」という。職場の同僚に知られてもどうってことはないが、家族に知られるとしたら「ちょっと嫌だな」と男性は考えこんだ。

迷惑メールだとしたら、同様の被害相談がネットに出ているかもしれないーー。そう思った男性がネットで調べると、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)と独立行政法人情報処理推進機構」(IPA)が注意を呼びかけていることを知った。

●7月〜9月、相談件数は約300件

IPAによると、2018年7月以降、同様のメールを送りつける手口が広がっているという。相談件数は7月と8月で計30件だったのが、9月には263件にものぼった。文面は英語のものと日本語のものが確認されているが、日本語は不自然で、IPAは「英文を翻訳サイト等の機械翻訳にかけたものと考えられます」と紹介していた。

実際、男性に送られてきたメールの文面には「私が支払いを受けると、すぐにビデオを破壊します」「これは非交渉可能なオファー」など、ぎこちない日本語表現がいくつもみられた。

ただ、パスワードを知られていることに対する心配は消えない。IPAは何らかの原因で外部サービスからデータが漏えいし、それを元に記載されているとみている。ただ、「流出経路とその原因は不明」という。

●IPA「メール無視とパスワード変更を」

IPAは、メールを無視することに加え、記載されたパスワードが現在使用しているものなら変更し、新たなパスワードは「長く」「複雑」にして複数のサービスで使い回さないよう呼びかけている。

男性は「アダルトサイトの閲覧が原因ではないかもしれないけど、何だか気持ち悪いので、今後は不用意に閲覧することをやめます」。IPAによる注意喚起を参考にし、パスワードをすぐに変更。メールも削除した。

(弁護士ドットコムニュース)

「アダルト閲覧」につけ込む迷惑メール、仮想通貨を要求…パスワードも流出し大慌て