近年ではメディアでも自転車事故が多く取り上げられていますが、その事故の損害賠償の金額に驚かれる人も多いのではないでしょうか。特に2013年に小学生が起こした事故で約9,500万円の支払いが命じられた事件は世間の注目を集めました。

 

【引用】一般社団法人日本損害保険協会パンフレット

 

自転車は気軽に運転できる乗り物ですが、道路交通法上では自動車と同じ扱いです。被害者に重傷を負わせるような大事故を起せば、その責任はとてつもなく重いものとなるでしょう。

 

この記事では、自転車事故で重大事故を起した場合に加害者が請求される損害賠償やその支払について紹介していきます。

死亡・後遺症が関与する事故は損害賠償が高額

自転車に限ったことではなく、被害者が亡くなったまたは重い後遺症を負った事故では損害賠償が高額になります。このような重大事故については高額な慰謝料と逸失利益の請求が認められるのです。

 

損害賠償

概要

後遺障害慰謝料

後遺症を負わされた精神的苦痛に対する慰謝料。後遺症の度合いによって金額が変動。裁判所基準の相場は110~2,800万円

死亡慰謝料

被害者を亡くした遺族の精神的苦痛に対する慰謝料。被害者の家庭内の立場によって金額が変動。裁判所の基準(高齢者が亡くなった場合)だと1,800~2,400万円

逸失利益

事故で死亡または後遺症を負わなければ労働で将来得られていたはずの収入に対する損害賠償。50歳で年収700万円の妻子4人暮らしの男性が亡くなった場合だと約5,524万円

 

なお、被害者が後遺症を負った場合には、上記の後遺障害慰謝料と逸失利益だけでなく介護費用の支払いを要する場合もあります。

 

また、死亡事故の場合、被害者の損害から一定の生活費相当額が控除されるのに対し、後遺障害事故の場合、このような控除はありません。

 

そのため、自転車事故の損害賠償が最も高額になるのは、被害者が重度の後遺症を負ってしまった状況であると言えるでしょう。

 

保険未加入だと全額自己負担になる

自転車事故に備える保険に一切加入していない場合には、加害者は被害者から請求された損害賠償をすべて自己負担する必要があります。

 

自動車の場合には任意で自動車保険に加入している人が多く、強制加入である自賠責保険の保障も受けられるので、加害者が損害賠償を全額自己負担するケースはまれです。

 

しかし、自転車の場合にはこのような強制加入保険制度がないうえ、任意保険もあまり認知されておらず、未加入の人が多いため、加害者側の負担が非常に重くなるケースがあるのです。

 

なお、子供が事故を起こし、子供自身に責任能力がないような場合は原則として親が損害賠償の責任を負うことになります。責任能力の有無は明確に決まってはいませんが、12歳程度を基準に判断されているようです。

 

損害賠償を支払えない場合はどうなる?

保険未加入で高額な損害賠償を支払えない…。そんな状況の場合には加害者に相談をして分割払いに応じてもらうか、もしくは自己破産を選択するしかありません。

 

『故意に事故をおこした』『運転中にまったく前をみていなかった』などの重大な過失のある事故を除けば、交通事故の損害賠償は自己破産で免責される可能性はあります。損害賠償が高額でどうしようもない場合には最後の手段として検討する必要があるでしょう。

 

万が一を考えるなら自転車保険に加入しておくべき

免許もなく誰でも気軽に運転できる自転車ですが、自動車と同様に事故を起こせば相手の命を奪ってしまう危険性があります。事故を起こして多額な損害賠償が生じてしまったら、加害者・被害者ともに今までの日常を過ごせなくなる可能性が高いでしょう…。

 

どんなに注意していても事故を完全に防止することは不可能です。もし自分や家族が自転車を頻繁に利用する場合には、もしものときに備えて自転車保険への加入を検討することを強くおすすめします。

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