裁判傍聴芸人として名高い阿曽山大噴火による連載『裁判妙ちきりん』第6話!

法廷でしか味わう事のできない裁判のリアルをお届けします!

 

罪名 道路交通法違反

被告人 32才の会社員男性

 

 

起訴された事件は3つ。

1つ目は、去年7月15日午後11時すぎ。羽田空港付近の首都高を無免許で運転した件。

2つ目は、その同じ時、制限速度が時速80kmなのに時速162kmで車を走らせた件。

3つ目は、今年1月4日午後10時頃。羽田空港近くの首都高を無免許で運転した件。

 

スピード違反によって無免許運転がバレるという裁判は多々あるけど、その半年後にも再び無免許運転となると数少ないパターンです。

検察官の冒頭陳述によると、被告人は高校を卒業後、内装の仕事をはじめ、現在はリフォーム会社の営業職に就いているという。

住居は神奈川県内で妻子と共に暮らしているとのこと。

 

被告人は2006年運転免許を取得。しかし、2008年6月に運転免許停止処分を受け、同年10月に免許取消しに。

しかし、内装の現場に行くために無免許運転をくり返していたらしい。

2017年6月には自分名義で車を購入。

 

犯行当日である去年の7月15日は、新宿にいる友人に会うため、助手席に竹原沙織(仮名)を乗せて運転していたという。

もう1つの犯行当日、今年の1月4日は、歯医者に行くために車を運転。助手席には竹原沙織が同乗していたとのこと。

首都高の料金所で前方の車に衝突したことで、無免許運転が発覚。というのが事件の流れです。

 

わざわざ検察官が同乗者の名前を朗読するのもわからないんだけど、被告人と苗字も違うし去年の7月も今年の1月も助手席に座ってたというのもわからない部分です。

調べに対し、竹原沙織は「被告人が無免許とは知らなかった。何度も車に乗せてくれていて、週に3~4回のペースで乗っていた」と述べているという。

さらに検察官は証拠の朗読を続けて

 

検察官

こちらは被告人の妻の供述調書になります。“夫が無免許とは知らなかった。休日は子供を車に乗せて外出していた”と述べております

 

と、奥さんの調書を朗読です。どうやら、助手席に座っていた女は奥さんじゃないっぽい。

弁護人からは、今後の監督を約束することが書かれた嘆願書が提出されて被告人質問です。

 

弁護人

首都高を走ってる時、もしくは首都高に入る時、80kmの標識気づきました?

 

 

被告人

気づきませんでした

 

どうやら標識をあまり見てないタイプのようです。さすがは無免許ドライバー

 

弁護人

去年の7月の件ですけど、なんでこんなにスピード出したんですか?

 

 

被告人

人を待たせていたので急いでました

 

 

弁護人

夜遅いですけど、急いでたと?

 

 

被告人

相手が仕事関係の下請けの職人さんで、5万円を払うことになってたんですが、相手は朝早いのに30分遅刻してたので

 

 

弁護人

2008年から免許が無いと。10年間取得しなかった理由は?

 

 

被告人

忙しかったのと面倒くさかったのが

 

 

弁護人

安全運転してればいいと思ってた?

 

被告人

そうです

 

 

このやり取りは後で検察官につつかれることになるんだけど、今は堂々と安全運転宣言です。

 

弁護人

車は廃車したと。仕事は大丈夫なの?

 

 

被告人

事務作業に代わってもらいました

 

 

と、今は車もないし、車を運転する必要もなくなったとアピールして質問終了。

次は検察官から。

 

検察官

去年なんで車買ったの?

 

 

被告人

仕事で使…いや、プライベートで…、ま、家族で嫁や子供と使うためです。あと、知人から1台あるんだと話を聞いて

 

 

検察官

抵抗なかったの?

 

 

被告人

ありました

 

検察官

さっき、安全運転ならいいと思って運転してたなんて答えてましたけど、衝突事故起こしてますよね!

 

 

被告人

そうです、ダメですね……

 

 

検察官

標識も見ていないと

 

 

被告人

見落としてました

 

こういう裁判の場で安全運転を心がけてたとか言っちゃうと必ずツッコミが入りますね。

そして、新事実です。

 

検察官

スピード違反でオービスが光ったのわかりましたよね。その後、警察から連絡あった時、後輩のせいにしたのは何故ですか?

 

被告人

無免許がバレると思って……

 

 

実際に後輩が出頭することはなかったらしいけど、本件に加えて身替り出頭の罪も上乗せになることでしたね。

ひとつウソをつくと、また別のウソをつかなきゃならなくなる典型ですね。

 

裁判官

奥さんとはどんな話をしました?

 

 

被告人

無免許で子供乗せてたのか、と。2、3日話し合って。家にも入れてくれない勢いでした

 

 

検察官

無免許だと言ってなかった理由は?

 

被告人

当たり前ですけど、言えば乗るなって言われますし、タイミングを逃しました

 

 

検察官

今後はどうするんですか?

 

 

被告人

取得するまで運転はしません。電車やバスで職場に行けますし、妻が運転免許持ってるので

 

と、会社にも奥さんにも無免許と伝えたので無免許運転はしないと約束です。

最後は、裁判官からの質問。

 

裁判官

取得して2年で免許なくなったと

 

 

被告人

はい。1年以内に3点の違反を2回やって、初心者講習受けなくて

 

 

裁判官

無免許で乗ったきっかけは何ですか?

 

 

被告人

引っ越しの時に頼んだ業者が来なくて、ちょっとだけならと30分程運転したのが……

 

 

本件と関係ないけど、とんでもない引越し屋さんだこと。だからといって無免許運転がOKにはならないけど。

そして、ここから裁判官のスピードメーターが壊れはじめます。

 

裁判官

法廷に奥さん来てないから聞きますけど、竹原さんって彼女でしょ?

 

被告人

えぇ……

 

 

裁判官

家の外で彼女と会うのに、車は都合いいってのもあるんですか?

 

 

被告人

それはあります!

 

 

裁判官

そりゃあ便利ですよね

 

 

と、浮気するなら車だよねと意気投合。

 

裁判官

話してて楽しくてスピード違反。そして衝突事故起こしたと。そういうこと?

 

 

被告人

はい

 

 

取り調べにない部分を裁判官が妄想で補完です。

 

裁判官

今後、奥さんの監督に従えます?

 

 

被告人

はい

 

 

裁判官

でも、奥さんは彼女の存在を知らないんでしょ?

 

 

被告人

知らないです……

 

 

これは事件当時じゃなく、今現在って事なんですかね?

普通なら、奥さんも調書とか目を通してるから、助手席に女性が乗ってたのは知ってると思うけど……。

いろいろとウソをつき通してきた被告人のことですからねぇ。

 

裁判官

オービス光った後って運転は?

 

 

被告人

書類が届くまでの2ヶ月間はドキドキして運転を控えてました

 

 

裁判官

控えたってのはゼロってこと?

 

 

被告人

いや、週7日を4日とかに……

 

 

元々、週7日乗ってたのかよ。

 

裁判官

あなたの話を聞いた感想ですけど、会社にも奥さんにも交際相手にも免許がないと言えず、出頭命令も後輩に頼んでて、立ち止まるポイント沢山ありましたよ

 

 

そういう意味でも一時停止ができていないわけです。

 

裁判官

ホントに奥さんの監督に従えます?

 

 

被告人

はい!

 

 

裁判官

それは、奥さんにコソコソしないってこおですよ。わかってます?

 

 

と、ニヤリと笑ったところで質問終了。この後、懲役1年2月が求刑されて閉廷でした。

 

 

もしこの裁判がフィクションだったとして。

私は被告人の言葉に対して――

 

――愛人なら、無免許で週の半分も連れ回しやがってと思うだろうね。

ま、8/22に実際に行われた裁判なのだが。

 

バックナンバー

第5話「愛はパンティー窃盗より強し」

阿曽山大噴火の「裁判妙ちきりん」第6回 ~無免許で妻と愛人を運ぶスピード狂~