人々の精神に感応し、大きな影響を与えるエキゾチック・マター(XM)。そのXMをめぐる新たな戦いが幕を開ける——。フジテレビの新たなアニメ枠「+Ultra」で10月から放送される「INGRESS THE ANIMATION」は、人気ゲームをもとにしたフルCGによる拡張現実エンターテインメント。物語の重要人物となるサラ・コッポラを演じる上田麗奈さんに、作品やキャラクターの魅力について伺いました。

上田麗奈さんが演じるサラ・コッポラ

――フルCGの完成映像を見て、どうでしたか?

上田:リアリティが凄まじくて、アニメというより実写の海外ドラマを見ているような感覚でした。アニメの中でも現実世界と同じようにみんな「Ingress」で遊んでいたりするので、リンク感がすごいんですよね。私たちの世界でも同じことが起きてるんじゃないかっていう錯覚に陥ってしまって。こういうVRがあったら体験してみたいです。USJのアトラクションとか!? 最近アニメーションとのコラボをたくさんしていますし(笑)。

――あったら人気が出そうですね(笑)。こういった海外ドラマのような雰囲気だと、お芝居する上でも違いが?

上田:キャラクターが自分に近い頭身なので、お芝居も実写に近いような感覚がありました。オーディションも、普通に喋っている時に近い声で受けさせていただいて。新しい挑戦だったので、役が決まった時はワクワクしました。

――実際に収録をしてみた感想は?

上田:自分が喋っているようで新鮮でした。絵がある程度仕上がっていたこともあって、掛け合いでより集中できた気がします。最近、作品と声とのフィット感を勉強している最中なんですけど、ミニキャラクターとか小動物を演じる時とは、また違っていたと思います。

――サラはXMの重要な事柄に知っているかもしれない、でも記憶をなくしている女性。演じる時に意識したことは?

上田:サラは頭がよくて、先々のことを考えようとしている方。ちょっと早口で喋るとか、会話してるんだけど頭ではたぶん他のことを考えていて、掛け合いがなんとなくズレてしまうとか、頭がいい人ならではのクセみたいなもの出せたらいいなあというのはすごくありました。

――物語が進むにつれて、ちょっとお茶目な一面も出てきますね。

上田:第3話くらいから、コミカルなところも出てきますね。ちょっと天然ボケなのか、“本当に大丈夫かな”という作戦をそのまま実行したりとか(笑)。度胸があって快活で、正義感も強くて、完璧な女性なんだけど、そういうスキがあるところも可愛らしい魅力だなと思います。服装や髪型もコロコロと変わって、ミニスカートみたいなきわどい服装があるのもグッとくるポイントです(笑)。

――物語の中で気になるキャラククターは?

上田:どのキャラクターも掘り下げていける展開なので、みんな愛着があって…。個人的にはブラントさんかな? 先々でいろんな謎が溶けていって、ブラントさんの考えていることがわかるシーンがあるんですけど、その考え方って世界的には……ああ、これ以上は言えない! でも、私は共感できます。ブラント寄りな考え方かもしれない。

――ブラントは序盤では敵役ですが。

上田:この作品って、どのキャラクターもどこか親近感があって、敵役であっても憎めないんですよ。劉なんかも、気持ちがわかっちゃうところがあるので、心に残る人が多いと思います。劉は可愛いですね。お気に入りのキャラクターを挙げるとしたら劉です(笑)。

――主人公の誠の印象は? 一緒に行動することが多いですよね。

上田:最初はなよなよしているイメージがあったんですよ(笑)。男らしいというより、ちょっと繊細で。でも、サラと出会って、サラへの想いが強くなるたびに、ちょっとずつ男らしく成長していくんですよね。男らしさの塊みたいなジャックと対等に向き合えるくらいに。

――記憶喪失のサラに「君はサラって言うんだよ」と教えてくれるような頼れる部分や、ドキッとするような2人のシーンも…。男性として見ると、誠はどうですか?

上田:素敵だと思います! 名前を教えてくれるシーンは、まるで子どもに接するように優しかったですよね。あの時、サラとしては、この人は大丈夫なんだなって思えるきっかけになったし、私も“わかった、ついていく”って心から納得して言えたと思います。30歳、うん、ちょうどいいですね(笑)。伸びしろもありますし!

――誠の成長が楽しみです(笑)。事務所の先輩でもある中島(ヨシキ)さんとお話したことは?

上田:収録が丸一日だったので、お昼休憩があって。ヨシキさんや事務所の人たちとよくご飯に行ってました。作品のこととか、いろんなお話ができて、すごく助けられましたね。しかも、ヨシキさんが全部おごってくれるっていう。私、ウナギとか食べちゃって。いろんな意味でお世話になりました(笑)。

――なかなかの高級ランチ(笑)。そういった交流は演技にもいい影響が?

上田:誠とサラはどんどん心が繋がっていくキャラクターなので、ヨシキさんとはできるだけたくさんお話したいと思っていました。逆に、敵役のみなさんとは、いい意味で距離をとっておかないと、掛け合いでナチュラルになりすぎちゃうところもあるんじゃないかと、私は思っていて。ただ、喜山(茂雄)さんがフレンドリーに話しかけてくださったりすると、嬉しくて喋っちゃうんですけどね(笑)。

――そんな風に思うきっかけになったのは?

上田:以前、他の作品で、周りのキャラクターがみんな敵っていう役を演じた時に、役でイヤなことがあるとどんどん涙が出てくるくらい感情移入してしまって。他のキャストさんの誰とも一切関わらないような現場だったんです。でも、キャラクターと同じポジションにいるぶん、お芝居はしやすくて。終わった後は「大変だったー! 苦しかったー!」って感じでしたけど(笑)。そういう経験があったので、今回もできるだけ意識してみようっていうのがありました。

――サラ役にも没頭できたのですね。ちなみに、ゲームはプレイしましたか?

上田:現場の休憩時間にダウンロードしました。喜山さんやヨシキさんと「名前は何にする?」ってお話をして。サラがいいけど、もう他にいらっしゃったので、じゃあ「皿うどんにしよう」と、喜山さんがすごいパスを投げてくださって(笑)。スタジオの周りを回ったりしました(笑)。

――もし誠やサラのような特殊能力を身につけるなら、ほしい能力は?

上田:人の心を読む能力! 私、SNSをやってないんですけど、人の気持ちを必要以上に感じ取ってしまって、人目を気にしちゃうのが怖くて…。それこそ、今もこういう話をしてどう見られてるんだろう、話しづらいって思われてないかなとか、すごく心配(笑)。私みたいなタイプは、人の心が見えないくらいがちょうどいいのに、怖いもの見たさです(笑)。

――「イングレス」のような近未来やSFっぽい世界観に興味はありましたか? こういった雰囲気で他に好きな作品は?

上田:日常の中にちょっとしたSF感があったり、ちょっと不思議な違和感のある作品が好きですね。そういった意味で、「蟲師」は何度も見返しているアニメ。お母さんがたまたま借りてきて、私のほうがハマっちゃって。人間の世界に影響を与える蟲というものが日常にいて、解決策があるわけではないけど、どう共存していくのか。その描き方がすごく好きで。それと、「しあわせのパン」っていう実写映画は、現実世界なんだけど現実を忘れてしまうような作品。夫婦がやっているカフェにお客さんがひょろっとやってきて、コーヒーを飲んでひょろっと帰っていくんです。お金のやりとりがあるわけでもなく、どこかファンタジーな日常がただただ流れていく…。「イングレス」には、日常の中に“見たままのものとは限らない”世界があって。そういった世界観がすごく好きです。(WebNewtype・【取材・文・吉田有希】)

サラ・コッポラ役を演じる上田麗奈さん