日中でも常時点灯するDRL(デイタイムランニングライト)が、輸入車を中心に日本でも増えています。欧州などでは装着が義務化されており、基準のなかった日本でも2016年に認められました。国産車では今後、増えていくのでしょうか。

日本では2016年「解禁」

昼間にヘッドライトの一部を点灯している車が増えてきました。ただし、バイクや一部のバス、タクシーなどのように前照灯を点灯させるのではなく、前照灯の周りに配置されたスモールランプが点灯するというものです。

これはDRL(デイタイムランニングライト)などと呼ばれるもので、日本では2016年に「昼間走行灯」として「解禁」されました。欧州各国や北米では、日中のヘッドライト点灯が義務とされており、EUでは2011(平成23)年から、前照灯などとは別個にDRLの装着も義務化されていましたが、日本ではこのランプに関する基準がなかったのです。

EUの基準ではDRLの明るさは「400カンデラ以上」ですが、解禁前の日本ではこのランプは「その他の灯火」として扱われ、明るさが「300カンデラ以下」に制限されていました。このため、並行輸入車などではこの機能を有していても、日本では認められていないことから、無効化あるいは減光されるケースがありました。

「日本でもつけられたらいいな、という議論が以前からありました。欧州では安全性を高める装置としてだけでなく、クルマの個性を出す要素として扱われており、逆にいえば、DRLが機能することでクルマ本来のデザインが完結されます」

このように話すのは、アウディジャパンの担当者。日本での法令改正を受けて同社は2017年8月、このDRLを日本向けの全モデルに標準装備すると他社に先駆け発表、直後にBMWもこれに追随して全モデル標準としていくと宣言しました。こうしたこともあり、輸入車を中心にDRLを点灯させて走るクルマが増えているのです。

日本の保安基準で「昼間走行灯」は、日中にほかの交通からの視認性を向上させ、かつ、その光がほかの交通を妨げないものとして「照明部の大きさが25平方センチメートル以上200平方センチメートル以下」「ライトの光度が1440カンデラ以下」「ライトの色は白色」といった条件や、取付位置などに関する規定が定められています。

欧州仕様とはちょっと違う? 国産車のDRLの現状

国産車では、DRLはどのように扱われているのでしょうか。たとえばトヨタでは2018年10月現在、「アルファード」や「C-HR」の一部グレードに「デイライト」の名で装備されています。こちらは、日中にランプスイッチをAUTOにすると、クリアランスランプ(車幅灯、いわゆるスモールランプ)が自動で点灯するというものです。トヨタは「アルファード」のデイライトについて、「LEDヘッドランプ下部をライン発光させることで先進感を演出しています」としています。

ホンダでは「ステップワゴン スパーダ」のほか、北米で展開している「シビック」「CR-V」に設定。こちらも「アルファード」などと同様、ランプスイッチをAUTOにするとLEDのスモールランプが日中でも自動点灯する方式です。ただホンダによると、「欧州などではエンジンをONにすると同時に自動点灯するのがDRLの一般的な仕様です。自分で好きに点灯・消灯できる点でも、方式が若干異なります」とのこと。

欧州で一般的な「エンジンONと同時に点灯」という方式は、マツダが「CX-8」などの車種で「デイライトキット」というオプションとして設定しています。このオプションを選択すると、LEDのスモールランプが自動点灯するようになりますが、OFFスイッチも車室内に別途設けられます。国産車においては、DRLは一部車種、あるいはオプションという場合が多く、その仕様もEUとは異なるケースがあるようです。

先述のとおり、EUでは以前からDRLが義務化されていました。仮にEU向けの日本車ではこれが標準装備され、日本では機能を抑えていただけなのかというと、必ずしもそうではないようです。ある自動車メーカーの担当者によると、「ヘッドランプに関する法規は日本と欧州とで異なり、照射範囲や配光条件などがその地ごとに設定されています。日本向けのヘッドライトがそのまま欧州で通るわけではないので、共通化しようとしても完全に同じにはなりません」とのこと。

同担当者は、DRLは第三者から視認されやすくなり、安全にも寄与するとしつつも、国内での標準化については慎重な姿勢を崩しません。「装着が義務化されていない現状では、邪魔・不要と考えるユーザーにとっては価格アップとしか捉えてもらえず、受け入れられるかどうかという問題もあります」と話します。

DRLを点灯させているアウディ「Q8」(画像;アウディ・ジャパン)。