Point
・サイコパス傾向を持つ人はそうでない人よりも経営者になる確率がわずかに高い
・男性はサイコパス傾向を有することが昇進に役立つのに対し、女性は逆に処罰を受ける
・組織は、男性の悪質な振る舞いをより認識し、対策を行う必要がある

「サイコパス」とは反社会的人格の一種を指す心理学用語で、罪悪感や共感性に著しく欠けている精神病質者を指します。

周囲を絶対的に支配し、衝動を抑えられず、他人に共感できないというサイコパス傾向は多くの人に一定程度見られるものですが、本物のサイコパスはこの世に1%ほどしか存在しないと考えられています。

一方で、経営者にサイコパスの傾向があることも事実です。では、そこには一体どのような理由があるのでしょうか?

2008年のリーマンショック以降、組織におけるサイコパスの研究が進み、サイコパス傾向を持つ人は、冷酷さ、他人をコントロールしたいという欲望、周囲を操る能力を生まれながらに有するために、昇進の階段を駆け上りやすいことがわかってきました。

アラバマ大学のカレン・ランディ氏とアイオワ州立大学のマーカス・クレーデ氏らは、これをさらに詳しく調査。その結果、サイコパス傾向を持つ人は、そうでない人と比べて経営者に就任する可能性がわずかに高いことが明らかになりました。そして注目すべきは、男性はサイコパス傾向を持つことが昇進に役立つのに対して、女性はむしろこのことで処罰を受ける傾向が見られたことです。研究内容はオンライン雑誌Journal of Applied Psychologyに掲載されました。

Shall we serve the dark lords? A meta-analytic review of psychopathy and leadership.
http://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fapl0000357

アラバマ大学の准教授ピーター・ハームス氏によると、攻撃的行動は男性にはよくあることだと理解されがちで、男性のこうした行動は社会的制裁を受けずに見逃されることが多いようです。対して、女性が「求められる行動規範」に反してこうした行動を取れば、周囲の非難を受け、処罰を受ける傾向があります。周囲を支配する大胆な行動を取る男性は、リーダーシップ、判断力、行動力があると評価されるのに対し、女性が職場で怒り、攻撃性、優位性などを表すと、咎められるのです。たとえば、ニューヨークタイムズで女性初の編集長を務めたジル・アブラムソン氏は、「無愛想」であることを理由に解雇されています。

Credit: Visualhunt.com

「このようなダブルスタンダードが存在することは実に残念です。経営者を志す女性たちはよく、成功した男性経営者のサイコパス的行動を真似するように助言されますが、女性たちはそれを実行した結果が期待していたものとは異なることに気づき、ショックを受けるのです」と、ランディ氏は語っています。

このダブルスタンダードの問題は、今後の詳しい研究が期待される分野です。一方で、組織は、男性の悪質な振る舞いにもっと目を向け、これを許さないための取り組みを考える時期に来ているのかもしれません。「嘘をつくこと、ズルをすること、人のものを盗むことは、個人的野望を達成するためであっても、組織からの要求を叶えるためであっても、ただの楽しむためであっても許されないことです」と、ハームス氏は語っています。

 

女性が男性より競争に弱いとされる理由

 

via: ua, stylist/ translated & text by まりえってぃ

 

サイコパスの「男性」経営者は成功するが、女性は逆に「処罰を受ける」という研究結果