2018年10月14日東方Project同人誌即売会イベント「博麗神社秋季例大祭」が盛り上がる中、「東方同人音楽流通」なるものがスタート! 

 「東方同人音楽流通」とは、東方Projectの音楽がより手軽に聴けるように、同作の同人音楽iTunesGoogle Play Musicでダウンロード配信されるというプロジェクト。
 東方Projectの生みの親であるZUN氏にも許諾を取り、正規の著作権処理で東方二次創作楽曲を配信するほか、上海アリス幻樂団黄昏フロンティアによる原曲の配信も行っていくようだ。

 今回はそんな「東方同人音楽流通」プロジェクト始動を記念して、上海アリス幻樂団主宰のZUN黄昏フロンティアあきやまうに(U2)氏、このふたりによる対談を敢行。
 楽曲制作や、楽曲アレンジ(二次創作)について語っていただいた。

聞き手/伴 龍一郎
編集・文/小俣 元(バカー)


上海アリス幻樂団 ZUN(左)と黄昏フロンティア あきやまうに(U2)氏(右)

ラスボスBGMにボーカル・ZUN楽曲を使うのは禁じ手!?

──「東方同人音楽流通」では、まずは15サークル4500曲程度が配信されるようです。

ZUN氏:
 15サークルで4500曲以上って、相当ありますよね。1サークルあたり何曲作っているんだろう?

あきやまうに(以下、U2)氏:
 黄昏フロンティアでは、次回配信予定の分も含めたら200〜300曲はあります。ZUNさんも相当ありますよね?

ZUN氏:
 うちは、そんなにないんじゃない? 音楽CD、10枚くらいで。それぞれ10曲以上入っているからだいたい100曲くらいかな?

U2氏:
 豚乙女とか即売会イベントごとに2〜3枚新譜出したりしていますからね。

「東方同人音楽流通」にて配信されている楽曲の一部
(画像は東方同人音楽流通より)

ZUN氏:
 確かに、毎回、それくらい新作を出していますね。でも、楽曲だけなら作ろうと思えば作れますよ。

U2氏:
 今回の秋季例大祭、最初は「自分ひとりで音楽CD作ればいいかな」と思っていたんですけど、「プログラマードッターが使える? じゃあ、ゲーム作ろうか!」みたいな流れでゲームを出すことになったんですよ(笑)。

ZUN氏:
 音楽CDを作るのとゲームを作るのだと作業量の格が違う。

U2氏:
 いや〜、(作業が大変で)つらかった(笑)。

──そもそも楽曲のアレンジ(二次創作)をされることに対して、どう思っていますか?

ZUN氏:
 アレンジされたら嬉しいですよ。どんな風にアレンジされているのか、ちょっと聴いてみたくなりますし。

 聴いてみたら、とても素直にアレンジしている楽曲もあれば、めっちゃかっこよくなっている楽曲もあって、どこに原曲の要素があったのかわからない楽曲もあるわけですよ(笑)。
 でも、それぞれ音楽として純粋に面白い。

──黄昏フロンティアのU2さんの楽曲もよくアレンジされていますよね。

U2氏:
 ZUNさんの曲だけにしておけばいいのに、「僕の曲でいいの?」って思います(笑)。

ZUN氏:
 “東方”の二次創作のガイドライン的には、上海アリス幻樂団の東方作品も黄昏フロンティアの東方作品も東方”で区別がないからね。

 あとからクレジットを見たらU2さんの曲だったということもあると思います。

──東方アレンジでは、ボーカル曲も数多くありますが、ZUNさんはボーカル曲を書かないですよね。

ZUN氏:
 僕は書いたことないですね。

U2氏:
 僕は何回か書いたことがありますけど、インストのほうが圧倒的に作りやすくていいですね。

ZUN氏:
 そうですね。歌が入ると途端に難しい。単純に歌う人を選ばなきゃいけないし、自分で歌うのもちょっと恥ずかしくて(笑)。

U2氏:
 歌う人が可能な音域や得意な音域を把握してから作らないといけないのが大変で嫌なんですよね。

ZUN氏:
 ボーカル曲にアレンジしている人はそこも大変なところだと思います。原曲でそもそも歌えるような高さじゃないときは、頑張って歌える高さにアレンジしないといけない。
 歌(声)も生楽器のひとつなので、生演奏のときには必ず制限がかかるんですよね。

U2氏:
 自分は楽曲制作で生楽器を使うこともあるので、生演奏で制限がかかるというのはよくわかります。
 理解している楽器だと、いい鳴り方をする音域がわかっているから作りやすいんですよ。でも歌は慣れてないから本当にダメですね(笑)。

──ちなみに、おふたりともカラオケには行きますか?

U2氏:
 最近は全然行ってないですね。

ZUN氏:
 僕は、カラオケにはちょっとしか行ったことがない。

U2氏:
 昔、1回だけ一緒にカラオケ行きましたよね? そのときは怪物くんを歌っていたような……。

ZUN氏:
 違う違う、悪魔くんだよ(笑)。

U2氏:
 間違えた(笑)。

ZUN氏:
 エロイムエッサイム【※】だよ! 「アニソン歌うよ〜!」って言うから、「『悪魔くん』歌うしかないな!」って。

エロイムエッサイム
悪魔くん』で主人公の悪魔くんが悪魔を呼び出す際に唱える呪文。

──今後、ゲームにボーカル曲が入る可能性はありますか?

ZUN氏:
 入れてみたいけど、ひとりで作るとなると本当に大変だから、この作品で最後にするぐらいの勢いがあるときだったら、やるかもしれない。
 一番盛り上がるところのラスボスで、自分の歌が流れる。

U2氏:
 自分で歌うの!?

ZUN氏:
 そうそう。やるなら自分で完結しちゃう。でも絶対1回しか通用しないギャグだよね。笑っちゃって、うまく収録できないかもしれない(笑)。

──ラスボスZUNさんのボーカル曲、聴いてみたいです!

ZUN氏:
 ボーカルって歌詞がある分、めっちゃ強いんだよね。歌詞の力で、僕が笑うような歌を歌っても、泣かせることができちゃうと思う。
 結果、笑いながら感動しているみたいなね。でもこれをやったら味を占めちゃいそうだからなぁ。

──禁じ手ですか?

ZUN氏:
 ラスボスで、僕の歌が流れてきたら、それは禁じ手でしょう(笑)。次からそれに勝てなくなっちゃう。
 だから歌じゃなくて、例えばコーラスみたいなものだったら、もっと可能性は高いと思います。

──東方アレンジといえばMV、PVも面白いですよね。

ZUN氏:
 MV、みんなかっこいいよね。米津玄師みたいなのやってみたい。

U2氏:
 でも、ZUNさんはゲーム自体がMVみたいなものじゃないですか?

ZUN氏:
 確かに、僕の場合はゲームが“音楽を見せる”ためのものなんだよね。ゲームのプレイムービーを撮ったら、それがMVみたいなものなのかもしれない。
 MVをゲームっぽく作るんだったら、ゲームを作ったほうが自由度も高いし面白いと思ってしまう。

U2氏:
 ZUNさん、動画編集ツールを使うのが面倒くさいからゲームを作る、とかやりそうじゃないですか(笑)。

ZUN氏:
 やるやる(笑)。「実はこれ、プレイできるんです」って。

U2氏:
 動画のプレイボタン押したらMVじゃなくていきなりゲームが始まるみたいな。

ZUN氏:
 昔のFLASHで作ったゲームみたいなやつね。

──せっかくなので、告知がありましたらどうぞ!

U2氏:
 10月14日例大祭で、昔頒布したスーパーマリサランドのリメイク、『マリサランド・レガシィ』を出しました。

2018年10月14日に開催された秋季例大祭で頒布された『マリサランドレガシィ』のジャケット

──『マリサランド』の初代、持ってます。

U2氏:
 あの操作性の悪い初代、持っているんですね(笑)。13年ぶりですよ。今回、完全に作り直して操作性も良くなったと思います。あと多人数プレイができます。同時プレイだけど残機は共通。

ZUN氏:
 それ喧嘩になるやつじゃん(笑)。

U2氏:
 テストプレイしたらみんなカジュアルに死にすぎたので、全員がある程度同時に死んだら残機が減る、という仕様になりました。

マリサランドレガシィ』のゲーム画面

──オンラインで遊べるんですか?

U2氏:
 できないんですよね(笑)。このご時世にマルチプレイのオンラインがない。

ZUN氏:
 あれ付けると、結構大変だからね。

U2氏:
 このゲーム、多人数プレイするときは、意思疎通できないとすぐ死んで味方に腹が立ってしまうと思うので、ぜひ直接集まって会話しながらプレイしてみてください。

──「東方同人音楽流通」では、東日本大震災の影響で延期となり2011年5月に行われた例大祭8で頒布された、東北をテーマにした楽曲未知の花 魅知の旅も配信されると聞きました。

未知の花 魅知の旅ジャケット

ZUN氏:
 そうですね。あのときはCDレーベルをスリーブに入れて頒布していたので、レーベルに描かれている絵しかなかったと思いますが、今回は、ジャケットとして正方形の絵がちゃんとあります。

 あと1曲単位でも買えるようになっているけれど、できればアルバム単位で買って聴いてほしいですね。アルバム単位で聴いてもらうように作っていますから。

U2氏:
 1曲ずつ買うよりもアルバムで買ったほうが絶対安いんですよ。黄昏フロンティアのCDは大体2枚組以上、30曲以上を収録しているのでアルバムがかなりお得です。

 今回配信されるアルバムは、『完全憑依ディスコグラフィ』深秘的楽曲集暗黒能楽集・心綺楼の最近リリースした3作になるんですが、今後、古い楽曲も配信されていくと思うのでよろしくお願いします。

『完全憑依ディスコグラフィ』ジャケット

 まずは15サークルから始まる「東方同人音楽流通」だが、参加サークルは広く受け付けるとのこと。まだまだ沢山ある東方二次創作音楽サークルの配信にも期待したい。

「東方同人音楽流通」公式サイトはこちら

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 1996年同人ゲームで始まった『東方Project』も、その世界を広げ続けて、もう20年以上。筆者にその全体像はまったくつかみきれないけれど、まことココロ惹かれる。
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