「選手たちは個の特徴を発揮すること+チームのコンセプトとして一体感を持って戦うところで現段階のバランスは良いですし、良いトライをしてくれています」

ウルグアイ代表戦後、森保一監督が記者会見で語った言葉だ。日本代表は、FIFAランキング5位のウルグアイ相手に互角に戦い、4-3で勝利。森保ジャパンは、新体制発足から3連勝を飾った。

▽韓国代表とのアウェイゲームを2-1と落としたウルグアイ。時差ボケや移動の疲労、チームとしてのトレーニング時間の不足など、エクスキューズはあった。そして、日本はホームゲームであり、サポーターもチケットが完売するほど集まった。有利な点は多かったが、4-3で勝利することは予想できなかったはずだ。

▽試合を通じて、個人の良さが出たシーンもあった一方で、ミスも散見。チーム作りの途中ということもあるが、収穫と課題が明確に出た一戦となった。

◆収穫は攻撃陣の躍動

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ウルグアイ戦で最も大きな収穫は4得点を奪った攻撃陣だ。特に2得点を記録したMF南野拓実(ザルツブルク)の活躍は圧巻だった。9月のコスタリカ代表戦、そして先日のパナマ代表戦でもゴールを決めた南野は、3試合で4得点を記録。日本の攻撃陣をけん引している。

パナマ戦、ウルグアイ戦と縦関係でコンビを組んだのはロシアワールドカップでもゴールを決めているFW大迫勇也(ブレーメン)だ。日本代表を1トップで支えてきた大迫との関係は良好。タイプの違う2人が前後を入れ替わることで、相手DFの対応に混乱をもたらせた。

▽持ち味である身体の強さを発揮した大迫は、マッチアップしたDFディエゴ・ゴディン(アトレティコ・マドリー)にも競り合いで負けず。背負ってタメを作り、2列目の選手の攻撃参加を促した。一方の南野は、相手とタイミング良く入れ替わるポストプレーを披露。パナマ戦でも見せたターンの上手さを見せた。

▽南野の活躍が刺激となったか、MF中島翔哉(ポルティモネンセ)、MF堂安律(フローニンヘン)も躍動。堂安は、DF酒井宏樹(マルセイユ)との鮮やかなパス交換から代表初ゴールを記録した。中島はゴールこそなかったが、サイドでの仕掛けやカットインからのシュートで攻撃を活性化。大迫のゴールに繋がるシュートを見せた。

◆最大の収穫は攻守の切り替え
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▽前線の選手が4得点を奪ったが、それ以上の収穫は攻守の切り替えだろう。堂安のゴール、そして、南野の2点目に繋がったMF柴崎岳(ヘタフェ)のプレーは特筆すべきとも言える。その他にも、大迫のゴールに繋がった堂安の守備、さらには終盤のCKのシーンでの戻りなども同じだ。

▽堂安の初ゴールは、日本のCKの流れから生まれた。右CKからのクロスがクリアされるが、すぐさま柴崎が拾いダイレクトで前線へ。一旦はFWエディンソン・カバーニ(パリ・サンジェルマン)にカットされるが、大きくなったボールを堂安が拾い、酒井とのパス交換からゴールを決めた。

▽また、日本の4点目は真価が発揮されただろう。ウルグアイがカウンターを仕掛けるためにパスを交換しようとしたところ、MF遠藤航(シント=トロイデン)と柴崎が連動。相手ボールを奪うと、柴崎がそのまま一気に南野に縦パスを入れ、堂安がこぼれ球をシュート。GKフェルナンド・ムスレラ(ガラタサライ)が弾いたところを南野が詰めた。

コスタリカ戦はMF青山敏弘(サンフレッチェ広島)と遠藤、パナマ戦は青山とMF三竿健斗(鹿島アントラーズ)、そしてウルグアイ戦は柴崎と遠藤がボランチでコンビを組んだ。いずれも補完性を持った2人を並べたが、日本の4点目は攻撃でも持ち味を発揮しつつある遠藤とのバランスを考えた柴崎が、攻撃だけでなく読みを生かした守備面で輝いたシーンだ。

▽クラブでの出場機会が少ない柴崎は、本来のパフォーマンスからは程遠く、目立つプレーは少なかったが、前線の若手3人、そしてコンビを組んだ遠藤を活かすためのプレーを見せたことは、チームとして収穫だったと言える。個の良さがチームに繋がるという点は、森保監督が目指す形の1津と言えるだろう。

◆課題は明確…守備の向上
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▽4得点を奪った一方で、コンディションが最高ではないウルグアイに3失点を喫した。勝ったことを素直に喜び切れない失点は、その数よりも内容に課題を感じた。

▽失点には絡まなかったが、前半から右サイドバックの酒井とDF三浦弦太(ガンバ大阪)の間のスペースをウルグアイに使われていた。ゴールこそ決まらなかったが、ウルグアイが本来の力を持っていたらどうなっていたか分からないし、今回遠征に不参加だったFWルイス・スアレス(バルセロナ)がいたら、失点に繋がっていただろう。

▽メンバーが変わったことで、連携面が不足している点はある。また、世界の舞台での経験値が三浦に足りないことも影響しただろう。2点目のバックパスの判断ミスも同様だ。カバーニが残っていることが目に入っていなかった。後方でパスを回す際に、安易にGKまでボールを戻してしまったこと。MFルーカス・トレイラ(アーセナル)が前線からプレスをかけていたこともあったが、判断力は鍛える必要がありそうだ。

▽1失点目はセットプレーから。ファーサイドに振られて、折り返しを決められてしまった。MFガストン・ペレイロ(PSV)に決められてしまった。ワールドカップでのベルギー戦でも見られたように、ファーサイドに振られて高さを使われることは日本が苦手としているパターン。世界と戦う上では、改善が必要となるだろう。

▽そして最も良くなかったのは3失点目だ。オープンな展開となった中、ウルグアイのカウンターが発動。しかし、日本は数的同数であったため、守り切ることも可能だったはずだ。カバーニにボールが入った際、対応したDF吉田麻也(サウサンプトン)はDF長友佑都(ガラタサライ)に指示。しかし、左サイドに開いていたホナタン・ロドリゲスを誰も見ておらず、三浦もカバーニを警戒。結果、フリーでクロスを送られて失点した。

▽三浦個人だけの責任ではない。チームとしての守り方の問題であり、数的同数でありながら、パスを通され、しっかりと決められしまったことをどう対応するか。細部を詰める時間はあまりなかったとは言うものの、来年1月のアジアカップまでには守備面の改善を期待したい。

◆それでも期待値の高いチームに
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アジアカップまで残された試合は2試合。11月に行われるベネズエラ代表戦、キルギス代表戦だ。攻撃面では、これまでにない期待が持てる日本代表。特に2列目の3選手の連係とゴールへの意欲は評価すべきものだ。しかし、勢いに乗っていると言う見方もできなくはない。

▽しかし、本調子でなかったとはいえ、しっかりと守備を作るウルグアイに4得点を奪えたことは、大きな変化と言えるだろう。ミドルシュートのこぼれ球から2点を決めたことも、これまでの日本代表ではあまり見られなかったパターンだ。攻撃面は、大いに期待できる。

▽守備面に関しては、GKが代表チームとしての経験値の低さもあるだろう。連係が重要になってくるだけに、酒井、吉田、長友とワールドカップ組が入っても3失点を喫した。11月の合宿では、攻撃面だけでなく、守備面にも手をつけてもらいたい。

▽勝ったことを喜ぶだけでなく、しっかりと課題を見つけることが今は重要だ。本番であるアジアカップまでに、個人がクラブでどのように成長、変化するかが代表チームの強化となる。そして、合宿に集まった際には、しっかりとチームとして戦い方を落とし込むこと。その戦い方を発揮するためにも、各選手には自らを磨き上げて、1カ月後の活動に繋げてもらいたい。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》
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