今月自らを捧げたガジェット

手のひらサイズのコンパクトでありながら、バスドラムやベースの音を正確に再生できるモニタースピーカー。SPで補正をかけることで、低域から高域までフラットな音楽再生を可能とした。ツイーター・ウーハーの2ユニットを用いた2WAY構造。それぞれのユニットを独立したデジタルアンプがドライブする仕様で、サウンドはとことんパワフル。

【詳細】他の写真はこちら

IK Multimedia
iLoud Micro Monitor
実勢価格:3万5000円

得意なのは音楽再生だけじゃない
サウンドが改善することで動画の迫力もグッとアップする

気がつけば我が家のCDプレイヤー、レコードプレイヤー、アンプ、テレビのすべてが白ずんでいました。ホコリ、かぶっていました。そうだよね、音楽も映像も、パソコン&タブレットで再生するようになってたっけ。ぶっちゃけ、従来のAV機器はそろそろ手放そうかなとの思いがふと、脳裏によぎります。サンスイのアンプとかもったいない気もするけども。

とはいえ、パソコン&タブレットだけに頼るには不満なところもあります。デバイス内蔵スピーカーや、ディスプレイスピーカーの音質ってあまりよくないんですよね。

狭く、薄いスペースに組み込まなければならないという構造ゆえに仕方のないところ。デスクトップPC全盛期の'90年代は、アンプ内蔵のアクティブスピーカーがついてくるモデルもありましたが、これまた音がチープで泣ける……。

低域がスパーッと消えまくってカスリもしなかったり、高域だけが妙にチャリチャリする音だったりして、オマケだし仕方ないか。

しかし中には耳を疑うような高音質スピーカーもあって侮れません。富士通FMV付属のタイムドメインスピーカーとかね。また、社外品に目を向けると、ソニーの『SRS-Z1』、ハーマンカードンの『SOUNDSTICKS』やBOSEの『M3』など、気合いの入ったモデルがちらほらとありました。

また、DTM機材に目を向けると、強力なアンプ&スピーカーユニットで構成されたモニター用のアクティブスピーカーが目白押し。

もともと音楽制作時に、収録した音が狙い通りの位置に、思い通りの音量で入っているかを確認するためのスピーカーゆえに味付けは薄め。でもパワフルというメリットを生かして、意外にもゴキゲンなサウンドときたもんだ。うん、十分に、ノレる。

オーディオ入力は3系統 Bluetoothにも対応する
いま、我が家のパソコンに音楽力をマシマシしてくれている『iLoud Micro Monitor』も、勢いマッシブなモデルです。フットプリントは手のひらをちょいはみ出るくらいのコンパクトサイズなのに、フルボリュームにすると『iLoud Micro Monitor』を置いているデスクの上の小物が、じりじりとダンスをはじめちゃうくらいに大音量。サイズからくる印象とはまるで違う!

ドラム&ベースは弾力性のある音が楽しめちゃうし、ギターの響きもグー。鳴らすのが難しいシンバルだって、しゃわんしゃわんと歪みつつも、震えている様子が伝わってきます。

横幅9cm、奥行き13.5cmというモニタースピーカーとしてはミニマムサイズなのに機能充実。3.5mmステレオミニプラグ、RCA、そしてBluetoothによる音声入力に対応する、リスニング用途にも向いたモデル。左側のスピーカーの背面に各入力端子・イコライザー・ボリウムが備わり、またアンプ内蔵スピーカーのために電源のコネクタも存在する。最大音量にすると、iLoud Micro Monitorを置いた棚やデスクの上が震えだすほど。100人級の広いセミナールームであっても部屋の隅々まで音が届く。PC用スピーカーの領域を超える存在だ。

耳の位置に音がストレートに入るようにセッティングすると、前後左右の立体感もなかなかに明確で気持ちいいときたもんだ。ボーカルも! ボーカルも眼の前に立ってる! 僕のためだけに歌ってくれてる!

角度調整は二段階
底面にはスタンドが備わっている。手前に引き出すとスピーカーユニットが上向きセッティングとなり、デスクの上に設置していたとしてもスイートスポットの位置を耳の高さに合わせることができる。またマイクスタンドに設置できるネジ穴(UNC 3/8”-16)も装備している。
バスレフポートは前面
共鳴効果で低域を増強するバスレフポートが前面にあるため、壁際に置いても音はシャープダイナミックなまま。なおバスレフポートを塞ぐようにモノを置くと低域がブーミーになってしまうので要注意。

さすがにピアノの最低音(88鍵盤でラの27.5Hz)は聞こえません。3インチという小さいウーハーでは物理的に無理というもの。強引に音を鳴らす方法がなくはないけど、そうするとだいたいブーミーになっちゃう。から、どうしてもゴリッゴリの低音が聴きたい時は5インチウーハーのアクティブスピーカーにしたほうがいいかも。

まだ手に入るかな? ESIの『nEar05 eXperience』という1万5000円台だけど実にマトモな音がする名機がありましてね?

武者良太(むしゃりょうた)ガジェットキュレーター。音響機器、スマートフォン、最先端技術など、ガジェット本体だけでなく、市場を構成する周辺領域の取材・記事作成も担当する。元Kotaku Japan編集長。

※『デジモノステーション』2018年11月号より抜粋。

text武者良太
(d.365
掲載:M-ON! Press