先日(2018年10月10日)の米国株式暴落によって、日本株式市場も大きな影響を受けました。この一連の動きで、投資資産が大きく目減りして不安になった方は多いと思います。取引のある銀行や証券会社に相談しても、「落ち着いて、もう少し様子を見ましょう」という回答が多かったのではないでしょうか。

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「様子を見る」のは投資行動としては正解かもしれませんが、そう簡単なことではありません。とくに投資初心者にとっては「このまま資産が減り続けるのでは?」「他の人はもっと上手にこの局面を切り抜けているのでは?」など不安のタネは尽きません。

ネット証券や全国の証券会社で売買できるリート

 さまざまな投資対象の金融商品に分ける「分散投資」は、今回のように株価が大きく下がったりしたときに資産全体の目減りを少なくするリスク低減効果が期待できます。そのために大事なことは、値動きの特徴ができるだけ違う商品に分散させること。似たような値動きの商品に偏って投資していると、投資対象が大きく下落すると当然のことながら資産全体が大きく目減りしてしまいます。

 多くの方が比較的高リスクな資産として投資しているのは、国内外の株式でしょう。これらの値動きの特徴を考えて再確認したいのが、不動産投資信託(リート、Real Estate Investment Trust)への投資です。

 リートとは、投資家から集めた資金でオフィスビル、商業施設、マンションなどの不動産を複数購入し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する金融商品です。

 法律上は投資信託の一種です。それぞれのリートが東証に上場しており、それを「Jリート」と呼んでいます。Jリートは2018年10月12日現在で61銘柄。東証はそれらをまとめた指標「東証REIT指数」も公表しています。Jリートはネット証券や全国の証券会社で売買が可能ですが、銀行ではできません、しかしJリートに投資する投資信託があり、それを取り扱っている銀行があります。

投資資産のリスクバランスを再確認したい

 ところで、資産運用中に今回のような株価下落があったとしたら、やるべきことは何でしょうか。考えられる投資行動としては、(1)投資資産の中の株式の割合を下げて(売って)、国債などのローリスク資産を増やす(買い増す)、(2)投資資産全体を減らして、預貯金に回す、(3)投資資産のなかの配分(バランス)を再確認する――の大きく3つが挙げられます。

 (1)と(2)はいずれも、現状での損失が確定したうえでのリスクオフということになります。不安解消の意味でメリットはありますが、長期運用によるリスクコントロールもしくは収益期待という観点では合理性に欠けます。資産全体が2~3割以上減ったというような場合を除き、これはあまりお勧めできません。

 (1)と(2)を実行するにしても、まずは(3)の資産バランスを再確認するのが賢明な判断だと思います。

株式・債券との値動き相関性が低いリート

「資産バランス」とは、投資先(投資対象)のリスクのバランスを意味します。一般的にはリスクが高い順に、「新興国株式」「先進国株式」「国内株式」「国際債券」「国内債券」となります(国際債券は種類によってリスクの幅が広いので、ここでは先進国の高格付け債券とします)。投信や個別株式、ETFなどの「商品バランス」のことではありません。

 金融商品の値動きの近さ(連動性)を測る物差しとして相関係数という指標があります。ある金融商品2つの値動きを比べて、まったく同じなら+1、まったく逆なら-1、無関係で動くなら0(ゼロ)として表されます。相関係数が-1に近いほど逆の値動きになり、分散効果が期待できるというわけです。

 次の表は、投信評価会社のモーニングスターがまとめた2018年3月までの5年間における投信の投資対象別の相関係数です。これを見ると、国内REIT型と国内外株式型との相関係数が比較的小さいことが見て取れます。最も低いのが国内債券型。たとえば、国際株式型と国内債券型の投信を持っている人が、分散投資によるリスク低減効果を期待するなら、国内REIT型投信が次の投資候補になると考えられます。

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54399

相対的に高い分配金がJリートの大きな魅力

 Jリートの金融商品の魅力としては、国内外の株式・債券との分散効果が期待できることに加えて、分配金が相対的に高いことが挙げられます。東証がまとめた2018年8月末現在のJリート全体の予想年間分配金利回りは4.16%。一部上場企業株式の平均配当利回りが同時期で1.71%ですから2倍以上になります。

 利回りが相対的に高いのは仕組み上の特徴といえます。Jリートは不動産投資法人という会社のような形態になっており、一定の要件を満たすと法人税課税を受けることなく利益を投資家に分配することができます。通常の事業会社は法人税を支払った後に投資家へ配当しますが、Jリートは利益の大半を投資家に分配できるので分配金利回りが高くなるのです。

不動産の種類ごとに特徴がある

 Jリートは投資対象(投資する不動産の用途)ごとに分類されています。主な分類は「オフィス」「住居」「商業施設」「ホテル」「物流施設」と、その複合型や用途を限定しない総合型などで、それぞれに特徴があります。

オフィス」は他の投資対象と比べて賃貸借契約の期間が短く、景気動向の影響を受けやすい傾向があります。「住居」は他用途の資産と比べて賃料が安定的なことから、景気変動や不動産市況の影響を受けにくいディフェンシブ銘柄といわれています。

「商業施設」(ショッピングセンターなど)や「ホテル」は管理運営にノウハウや専門性が求められるため、その巧拙で収益が変動する特徴をもっています。また、変動賃料制を採用している場合は景気変動などによっても収益が変動します。

 オンラインストアの台頭などによって需要が高まっている「物流施設」は、テナントと長期固定の賃貸借契約を締結しているケースが多く、収益が安定している傾向にあります

 どのJリートがどの分類に属するのかは、東証のウェブサイト(https://www.jpx.co.jp/equities/products/reits/issues/)を見ても明確には書いてありません。それぞれのJリートの資料やサイトで確認するしかないようです。

Jリートに投資する投信で複利効果を期待

 Jリートは分配金利回りが魅力のひとつであり、ほとんどが年2回の決算。すべての利益を決算期に分配金として投資家に還元するので、複利効果を得るには決算ごとに自分で再投資する必要があります。当然のことながら分配金には税金もかかってきます。それを避けたい投資家は、「Jリートに投資する投資信託」を活用するのがよいでしょう。

 投資信託の基準価額にあたる「投資口価格」は最安で数万円程度で、1万円程度から投資できる一般の投信より高めです。とはいえ、数万円から不動産市場に投資できるのは、現物の不動産を売買することに比べればかなり手軽。前述の東証ウェブサイトで各Jリートを一覧できます。そこから各投資法人のサイトにリンクが張ってあり、商品の詳細を確認できます。

 すでにおわかりのように、国内の不動産を主な投資対象とするJリートは内需志向の投資商品です。あるJリート調査会社の代表は「上場商品なので海外を含む他市場の価格変動に影響を受けることもあります。つられて価格が急落することはありますが、いずれ戻ることが多いです。価格低下が起こっても、慌てて売らないことが大事です」と語っています。今回の株価下落は、分散効果と分配金利回りを期待した“第3の投資対象”としてJリートを検討するよい機会になったかもしれません。

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