解説者が“プロ目線”で出場13選手を4段階評価 中島は「駆け引きにおいて相手を終始圧倒」

 日本代表は16日の国際親善試合ウルグアイ戦に4-3と競り勝ち、森保一監督の就任後3連勝を飾った。4日前のパナマ戦(3-0)から先発メンバーを一気に9人変更。MF柴崎岳(ヘタフェ)、DF吉田麻也サウサンプトン)らロシアワールドカップ(W杯)主力メンバーで今遠征初招集の5人をスタメン起用し、新世代との「融合」を推し進めた。

 そのなかで日本は、FIFAランキング5位のウルグアイを相手に攻撃陣が爆発。2得点の南野拓実ザルツブルク)、A代表初ゴールの堂安律フローニンゲン)らが躍動した一戦を、エキスパートはどのように見たのか。1970年代から80年代にかけて「天才ドリブラー」としてその名を轟かせ、日本代表としても活躍した金田喜稔氏が、ウルグアイ戦に出場した全13選手を4段階評価(◎→○→△→×)で査定。新時代の象徴と言える3人のアタッカーと大迫勇也ブレーメン)が見せた圧巻の攻撃に、称賛の言葉を並べた。

  ◇    ◇    ◇

<FW>
大迫勇也ブレーメン)=◎

 ゴディンなど世界を代表するストッパーを相手に、きっちりと背負いながらあれだけのポストプレーを見せてくれた。前回のパナマ戦ではシュートにつながるプレーが雑で、足もとに収めた後のボールさばきにもミスが目立っていたが、今回は安定していて1ゴールをしっかりと奪った。決定機を外したシーンもあったが、全体的に見れば攻守における奮闘、切り替えの早さ、2列目3人の良さを引き出したという意味で、不動のセンターフォワードであることを改めて示した。

<MF>
中島翔哉ポルティモネンセ/→後半42分OUT)=◎

 得点こそ奪えなかったが文句なしのパフォーマンス。ウルグアイという強豪を相手にしても決して怯まなかったシュート意識の高さは、中島のキックに対する圧倒的な技術と自信から生まれている。大迫の得点につながった強烈な一撃も、自分の間合いでシュートコースを作っていける技術を示した場面。たとえ相手に囲まれても、シュートコースを作るためのアウトサイドの使い方が抜群に上手い。ボールタッチの感性とリズムが、今までの日本の選手とは一線を画しており、足もとに置いた瞬間にドリブルでもパスでもなんでもできるから、おそらく対峙した相手は1対1の場面で常に後手を踏んでいただろう。駆け引きにおいて相手を終始圧倒していた。


持ち味を出せなかった柴崎は「彼自身が良くないというより…」

南野拓実ザルツブルク)=◎

 ウルグアイのセンターバックを嘲笑うかのような、右足インフロントでのファーストタッチで軸足の後ろにボールを通して反転し、シュートフェイントで一人を置き去りにして右足を一閃。シュートは相手GKの足に当たったとはいえ、1点目につながる一連のテクニックとイメージは素晴らしかった。試合全体を見れば、簡単にボールを失ってしまう場面や消える時間帯、状況判断のミスによって持ちすぎてボールを取られるシーンもあったが、ウルグアイから2ゴールを奪うのは見事というほかない。

■堂安 律(フローニンゲン)=◎

 所属クラブでも少し得点から離れていて、パナマ戦の終盤に途中出場した時もミスばかりと、少しパフォーマンスを落としている印象があったが、ウルグアイを相手に持ち味を存分に発揮した。得点シーンでは酒井とのワンツーから、狭いエリアで左足のアウトサイドで自分の得意な位置にボールを置いてから逆サイドへシュートを決めきった。南野の2点目を引き出した強烈なミドルシュートも見事。卓越したボールタッチ、シュート精度とも世界と張り合えるレベルだ。

■柴崎 岳(ヘタフェ/→後半29分OUT)= △

 パスを散らした後に、前でもう一度絡むというのがロシアW杯で見せた柴崎の良さだったが、そうしたプレーが必要ないというほどの勢いを、2列目の3人に見せられた印象だ。彼自身が良くないというより、前の若手3人に圧倒されて自らの良さが引き出せなかった、味方のプレーに度肝を抜かれ、メンタル的に追い込まれてしまうというのはサッカーの試合では起こること。もちろん、ヘタフェで試合に出られていないことで、コンディションや試合勘が鈍っていたことも事実だ。

■遠藤 航(シント=トロイデン)=◎

 攻撃は前に任せて、その後方でピンチの芽を摘む部分で持ち味を見せた。9月のコスタリカ戦で素晴らしいプレーを見せ、その後も所属クラブで同じポジションでレギュラーとしてプレーできているという自信も見えた。2列目の中島や南野はリオ五輪でともに戦った仲。知り尽くした間柄だからこそ連携もスムーズだった。チームとして3失点しているものの、中盤での潰しとディレイ、守備への切り替えの早さなど、個のパフォーマンスには充実ぶりが窺えた。


長友と酒井は「以前よりも守備に集中できる環境」

<DF>
吉田麻也サウサンプトン)=○

 今季のサウサンプトンであまり試合に出られず、追いつめられたところもあるなか、ゲームへの入り方、1対1の応対の仕方、体のぶつけ方など落ち着いてディフェンスラインをコントロールしていた。もちろん、3点を取られたので良いところばかりだったとは言い切れないが、安定感、1対1の対応能力、高さという個の出来は評価したい。また個人評価ではないが、右のCBだったW杯とは違い、左CBを務めた点には森保監督がベルギー戦の失点シーンを踏まえて対策を考えているのかもしれない。あの試合、ベルギーは右SB酒井の前からアーリークロスを上げ、高さのない逆サイドの左SB長友を狙ってきた。高さ対策という意味で、今後も吉田を左CBに置く並びは試していくのかもしれない。

■三浦弦太(G大阪)=△

 後半に喫した2失点目の要因となる痛恨のミスを犯した。失点に直結するバックパスのミスだっただけに、評価は下げざるを得ない。ただ、あれはカバーニの位置を確認しなかったという本当に単純なミスであり、引きずるものではない。アジアカップに向けて、誰が吉田のパートナーを務めることになるのか。11月に招集されれば、そこが正念場になる。

酒井宏樹マルセイユ)=○

 攻守においてプレーに余裕があり、攻撃は前の堂安に任せておけばいいと、以前よりもディフェンスに集中できているように見えた。攻撃に厚みを持たせるため、オーバーラップして数的優位を作るという概念が今までの日本代表では基本となっていたが、今後はあまり求められなくなるのかもしれない。堂安のゴールを導いたアシストも落ち着いていた。

長友佑都ガラタサライ)=○

 前にいる中島のプレーを、後ろから楽しそうに見ていた印象。右の酒井と同様、無理して上がらなくても中島がやってくれる。ディフェンスに集中できる環境なら、32歳とはいえ、長友のフィジカルならまだまだできる。裏返せば、その安定した守備力が、左サイドハーフの中島を輝かせているとも言える。


GK東口は「素晴らしいゲームの入り方をしたが…」

<GK>
■東口順昭(G大阪)=△

 前半17分にゴディンのヘディングシュートを止めるなど、ゲームの入り方は良かった。ただ、例えば良い時の川島だと、素晴らしいゲームの入り方をすれば3点は取られない。GKは一つのプレーで精神的にリズムに乗り、1試合をどのように過ごせるかが重要。随所で好セーブを見せたものの、乗り切れなかった。森保監督も期待しての先発起用だが、GKとして3失点は評価を下げざるを得ない。

<途中出場>
青山敏弘(広島/←後半29分IN)=評価なし

 4-2の場面で投入され、勝ち切らないといけない試合のなかで入ってきたのは難しさもあったはず。4日前のパナマ戦では、青山らしいパスで存在感を発揮したが、この日の試合展開ではディフェンス優先のプレーになるのは仕方がないだろう。

原口元気ハノーファー/←後半42分IN)=評価なし

 個人的には、先発した2列目の3人にあれだけのプレーをされたのだからアピールしたかっただろう。だが、後半42分からの出場とあまりにもプレータイムが短すぎた。4-3という緊迫した場面で、逃げ切ることを最優先にして投入され、チームプレーに徹した印象だ。

PROFILE
金田喜稔(かねだ・のぶとし)

1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。


Football ZONE web編集部)

金田喜稔氏が、ウルグアイ戦に出場した全13選手を4段階評価で査定【写真:Getty Images & 田口有史】