国内ブロック大会が終了し、今週からグランプリシリーズ開幕と、いよいよ2018-2019シーズンのフィギュアスケートも本格的なシーズンを迎えた。とはいえ、今季はトップ選手達も早い時期からチャレンジャーシリーズや国内ローカル大会に積極的に参戦しているため、例年とはいささか雰囲気の違う開幕となっている。その理由の一つに、今季からの大幅なルール変更がある。シニア男子、ジュニア男子のフリー演技が30秒短縮、そしてジャンプの数が一つ減り、女子と同数になることが知られているが、選手にとって最も影響が大きいのは、エレメンツの基礎点が下がり、GOE(出来栄え点)の幅が広がったことだろう。またジャンプの回転不足判定、スピンのポジションの認定についても厳格化がなされている。この影響を探るため、トップ選手達が夏場から実戦を戦っているのだ。オリンピック明けのシーズンとは思えぬ始動の早さであり、十分なオフが取れなかった選手達の負担は大きかっただろうが、その怪我の功名か、皆、仕上がりが早い。シーズン序盤から充実した戦いが見られることになるだろう。この項では、今季の各ブロック大会のうち、直接取材できた中部ブロック、東京ブロックを中心に順次取り上げたい。まずは今週末に全日本ノービスを迎える、ノービスクラスの情報をお伝えする。

【写真を見る】大人びた演技を披露し、中部ブロックを制した手嶋里佳

■ 中部ブロック、ノービスAで優勝。全日本制覇を目指す!手嶋里佳

今週末の全日本ノービス選手権、ノービスA女子クラスはかなりの盛り上がりを見せることになるだろう。理由は言うまでもなく、近畿ブロックの本田紗来の参戦だ。Aクラス1年目、しかも学年的にはまだ小学5年生、この段階でノービスAでの優勝争いが見込まれるというのは驚異的なことだ。ただ今年はまだ先輩格の選手達がおり、そう簡単に優勝はできないだろう。中部ブロックの吉田陽菜、手嶋里佳の両名だ。吉田陽菜は夏のげんさんサマーカップでトリプルアクセルを成功させ、飛躍のシーズンを迎えるかと思われた矢先、故障から中部ブロックを欠場した。シード選手のため全日本ノービスには参加できるが、状態が心配だ。代わって今年の中部ブロックを制したのが手嶋里佳。昨シーズンは怪我の影響に苦しみ、なかなか本調子に戻らなかったがようやくの復活だ。97.89という高得点にも満足していなかった様子で、全日本ノービスでは100点超えを期待したい。まずは中部ブロックでのコメントを紹介する。

「本番直前まで調子が悪くて不安でした。何とかノーミスできて良かったです。全日本ノービスでは自分の納得する演技をして優勝したいです」。

優勝したものの、控え目な発言が多かったのが印象的だった。その理由は言うまでもなく、復帰予定のチームメイト、吉田陽菜、そして近畿のライバル、本田紗来の存在を意識してのことだろう。

ずいぶんと身長が伸び、現在は156cmあるのだそうだ。その体格を生かし、とてもノービスとは思えない大人びた演技を披露する。ここまで身長が伸びてジャンプが跳べていることは、将来を考えても素晴らしいことだ。

今季のフリーはラフマニノフパガニーニ狂詩曲。宮本賢二先生の振り付けとのこと。アメリカのレイチェルフラットの演技を観て気に入ったことから、家族で相談してこの曲に決めたのだそうだ。途中、有名な第18変奏を使っているが、この部分を踊るのが難しいという。スローな部分で音に動きをはめるのはノービス年齢の選手には相当難しいはずだ。良い経験になったことだろう。

最近はトリプルアクセルの練習を開始しているという。やはり吉田陽菜が公式戦で成功させたことが刺激になっているようだ。海外選手の動向を見ても分かる通り、トリプルアクセル、四回転ジャンプは女子でも必須になる時代がもうすぐそこまで来ている。成功の報せを楽しみに待ちたい。

さて、本来ならば優勝候補として全日本ノービスに臨むはずの吉田陽菜。順調さを欠いた中間となってしまったが、夏場の活躍は見事なものだった。ただタイのアジアントロフィーから西日本中小学生大会、そしてサマーカップと、2週間で3試合をこなす過密スケジュールはさすがに負担になったようだ。夏場にはトリプルアクセルを入れてもプログラムが崩れないほどに仕上がっていたので、痛みさえ引けば調整は早いだろう。全日本ノービスでの復活を期待したい。

■ ノービスA男子はこの選手が優勝候補!中村俊介

ノービスB時代には全日本ノービスを2連覇。当時から「4連覇を目指します」と公言していたのだが、昨年は大会直前に怪我をした影響が大きく、不本意な結果となってしまった。今季は再びの優勝候補として、最後の全日本ノービスに挑む。とはいえ近畿ブロックの垣内珀琉(かきうち・はる)が急成長を遂げており、決して簡単な戦いにはならないだろう。まずは中部ブロックのコメントを紹介したい。

「悔しい演技でした。軸がぶれてしまい、ジャンプが決まりませんでした」。

今季のプログラムは“ポエタ”。ノービス選手には難しい選曲だが、先を見据えての挑戦だ。

「全日本ノービスでは怪我なく、ジャンプも決めて、自分の一番良い演技をしたい」と、昨年のリベンジを誓っていた。

反省の弁が目立つ中部ブロックでのコメントだが、サマーカップよりは調子は上がってきている。そしてこの日は挑戦しなかった3ルッツ+3トウだが、全日本ノービスでは「ルッツを降りたときに行けそうだったら行きます」とのことだ。全日本ノービスのみならず、全日本ジュニアでの活躍も期待したい。ところで彼は羽生結弦が憧れの選手で、2年前には「羽生結弦を超えます!」と強気な発言をしていたのだが、今年のサマーカップの折にこの話を振ってみたところ、「いや、無理です」とトーンダウンして報道陣も爆笑だった。ただ、羽生結弦も本格的に進化したのはジュニアに上がってから。中村選手もまだ諦めるのは早いと思います!(東海ウォーカー・中村康一(Image Works))

手嶋里佳、中部ブロックでの演技。大器がようやく復活の軌道に乗った