第3週「そんなん絶対ウソ!」 第15回10月17日(水)放送より
脚本:福田 靖 
演出:渡邉良雄
音楽:川井憲次
キャスト:安藤サクラ長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平
     桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ松井玲奈、呉城久美、松坂慶子、橋爪功ほか
語り:芦田愛菜
主題歌:DREAMS COME TRUE「あなたとトゥラッタッタ♪」
制作統括:真鍋 斎

連続テレビ小説 まんぷく Part1


15話のあらすじ
鈴(松坂慶子)に萬平(長谷川博己)が憲兵に捕まったことを伝えた福子(安藤サクラ)。当然ながら、鈴は大激怒する。

「あなたは誰?」
「まともやないわよ あの人たちは」と鈴はプリプリ。
「あの人たちは」とは野呂(藤山扇治郎)、牧善之介(浜野謙太)、鹿野敏子(松井玲奈)、池上ハナ(呉城久美)、保科恵(橋本マナミ)。
全員が、福子の味方で、イコール萬平の味方に。憲兵に捕まったのは何かの間違い、萬平さんは悪くないと一斉に鈴に迫る。
鈴の性格上、頑なになって聞く耳をもたない。福子のことは「あんな不謹慎な娘」呼ばわり。
たくさんでいったのがいけなかったと保科さんは反省する。

野呂「憲兵に立ち向かうには覚悟を決めてかからねば」
鈴「あなたは誰?」
等々、現実だったらこういうドタバタのシチュエーションはありえそうにないが、ドラマ(つくりもの)だからあっていい、と思わせる、そこが作家の腕。「まんぷく」ではこのドタバタがすっかり馴染んでいる。
ベタなドタバタが好みではない人もいると思うが、作家の技術の巧さは認めたい。

「あんなに心がきれいでまっすぐな人はいません」と萬平さんを信じきった福子に、
1回か2回しか会ったことなくて人間性がわかるものかという鈴だが、鈴のよく言う“武士”の時代は一度も会ったがことなくても嫁いだのでは、と一応ツッコんでおく。

世良さん
福子のホテル勤務はいい設定。街の中心のホテルにはビジネスマンが利用する。だから萬平も来ていたことがあったし、世良(桐谷健太)も来る。そして、福子と偶然出会う。「君が福ちゃんか」。
そしていつもの世良にかかる劇伴。管楽器が軽妙なやつ。

「お姉さん(咲)は残念だったな」とそんなことまで知っていて、萬平を親友呼ばわりしたので、福子は萬平を助けてと迫る。
憲兵に捕まったと聞き「ラーメン一緒に食っただけや」と誤魔化しだす世良だったが、なんだかんだ言って、
加地谷(片岡愛之助)に様子を聞きに来る。
「僕かて好きで来たんやないぞ」と言うときのアングルが凝っている。

「不幸いうやつは伝染するんや」ともうこれ以上かかわりあいになりたくないふうの世良に、福子と保科はがっかり。
あたまをかく福子。何かストレスがあると髪の毛いじるのがクセのようだが、女・金田一か・・・。
そういえば、長谷川博己は、NHKで金田一耕助を演じたことがある。戦争のトラウマで精神的に参っているという解釈が施された金田一はとても興味深かった。彼と吉田照幸演出による金田一をシリーズ化してほしかったが、朝ドラと大河が続くからか、キャストが変わってしまって少し残念(でも吉岡秀隆もまたすばらしかったのでそれはそれでいい)。

男ふたりが良い
世良と加地谷、二人のシーンもいいが、忠彦(要潤)と真一(大谷亮平)のシーンも良かった。
出征前に、咲のために忠彦が描いた桜の絵を預けに来て、福子の話をする。福子が愛する人のために奮闘していると聞いて、真一は自分の言葉が影響していることを感じる。
「大事な人がいるなら 生きてそこにいるなら 簡単に手放してはいけない」(12話)

15話は男ふたりのシーンがいい(14話の野呂と牧もいい)。
とりわけ、稲村大悟(六平直政)と萬平のシーンがグッとくる。
無実を訴えるハンガーストライキを続け衰弱する萬平に、
「死んだら二度と会えんぞ」
「生きて大事な女に会いたかったら食わんとあかん」と励ます稲村。
ここは真一の福子への台詞と対になっている。忠彦と真一を会わせてもう一回、真一の台詞も出した上での
稲村の台詞。抜かりない。

稲村、悪者かと思ったら、そんなことなかった。世良、加地谷など、意図的に善人か悪人かわからなく描いてる感じで、俳優たちがうまく演じている。

稲村から萬平に紙に包まれたごはんを手渡されると、やたらと前向きな劇伴がかかる・・・

萬平「まずい・・・」
稲村「あたりまえや」

巧い!! 
まずくても食って生きる。言葉でまとめてしまうとシンプルな考え方なのだけれど、そういうことだけではないなんともじわじわくるものが萬平と稲村にはある。
出汁をしっかりとった味噌汁いただきました、という感じ。
六平直政、長谷川博己は舞台「冬物語」(09年)で共演していた。

長谷川博己はいろんな演出家や監督と仕事をしていて、蜷川さん蜷川さんとそこにばかり繋げたら申し訳ないと思うし、実際追い詰められた芝居は蜷川作品以外でも発揮しているのだが、こういう場面を見るとどうしても蜷川幸雄にいろいろ叩き込まれていた時のことを思い出してしまう。アングラ演劇出身の六平も蜷川作品の常連なのでよけいに。ちなみにアングラ出身はかっこいいというリスペクトの意味で使っているので誤解なきよう。

長谷川と蜷川幸雄の舞台の日々はこちらで。蜷川幸雄の稽古場から
(木俣冬)

連続テレビ小説まんぷく
NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

朝ドラべっぴんさん」もBS プレミアムで月〜土、朝7時15分から再放送中。 
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連続テレビ小説 まんぷく Part1 (NHKドラマ・ガイド) NHK出版