アマゾンジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は今年(2018年)4月、株主に宛てた書簡で、同社の有料プログラム「Prime(プライム)」の世界会員数が、1億人を超えたことを明らかにした。

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 しかし、米国の市場調査会社CIRP(コンシューマー・インテリジェンス・リサーチ・パートナーズ)がこのほどまとめた最新レポート(PDF書類)によると、米国におけるPrime会員は今年7~9月時点で9700万人となり、会員数は同国だけで1億人に到達しそうだ。

会員数の伸びが8%に低下

 これは、アマゾンの米国顧客の61%がPrime会員になったことを意味するという。アマゾンがPrimeを米国で始めたのは2005年2月。それ以降、会員数は右肩上がりで伸び続けてきた。ただ、その伸び率は数年前に比べて鈍化していると、CIRPは指摘している。

 CIRPが1年前に公表したレポートによると、米国のPrime会員は2017年7~9月時点で、9000万人。このときの前年同期比伸び率は38%だった。また今年7月のレポートを見ると、今年4~6月時点の同伸び率は12%だ。これが、この7~9月は8%に低下した。米国顧客の6割をPrimeに加入させることに成功したアマゾンだが、今後の展開は厳しいものになるのかもしれない。

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Prime会員の支出額が増加

 一方でアマゾンには、明るいニュースもある。Prime会員の買い物金額が増え続けているのだ。CIRPによると、1人のPrime会員が1年間にアマゾン買い物をする金額は平均1400ドルで、非Prime会員(600ドル)の2.3倍(ドイツ・スタティスタのインフォグラフィックス)。

 CIRPが1年前に行った調査では、Prime会員が1300ドル、非Prime会員が700ドルだった。つまりPrime会員はアマゾンでより多くの金額を支出するようになっており、非Primeとの支出額の差が大きくなっている。

 CIRPによると、Prime会員は、加入期間が長い人ほどアマゾンで多くを支出する。例えば加入期間が3年以上の人の年間支出額は1500ドルで、3カ月未満の人の900ドルを大きく上回っている。

 このほか、会員は1年間にアマゾンで平均26回買い物をするが、非会員は14回。会員は1回の買い物で平均55ドルを使うが、非会員は42ドルにとどまるという。

会費値上げ戦略は成功か

 アマゾンは今年5月、米国におけるPrimeの料金を約2割引き上げ、年会費を119ドルにした。しかし、こうしてCIRPのレポートを見ると、伸びは鈍化したものの会員は今も増え続けている。これまでのところ値上げ戦略は成功したと言えそうだ。アマゾンでは今年4~6月期、Prime会費や、ストリーミングミュージック/ビデオ、電子書籍、オーディオブックなどのサービス料金から成る「サブスクリプション・サービス」の売上高が、1年前から57%増加した。

 同社は、昨年買収した高級スーパーマーケット「ホールフーズ・マーケット」の商品を会員に即時配達するサービスを始めるなど、特典を増やし続ける戦略で顧客の囲い込みを図っている。

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