「全編PC画面上で展開!」という触れ込みで、全米大ヒットを記録した「search/サーチ」。「スター・トレック」のスールー役でおなじみ、ジョン・チョーが堂々の主演を張るハリウッド映画です。「目が疲れそう…」なんて心配も毎日PC漬けだけあって問題なし。もはやスクリーンが巨大なモニターに見えてきて、主人公目線でPCやスマホを操作してるような没入感! 設定の斬新さに終わらない、感動込みの本格サスペンスでしたよー。

夜中にマーゴットからかかってきた3件の電話に気付かず、翌朝を迎えたパパ。娘からの連絡が途絶えたうえに、”優秀でマジメな娘”像が崩れていくという二重の苦痛が彼を襲います

主人公は、忽然と姿を消してしまった16歳のマーゴット(ミシェル・ラー)の父親・デビッド(ジョン・チョー)。警察に通報するも、家出なのか、誘拐なのか、有力情報をつかめぬまま37時間が経過します。娘の無事を信じ、彼女のPCにログインしてインスタグラム、フェイスブック、ツイッターなどにアクセスを試みるデビッド。しかしSNSの中には、いつも明るく活発だったはずのマーゴットとはまるで別人の、自分の知らない娘の姿が…。クラスに馴染めずランチ一人ぼっち、ピアノ教室は半年前に勝手に退会しレッスン代の2500ドルを何者かに送金、IDを偽装…。捜査が行き詰まり、ヴィック刑事(デブラ・メッシング)が新たな情報を集める中、マーゴットが消えて4日目に事態は急展開を迎えますが…。

スマホやPCの内蔵カメラなどによる固定撮影が中心ですが、ズームなども駆使されていてまったく退屈しません! 一番印象的だったのが、広げたウィンドウやカーソルの動き、デリートしたり書き直したりといった操作や機能が、使い手の細かな心情の揺れを視覚的に露呈していたところ。”消去できる”っていう保険がさらけ出させる本音にドキッとしちゃう。検索や履歴を辿る行為も異様に胸を騒がせるし、ネットにまつわるアレコレが強力なサスペンス・アイテムになってる!

娘のPCを隅々まで調べ上げて裏の顔に迫っていく父親の背徳感と、意味なさそうな会話や写真に潜む細かい伏線を回収しながらの謎解き…。そんなスリルの多重構造も秀逸で、買い物や銀行口座管理までオンラインな現代社会を蝕む”情報のカオス”が不安をあおってくる...。ネット特有のミスリードに何度も予想をかかれる展開が、もう病みつきっ!

この完成度の高さ(低予算なのにね)で注目を集めたのが、インド系アメリカ人である27歳の新鋭アニーシュ・チャガンティ監督。デビュー作となる本作でサンダンス映画祭観客賞を受賞しています。Google Glassだけで撮影した短編映画「Seeds」もおもしろいんですよねー。同じくインド系のM・ナイト・シャマランに続く”天才”の登場です!

一人芝居がメインのジョン・チョーもいい仕事してます。アメリカ社会におけるアジア人の孤立感なども含め、パニくりと焦燥のしかめっ面演技で飽きさせません。母親を亡くした年頃の娘の孤独を察しきれず、失踪を通じてそれを知るパパ。彼の深い愛が駆り立てる執念の大捜索に釘付けです。冒頭の、娘の成長を追うテキストメッセージや動画、奥さんが亡くなるまでのチャットなどをモンタージュ映像に仕立てたシーンも感動的! ”親の愛”は衝撃のラストまで重要なキーになってます。

うぅ、急いでPCのデータ処理をしなくては。自分の行動を簡単に辿られてしまうなんて空恐ろしい、というより恥ずかしい! でもでも、本作ではそのデータたちが重要な役割を果たしているというジレンマ…。「スマホを落としただけなのに」(11月2日公開)と併せて、ネット社会の深~い闇に大いにゾッとしてください!【東海ウォーカー】

【映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします!  最近のお気に入りは「ヴェノム」(11月2日公開)のトム・ハーディ!(東海ウォーカー・おおまえ)

FaceTimeやtumblr、GoogleMapなど見慣れた画面が次々に繰り出されます。タイプ音やクリック音、Macの起動音なども効果的なエフェクトに!