学生が職場を体験するインターンシップ。当日の体験だけでなく、事後学習を行う場合もあります。事後学習では一体どんなことを行い、どんな効果があるのでしょうか。企業でのインターンシップを経験した高校生3人が2018年9月22日(土)、札幌市内で行った事後学習の様子をレポートします。

カードゲームを通じて、仕事と教科のつながりを考える

最初に登場したのが、トランプよりも少し大きなサイズのカード。実はこのカード、高校生に楽しく仕事のことを学んでもらうために作成されたオリジナルカードです。カードは「読心術」「異文化と繋がる」「地の利を生かす」「一流のチームプレイ」「スタメン発表」「心動かす歌姫」「開発者のプライド」「賢者の知恵」の8種類。これらは仕事をする上で必要な能力や強みを指しています。さらに、各カードには「国語族」「体育族」「数学族」など教科名が紐付いています。

例えば「読心術」は、お客さまが求めていることを会話や調査から読み取り、サービスに反映できる「読解力」(国語)、「開発者のプライド」は、機械や備品、薬品などを開発して課題を解決する「物理・化学」、「スタメン発表」は、仕事を効率的に進めるために必要な人数や働き方などを考える「数学」。3人は、インターンシップでの経験や得意な教科を踏まえながら、将来の自分につながりそうなカードを数枚ずつ選びました。教科が仕事と結び付いていることがわかり、仕事内容のイメージも具体的になっていきました。

会社では、社員全員が同じ仕事をしているわけではありません。また、毎日の仕事は楽しいものばかりでもありません。3人がインターンシップの際に「難しそう」と感じた仕事もありました。でも、「役割分担することで大きな成果が出せる」「大変さの中にもやりがいやおもしろさがある」と気付いたようです。「海外の人たちと連携して働きたい」「生き物が住みやすい環境づくりに役立つものを作りたい」など、自分の将来について生き生きと語る3人の姿が印象的でした。

仕事で必要な力を大学で伸ばす

小樽商科大学の大津晶先生と一緒に、大学での学びについて考えました。初めに行ったのは、新入社員が成長していくストーリーの映像を見ながら、働くためにどんな力が必要か意見を出し合うこと。あきらめない力、行動力、コミュニケーション力、語学力、商品を作る技術、チャレンジ精神、資料を読み取り活用する力など、たくさんの力が挙がりました。次に、それらの力を「知識」「技術」「人間性」の3つの領域に分類しました。

大津先生が「3つの領域のうち、大学で伸びる力はどれだろう?」と高校生に質問。 3人は「全ての領域」と答えました。大津先生はうなずきます。「そうですね。大学で学ぶことは自分の強みを増やすこと。それぞれの領域を広げることができます」。

大津先生は、ホワイトボードに3つの円を描きました。「知識」「技術」「人間性」を表す円です。円は隣りの円と少しずつ重なり合っています。「知識」と「技術」の領域が重なる部分を「専門的スキル」、「技術」と「人間性」が重なる部分を「対人関係スキル」、「知識」と「人間性」が重なる部分を「概念的スキル」と呼びます。「どの領域から広げていくのか、順番は一人ひとり違っていいのです。この図を頭に置いておくことが大切」という大津先生の言葉に、3人は真剣な表情で聞き入っていました。

「計画された偶発性理論」という用語を知っていますか? 米国スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱した、キャリアに関する考え方の一つです。「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」というもので、「偶然に起きることはコントロールできないが、偶然をただ待つのではなく、仕事や人生の節目でその偶然を創り出せるように普段から意識して行動することが大事」という前向きな考え方です。これを実践するために必要な行動指針として、好奇心、持続性、楽観性、柔軟性、冒険心の5つの要素があることを学びました。

今の生活や勉強でも生かせる「発見する力」

ここまで来たところで突然、与えられた条件に合う数字を答えるクイズが出題されました。制限時間は5分。3人は条件文をじっと見つめ、真剣に考えます。残念ながら時間内に正解は出ませんでしたが、やみくもに数字を当てはめるのではなく規則性を見つけようとするなど、考え方に工夫が見られました。答えと解き方が明かされると、「そう考えるのか」とちょっぴり悔しそうな3人でした。
クイズの狙いは「発見する力」の重要性に気付くこと。発見する力は、高校生の今の生活や学校での勉強にも役立ちます。例えば、テストで間違えた問題こそ発見のチャンス。なぜ間違えたのかがわかれば、次回はもう間違えないはず。なぜだろうと考え、ヒントや答えを発見する。それが勉強のおもしろさなのではないでしょうか。

最後に、一人ずつ感想を発表。「自分の勉強方法を見直すいい機会になりました」「3つの領域を意識しながらこれからも過ごしたいです」「今日学んだことを進路選択に役立てたいです」。将来に向けて積極的に行動しようとする意志が表れていました。

インターンシップ後に改めて体験を振り返り、仕事での役割や必要な力、教科とのつながりを考えることで、自分の目標ややるべきことが明確になります。事後学習は、夢を叶えるための第一歩と言えるかもしれません。