中国のeコマース企業アリババ・グループは今年8月、ショッピングコンテンツ「Taobao Buy」を発表しました。マイクロソフトのMRデバイスHoloLensを使ってインタラクティブなショッピング体験ができる機能です。

このデモ体験が、先月中国・杭州で開催されたTaobao Maker’s Festivalにて公開されました。

MRを使ったショッピングでは、オンラインストアの製品を3DCGモデルにして現実に再現し、手元で確認が可能です。購入する前に、商品をあたかもそこにあるようにチェックできる仕組となっています。また商品の特徴や購入者の評価、レビューといった情報も、空間に浮いたデジタルディスプレイで表示されます。

空間に商品のCGを表示してショッピング アリババがARアプリを開発中 | Mogura VR

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Taobao Maker’s Festivalでは35台のHoloLensを用意。300平米という巨大な展示を行い、4日間で1,500人以上の体験者を集めたということです。

広がる本の世界や動き出すおもちゃ

動画で公開されたデモ体験の様子です。書籍の展示の前に立つと、本の世界がデジタル画像で浮かび上がります。更にその本に関する価格やレビューといった情報も表示。「ADD TO CART」を選べば、画面右に現れるカートの中に商品が入り、その場で購入もできます。

絵画の展示では、中の人物が出てきて笑いかけます。

ゲームやおもちゃの売場で自動車の模型に手をかざすと

デジタルの自動車が現れます。

自動車は店内を走り回り、ゲームのような楽しいシーンを見せてくれます。

ファッションのコーナーで見られるのは、価格などの文字情報だけではありません。マネキンと同じコーディネートの人物が現れ、動いた時にどう見えるかのイメージが確認できます。こちらもその場でオンライン上のカートに入れて、購入することが可能です。

楽しい消費体験でファンを増やす狙いか

デモ体験からうかがえるのは、アリババはMRを活用しショッピングを、より消費者が楽しめるものにする」と考えているのではないか、ということです。価格やレビュー情報は2DのPC画面でも確認できます。しかしおもちゃが動き出したり、本の中からアニメーションが出てきたり、といった体験はMRならではです。

https://www.youtube.com/watch?v=CIQV14b1hHU

同社が米スターバックスと提携し、「Starbucks Reserve Roastery」上海店でコーヒーのAR体験を提供している取組も、これと類似しています。店内の様々な場所でARを体験できるように仕掛けられ、豆の栽培からコーヒー1杯が出来上がるまでのストーリーや焙煎方法などのアニメーションを楽しむことができます。

この仕掛けはコーヒー購入を便利にするわけではありませんが、店舗に訪れるのが楽しい体験になる、また来店したくなる、という点でMRを使ったショッピングと共通しています。

スタバ×アリババ、上海の店舗でAR体験を提供開始 | Mogura VR

スタバ×アリババ、上海の店舗でAR体験を提供開始 | Mogura VR

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同様にHoloLensを使い、服のディテールチェックや購入を行うサービス「chloma x STYLY HMD collection」を開発した日本のPsychic VR LabはMRショッピングに関して次のように言及していました。「(HoloLensを使うこのサービスは)ユーザーがブランドの世界観を実際に体験できるためブランドイメージが伝わりやすく、ファン化に繋がりやすい傾向があるのが特徴です」

このようにアリババのMRショッピングも、同社の世界観を体験してもらい、ファンを増やす狙いがあると考えられます。競争が激しいeコマース市場でユーザーを維持するために、MRを使ったわくわくする体験を、未来のショッピング像として描いているのではないでしょうか。

(参考)YouTube