「ちっちゃな家」シリーズで有名な、建築家・杉浦伝宗さんの名言、狭小住宅の空間三原則「透ける」「抜ける」「兼ねる」
前々回は「透ける」について、前回は「抜ける」についてご紹介しました。
最後にご紹介するのは「兼ねる」です。
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おそらく「兼ねる」については、皆さんも聞いただけで、なんとなく想像がつくかもしれません。
限られた平米数の狭小住宅に、部屋を幾つも作るのは物理的に難しい……。
そこで、部屋や空間に複数の用途・機能を持たせ省スペース化していこうというのが、この「兼ねる」です。
思えば昔の日本で庶民の暮らしといえば、ちゃぶ台を置いた畳の部屋で食事をし、時にお客様を迎え、夜は布団を敷いて寝ていたことからも、「兼ねる」は日本人には腑に落ちやすいのではないでしょうか。
事例でより具体的に「兼ねる」をご紹介
1.玄関を省略してLDKと兼ねる
先日お亡くなりになった樹木希林さんのナレーションも印象的だった、昨年大ヒットしたドキュメンタリー映画『人生フルーツ』では、故・津端修一さんが自ら設計された玄関を省略してLDKと兼ねるご自宅を見ることができます。
家が1つの大きなワンルーム形式になっているだけでなく、玄関らしい玄関もなく、庭に面した掃出し窓からの出入りになっているのが印象的でした。
2.廊下を省略して「洗面所」と「脱衣所」と兼ねる
長い廊下は、狭小住宅にとって極力避けたいプランです。
古い木造一戸建てをリノベーションした筆者の元・自宅ですが、奥に位置する洗濯機や浴室までの廊下の途中に、トイレや洗面脱衣を配置しました。
ただし、玄関からも丸見えなので、いざという時の目隠しドアに、隣接する納戸のドアを90度ふって兼用です!
しかし、こういった「玄関がない」「廊下が脱衣になる」等のプランは、住むにあたり、それなりの覚悟が要求されます。
ライフスタイルや家族の希望などを充分に検討シミュレーションして、決定してください。
もっと身近で取り入れやすい事例も!
洗面所やキッチンの一角に家事コーナーを作ったり、ワンルームでベッドをソファ代わりにする、というのも「兼ねる」ですよね。
LDに大きめのダイニングテーブルを置き、子どもの勉強や家事、事務作業をするのだって立派な「兼ねる」です。
さらに外へも目を向けて、庭やテラス、バルコニーや屋上との繋がりを感じさせるプランも、広い意味での「兼ねる」となります。
総論:3原則のもたらす大きなメリット
いかがでしたか?
「透ける」「抜ける」「兼ねる」は、改めて名言だと思いました。
柔軟な発想と工夫・大胆な割り切りで、小さな家でも窮屈にならずに、楽しく住まうことができる……。
また、資材や内装材が節約できるので、工事費の削減も狙えるかもしれません。
杉浦さんも、小さな家でコンパクトに住まうことは、結果として冷暖房効率もよく、掃除にかける労働力が減る、つまり家事効率も上がると嬉しいメリットを挙げられていました。
ぜひ今日からでも、この「透ける」「抜ける「兼ねる」の中から、皆さんの住まいに取り入れられる技を探してみてください!
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