土曜の午前4時52分。

ぐっすり寝ているか、徹夜明けで迎えるか、大人ならどちらかであろう時間帯。この眠気だらけの地に、新たに始まった子ども番組が『じゃじゃじゃじゃ〜ン!』フジテレビ系列)だ。

フジテレビが自社制作で子ども番組を手がけるのは、実に24年ぶりのこと。じゃぁその24年前の番組はなんだったのか……といえば、あの『ウゴウゴルーガ』である。子ども番組に見せかけて幾多の大人たちを魅了した伝説の番組、その遺伝子を受け継いだ「直系」が『じゃじゃじゃじゃ〜ン!』である。

CGキャラと子どもに見えるウゴウゴの血
『じゃじゃじゃじゃ〜ン!』の舞台は「むかしむかしの近未来」。パンダ着ぐるみを着た2人の子ども「じゃじゃじゃ」(大野流功)と「じゃ〜ン」(竹野谷咲)が、人工知能の「AIさん」と一緒に旅に出かけるところから始まる。

子どもたち以外は全てCGで描かれ、旅の途中には個性豊かなキャラクターが待ち構えている。「テング課長」(声:オテンキのり)は人の自慢話が大好きで、いい自慢話を聞くと鼻が伸びる。なぞなぞを出してくる「なぞな像」(声:オジンオズボーン篠宮)は、なぞなぞに答えられると飛んでいってしまう。

子どもたちの会話やリアクションは素の状態に近く、自慢話を問われてもモジモジしたり、突然なぞな像になぞなぞを出したりと、周りの大人たちを翻弄し……と、もうこの辺りで『ウゴウゴルーガ』の影がちらついている方もいるだろう。CGキャラが質問し、子どもたちが素に近い反応を見せる。完全に『ウゴウゴルーガ』のフォーマットだ。

ウゴウゴルーガ』は「ウゴウゴくん」と「ルーガちゃん」が、当時まだ黎明期だった3DCGキャラと会話を繰り広げていた(キャラクターは公式サイトを参照)。時には完全にテレビの前の大人をターゲットした振る舞いもあり、子ども相手に「羽田派の旗揚げとハタハタ唐揚げ、いただけないのはどっち?」と聞いたりもしていた。

2つの番組が似ているのは偶然ではない。『じゃじゃじゃじゃ〜ン!』スタッフに「監修」としてクレジットされている石井浩二は、『ウゴウゴルーガ』でディレクターを務めた人物。「デザイン監修」の田中秀幸もCG制作に携わっていた。ここに滋賀県石田三成CM」やEテレ「ミッツ・カール君」などを手がける映像ディレクター・藤井亮などが名を連ねる。古き姿を掘り起こし、新たな血を注入する。土曜の早朝に2010年代ウゴウゴルーガが生まれようとしている。

明け方に見る夢みたいなコーナーたち
ウゴウゴルーガ』はメインコーナー以外にも、「ミカンせいじん」「プリプリはかせ」「教えてえらい人」など、数秒から数分の短いコーナーを立て続けに流していた。この構成も『じゃじゃじゃじゃ〜ン!』は踏襲している。

顔はリアルだが体が雑に描かれた「からだざつお」、野菜に車輪をつけて競わせる「なんでもカーグランプリ」あたりはまだ序の口。「5時5分の社会科見学」では、池袋サンシャイン水族館に定点カメラを置き、朝5時5分の館内を1分近く流し続ける。誰も居ないし何も起きない。

「だいなし むかしばなし」では、桃太郎のお話に宇宙銀河戦士ジャスティーンが混入。桃と共におじいさんおばあさんの家にたどり着いたジャスティーン桃太郎一行を「個性をはき違えた奇抜な服に身を包み、金や常習性のある危険な食べ物をばらまいて、仲間を増やした恐ろしい不良集団」とみなし、ギャラクシーファルコン号に乗り込んで鬼ヶ島まで警告に向かうのだ。なにがなにやらである。

そこに突然始まるヒーローアニメが「クレーンゲーマーつかみ」だ。謎の敵と対峙する大空つかみ。人質を助けるために己のクレーンを繰り出す。OP曲まで作り込んでいるが、これもわずか1分ほどのコーナー。最後は実写映像で柿の種をクレーンですくって終わる。

どれもこれもツッコミが不在で、嵐のように終わるVTRばかりだ。徹夜明けに放送に出くわしたら夢でも見たのかと思うだろう。あのガチャピンとムックも今後『じゃじゃじゃじゃ〜ン!』に出演するというから、どんな扱いになるのか期待したい。

あのオープニング曲も復活している
平日朝6時台に放送されていた『ウゴウゴルーガ』は、口コミで評判が拡がり7時台の放送に移動。番組開始1年後には『ウゴウゴルーガ2号』を金曜夜7時に生放送するまでになった。

だがその半年後に番組は終了。ほぼ毎日放送があるため、中心メンバーはずっと合宿状態だった。番組プロデューサーだった桜井郁子は「全員が前のめりに倒れた」と語っている(ほぼ日刊イトイ新聞「みんな大好き、ウゴウゴルーガ!」より)

『じゃじゃじゃじゃ〜ン!』が週1回放送なのは、その反省なのか、それとも今後加速するのかはわからない。今はただ、このクオリティで早朝にひっそり続けてほしいと願うばかりだ。

そういえば『ウゴウゴルーガ2号』のオープニングテーマは、ピチカート・ファイヴの「東京は夜の七時」だった。ピチカート・ファイヴは2001年に解散しているが、今年の夏にリリース25周年を記念して「東京は夜の七時」をセルフカバーしている。お互い形を変えて2018年に復活した同士、再びのコラボレーションも期待してしまうのだった。

『じゃじゃじゃじゃ〜ン!』毎週土曜4:52〜5:22放送
見逃し配信:TVer/フジテレビオンデマンド

(井上マサキ

『ウゴウゴルーガおきらくごくらく15年!不完全復刻DVD-BOX』「おきらくごくらく!」の御発声でお馴染みのテレビくん。声は番組プロデューサーの桜井郁子が担当していた