【データで診るサッカー】4人のボランチを比較 今野の復帰が大きな鍵に

 今、ガンバ大阪が勢いに乗っている。9月1日の第25節川崎フロンターレ戦の勝利(2-0)以降、連勝街道に乗り、見事5連勝を飾った。J2降格圏内の17位に沈んでいたチームは、この快進撃により暫定12位まで浮上。その原動力となったのは、元日本代表MF今野泰幸の復帰だった。

 今季、G大阪は開幕6試合で1分5敗とスタートダッシュに失敗すると、立て直すことができないまま、今季就任したばかりのレヴィー・クルピ監督を、7月22日の第17節清水エスパルス戦に1-2と敗れた翌日に解任。後任に、U-23チームを率いていた宮本恒靖監督を昇格させた。

 今季のG大阪が苦戦を強いられてきた要因の一つに、競り負ける試合が多かったことが挙げられる。クルピ監督が解任された第17節終了時点で喫した10敗のうち、6回が1点差負け。その傾向は宮本監督の就任後も変わらず、第20節の名古屋グランパス戦(2-3)、第23節ベガルタ仙台戦(1-2)と3敗を喫したうちの2回が1点差負けだった。

 それがこの5連勝中で、1点差勝利が4度と劇的に変化。最後まで踏ん張り切れない、あるいは粘り強く勝ち点を拾えなかったチームは、なぜ変わることができたのか。

 その要因の一つはアジア大会参戦などで、約1カ月間チームを離れた韓国代表FWファン・ウィジョが第26節のヴィッセル神戸戦(2-1)で復帰し、早速結果を残していること。直近の第29節セレッソ大阪戦(1-0)は出場停止だったものの、復帰後3試合連発、計4ゴールといずれも決勝点をマークする勝負強さを見せている。

 そしてもう一つの要因として挙げられるのが、今野の復帰だ。開幕前に右足首を負傷して出遅れていた今野は、5月中旬に手術を行い長期離脱を強いられた。そして、約3カ月半ぶりに川崎戦で戦列復帰を果たすと、5試合連続スタメン出場でチームも破竹の5連勝。経験豊富なボランチの復帰が、チームの攻守を安定させたのは明らかだろう。

 今野不在となった序盤戦、G大阪ボランチの人選は流動的だった。開幕戦では元日本代表MF遠藤保仁を本職のボランチではなく攻撃的MFに配し、ルーキーMF福田湧矢とMF市丸瑞希をスタメンに抜擢。その後はMF矢島慎也(現・ベガルタ仙台)、MF高江麗央らが起用されるものの結果を残すことができず、3月下旬にはサントスからMFマテウス・ジェズス(現・ポルティモネンセポルトガル)を獲得した。

 矢島とマテウスが夏に移籍したなか、今シーズン主にボランチで出場機会を重ねたのは遠藤、今野、マテウス、高江、そしてMF高宇洋の5人だ。トップ下を務めることもあったが、ここまで全試合に出場する遠藤と、その他4人のプレーデータを振り返ると、各々の特徴が浮かび上がってくる。


突出した数字を誇る今野の守備

 データ分析会社「InStat」によれば、遠藤以外の4人のデータを見ると([表1]参照)、マテウスは1試合平均のシュート本数(1.6)やドリブル成功数(3)、デュエル勝利数(8.8)などで存在感を発揮している一方、ボールロスト(2)やファウル数(1.8)が4人の中で最も多く、守備陣に負担をかける傾向にあったことが分かる。

 逆に宮本監督の就任とともに抜擢された高は、比較的守備に重きを置いた数値となったが、他の選手と比べて目立った項目が少ない。高江は被ドリブル突破数(0.9)やロスト数(0.4)は少なかったものの、タックル(0.3)やデュエル勝利数(1.3)など球際の攻防において、他選手に比べて数値が低かった。

 そして今野は、攻撃面で大きな特徴はないものの、守備面ではタックル数(2.4)やクリア数(2)が4人の中で最多、ロスト数(0.2)や被ドリブル突破が最少など、突出した数値が多い。今野の相手ボールホルダーに対する素早い寄せと球際の強さに加え、ピンチの芽を摘む危機察知力の高さが、遠藤の守備面の負担を大きく減らしていることは間違いない。長年コンビを組んできた二人の間には阿吽の呼吸があり、中盤の底に生まれた安定感が遠藤のゲームメイク力を高めるというポジティブなサイクルを生み出しているのだろう。

 大混戦となっている残留争いの行方は不透明だが、この経験豊富なボランチコンビがピッチに立っている限り、G大阪は大崩れすることなくJ1残留という成果をつかむのかもしれない。


Football ZONE web編集部)

ボランチ4選手の数値を徹底比較【写真:Getty Images】