ESO/L. Calçada & Olaga Cucciati et al.
Point
ハッブル宇宙望遠鏡によって、110億光年の距離に原始超銀河団を発見
・これほど遠く、宇宙の初期に超銀河団を発見するのは初めて
・地球に近い現代の超銀河団とは構造が異なるため、超銀河団の進化について新たな洞察が得られる可能性

数千個の銀河からなる巨大な銀河の集団、「銀河団」。さらに、その銀河団が集まったものを「超銀河団」といいます。

そして私たちの天の川銀河は局所銀河団に属し、局所銀河団は乙女座超銀河団に属しています。今回見つかった原始超銀河団「ハイペリオン」は、110億光年の距離にあります。それが意味するのは、ハイペリオンが、ビッグバンから23億年しか経っていない若い超銀河団だということです。この発見は“Astronomy & Astrophysics”で発表され、“arXiv”でも読むことができます。

The progeny of a Cosmic Titan: a massive multi-component proto-supercluster in formation at z=2.45 in VUDS
https://arxiv.org/abs/1806.06073

この天体は、現在までに見つかっている天体の中で最も大きな銀河団の一つです。その重さは、なんと太陽の100「京」個分以上である可能性があるのだとか。ちなみに「ハイペリオン」という名前は、ギリシャ神話ガイアとウラノスから生まれた12柱の巨人中の1柱が由来とのこと。

観測可能範囲内の超銀河団の数は、1千万を超えると見積もられています。しかし、現在までに見つかったもっとも遠いものでさえ、ハイペリオンの半分の距離もありません。例えば今年のはじめに見つかった超銀河団は、40億光年です。

Photo credit: LLacertae on Visual hunt / CC BY-NC

イタリア天文学オルガクチャッティと研究チームは、ろくぶんぎ座領域をハッブル宇宙望遠鏡VIMOS Ultra Deep Field Surveyを使って調べ、ハイペリオン原始超銀河団を発見。超銀河団から届いた光の赤方偏移から、その距離が110億光年であることがわかりました。

さらに、ハッブルのデータをzCosmos surveyの赤方偏移データと組み合わせることで、構造の立体的な容積を決定することに成功、その複雑な構造の研究も行いました。

調査の結果、ハイペリオンの構造は、乙女座超銀河団よりも複雑であることが判明。大きさはおとめ座超銀河団と同じくらいですが、少なくとも7つの濃度のピークを持っており、銀河のフィラメントでつながっています。

地球に近い超銀河団ははっきりとした構造を持っており、質量が集中しています。しかし、ハイペリオンはもっと均一で、ゆるい銀河の結びつきで出来た「にじみ」が連続してつながっています。研究チームは、この違いは「地球に近い方の銀河団ではより長い時間が経過しているため」に発生すると仮説を立てています。この違いを研究することで、超銀河団が数十億年かけて進化した謎を解くことができるかもしれません。

クチャッティ氏は、「ハイペリオンを理解し、現在の似たような宇宙の構造と比較することで、過去にどのように宇宙が育ち、これからどのように進化していくかについての洞察を得ることができます。そして、超銀河団の形成モデルに挑戦する機会も与えてくれているのです」と述べています。

 

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via: Science Alert/ translated & text by SENPAI

 

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