交響詩篇エウレカセブン」(2005年)や「ひそねとまそたん」(2018年)などのオリジナルアニメ、「鋼の錬金術師」(2003年)や「僕のヒーローアカデミア」(2016年)といった漫画原作アニメで知られるアニメ制作会社ボンズが、この10月で設立20周年を迎える。それを祝して、2018年10月26日(金)より、東京アニメセンター(東京・市ヶ谷)で20周年記念イベントが開催される。
ボンズを設立したのは、サンライズで「天空のエスカフローネ」(1996年)や「カウボーイビバップ」(1998年)など、今なお国内外で熱い支持を集めるオリジナルアニメをプロデュースしてきた南雅彦さんだ。「鋼の錬金術師」シリーズをはじめとする漫画原作アニメをヒットさせながらも、ボンズが毎年必ずクリエイティビティの高い独創的なオリジナルアニメを制作するのは、なぜなのだろうか?
現在も現役プロデューサーとして第一線に立つ南さんに、ボンズの歩んできた20年を振り返ってもらった。

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会社を設立するには、信頼できるアニメーターが必要


── 今年4月に放送された「ひそねとまそたん」のBlu-ray BOXが、来月からリリースされますね。

 「ひそねとまそたん」は、樋口真嗣さんと岡田麿里さんと3人で始めた企画です。作品はなるべくプロデューサーたちに任せたいのですが、オリジナル作品の制作が好きなので、数年に一度、自分がメインになって企画を立てます。「ひそねとまそたん」の前が、「スペース☆ダンディ」(2014年)。次が、来年放送予定の「キャロル&チューズデイ」。渡辺信一郎監督作です。サンライズを辞めて、20年前に川元利浩逢坂浩司たち、クリエイターと一緒につくった会社なので、オリジナル作品をつくりたいという気持ちはいまだに強いです。

── ボンズの設立は、南さんがサンライズ第二スタジオで「カウボーイビバップ」(1998年)をプロデュースしていた年なんですね。

 ええ、「ビバップ」を制作している途中で、ボンズをつくりました。本当は、サンライズを辞めるつもりはなかったんです。サンライズが大きい組織になって、事業部制に移行した時期でした。僕は事業部とは違うところで作品づくりをしたいと相談していたのですが、気がついたら辞めることになっていて。なので、計画性はまったくなく、会社をつくったんです。

── 一緒にボンズをつくった川元さん、逢坂ともに作画監督やキャラクターデザインを手がける凄腕アニメーターですね。

 川元とは「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」(1991年)でガッツリ仕事していました。逢坂とは、それこそ僕が制作進行だった若い頃に知り合って、「蒼き流星SPTレイズナー」(1985年)や「シティーハンター」(1987年)で密に仕事をしていました。なので、2人にはすぐ相談しました。「なんか、会社を辞めるみたいなんだけど……」って。

── 辞める“みたい”と、他人事のように(笑)。

 「会社つくるみたいなんだけど、どう? 一緒にやる?」みたいな感じで。

── 会社設立にあたって、アニメーターさんに声をかけたのは、どういう意味があったのですか?

 僕の中では、アニメーションの監督は「ひとつの作品を終えたら、別のスタジオで別の仕事をするフリーランス」というイメージなんです。逆に、アニメーターは何でも描ける人たち。自分が企画を立ち上げるとき、アニメーターは常に横にいてほしい存在なんです。そういう意味で川元と逢坂とは付き合いも長くて信頼しているし、技術も高水準。それで、声をかけたわけです。


── 1998年の設立から最初の作品まで間があって、劇場版の「エスカフローネ」(2000年)と「機巧奇傳ヒヲウ戦記」(2000年)、ほぼ同時期のようですが?

 ボンズを設立したのは「ビバップ」の制作が、まだ1クール残っている時期でした。「エスカフローネ」の劇場版は、サンライズにいた頃に企画はありました。サンライズから、制作を請け負った形ですね。「エスカフローネ」をつくりながら、「ヒヲウ戦記」と「機動天使エンジェリックレイヤー」(2001年)の仕込みをしていました。当時は人数の少ない会社だったので、すぐにシリーズを転がさなければならない状況ではありませんでした。幸い、ほかの役員はアニメーターなので、自分の食い扶持は稼いでくれていましたし。

── この本社ビルには、A~Dまで、計4つのスタジオが入っているようですね。

 それが、最近になって5つに増えたんです。ここのところ、ずっと忙しくて、「なんでだろう? 普通は楽になるはずなのになあ……」と思っていたら、いつの間にかスタジオが増えていたんです。
>> 南雅彦プロデューサーが明かす、「ボンズが20年間もオリジナルアニメをつくりつづける理由」【アニメ業界ウォッチング第50回】 の元記事はこちら
南雅彦プロデューサーが明かす、「ボンズが20年間もオリジナルアニメをつくりつづける理由」【アニメ業界ウォッチング第50回】