普段デリバリーをしない米ミシガン州にあるピザ店が、このほどインディアナ州まで3時間半ほどかけてピザを配達した。その店のピザがどこよりも大好きだった末期がんを患う男性のためになされた特別なデリバリーは、家族に大きな喜びをもたらし、男性の妻はFacebookで感謝の気持ちを綴った。『Fox 5 NY』『CBS News』などが伝えている。

インディアナインディアナポリスに住むジュリーモーガンさんと夫のリッチさんは、25年前に住んでいたミシガン州バトルクリークにあるピザ店「Steve’s Pizzaスティーヴズ ピザ)」のピザが大好きだった。当時の夫妻は経済的に余裕があまりなかったことから、よくリッチさんが夕食にこの店のピザを買ってきていたという。

夫妻は、Steve’s Pizzaのピザはどの店のピザよりも美味しいと思っていた。ミシガン州から何度か別の場所へ引っ越した夫妻は、その土地にあるピザ店のピザを口にしてきたが、リッチさんは「美味しいけれど、やっぱりSteve’sのピザが一番だね」とよく言っていたそうだ。そして9月、ジュリーさんの誕生日のお祝いに久しぶりにミシガン州へ行こうという話になり、夫妻は週末の旅を楽しみにしていた。

ところがその矢先にリッチさんが倒れ、緊急病棟へ運ばれた。5日間ICU(緊急治療室)に入り治療を受けていたが、その後家族はリッチさんが末期のがんに罹っているという辛い宣告を受けた。現在は在宅でホスピスの訪問介護を受けているリッチさんのもとに身内や友人らが訪れているが、ジュリーさんとしては夫婦でもう一度、思い出の場所を訪れて一緒にピザを食べたかったという思いがあったのだろう。それを聞いたジュリーさんの父デイヴィッド・ダールケさんは、こっそりとSteve’s Pizzaに連絡した。

デイヴィッドさんは、店のマネージャーであるダルトン・シャッファーさん(18歳)に事情を話し「もし良ければ、家族の励みになると思うのでカードかメッセージを送ってもらえないだろうか」と頼んでみた。するとダルトンさんは、躊躇うことなく「それなら私がピザを届けますよ。どんなピザがお好きですか」とデリバリーをオファーしてくれたのだ。

しかしリッチさんの家はインディアナ州で、ミシガン州のバトルクリークからは362キロ(225マイル)も離れており、車で少なくとも3時間半はかかってしまう。デイヴィッドさんはそう伝えたが、ダルトンさんは店を閉めたら行くと言い、夜中の2時半頃に車を飛ばしてリッチさんのもとにペパローニ&マッシュルームの2枚のピザを届けに来てくれた。

この心温まるサプライズに、ジュリーさんも一家も大喜びした。ダルトンさんは「一家はとても喜んでくれて、ハグをしてくれました。デリバリーしてよかった」と後に話している。一方、ジュリーさんも自身のFacebookで感謝の気持ちを綴った。

「ダルトンさんの行為は、感謝してもしきれません。Steve’s Pizzaは普段デリバリーをしていないにもかかわらず、店を閉めてから夜中に車でわざわざピザを届けに来てくれたのです。しかも彼は、見知らぬ私たちに夫のことを祈っていると言ってくれました。そして『私にできることがあればなんでも言ってください』とも言ってくれたのです。父は疲れているだろうダルトンさんのために、ホテルを予約したいと申し出たのですが、彼は翌日も仕事があるからとすぐに帰っていきました。ダルトンさんは、私たちに大きな喜びをもたらしてくれました。今、私たちは大変な時期を迎えていますが、世界一美味しいピザを口にすることができて本当に嬉しい。ありがとうという言葉でこの感謝の気持ちを伝えるには不十分のようにも思いますが、ダルトンさん、本当にありがとう。あなたの真夜中のデリバリーには心から感謝しています。」

このニュースが報じられると、Steve’s PizzaのFacebookアカウントには店の客からの心温まるコメントや見知らぬ人からの「今度、是非店に行くよ!」といった声が数多く寄せられたという。

画像は『CBS News 2018年10月18日付「Pizza shop makes surprise delivery to terminally ill man 225 miles away」(WTTV)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)

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