最近、耳にするようになった「人生100年時代」──。
2007年に生まれた日本の子どもが、107歳まで生きる可能性は50%ある、という研究結果があるそうです。
伸び続ける平均寿命、科学の進歩……を考えれば、「人生100年時代」の到来は現実的なものかもしれません。
ならば……長い老後を豊かに、楽しく、自立して生きたいですね。単なる長寿ではなく、生活の質を伴った自立した老後「quality of life(QOL)」を実現したい……。
前回は、高齢化社会の大敵である骨粗鬆症の原因や問題点、症状をご紹介しました。今回は、骨粗鬆症の予防や治療についてみていきましょう。

2007年生まれの子は107歳まで生きる?

2007年生まれの子は107歳まで生きる?


人生100年時代とは?

「人生100年時代」とは、英国ロンドンビジネススクール教授のリンダグラットン氏が長寿時代の生き方を説いた著書『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(2016年)にて提言された言葉です。同書では「過去200年間、人の平均寿命は伸び続けており、そこから導かれる予測によれば2107年には主な先進国では半数以上が100歳よりも長生きする」と語っています。
2107年 ── 今からおよそ90年先の予測であるとしても、驚きですね。「長生き=幸せ」とは限りません。経済的な問題もあれば、介護など周囲への負担の問題もある。それらを踏まえたうえで、「人生100年時代」に備えていきたいですね。
「人生100年時代」に期待するためにも、骨粗鬆症とどのように取り組めばよいのでしょうか?


骨の新陳代謝 ── 生まれ変わる骨

骨は一度できあがってしまうと、その後変わらないもののように思われがちですが、 古くなり劣化した骨はメンテナンスされ、約半年で新しい骨細胞がつくられるといわれています。これが骨の新陳代謝です。
骨は骨吸収(骨を壊す働き)と、骨形成(骨をつくる働き)を繰り返し、健康な骨を維持します。そのピークは一般的に40代までで、それ以降は骨吸収と骨形成のバランスが崩れ、骨量が減っていきます。
健康な骨では、骨吸収と骨形成のバランスがつり合っていますが、骨粗鬆症の骨では、骨吸収がどんどん進んで骨形成を上まわってしまい、骨がスカスカしてもろくなり骨密度が低下します。特に女性は閉経後、ホルモンバランスの関係から骨吸収のスピードが骨形成を上回り、60代以降で骨粗鬆症のリスクが高まります。


骨粗鬆症、予防の柱は食事と運動

骨粗鬆症予防 ── 健康な骨をつくるために大切なことは、食事と運動です。
【多くとった方がよい食品と控えたほうがよい食品】
多くとった方がよい食品
カルシウムを多く含む食品(牛乳・乳製品、小魚、緑黄色野菜、大豆・大豆製品)── 骨の材料
ビタミンDを多く含む食品(カツオ、鮭、卵、きのこ類)── カルシウムの吸収率をアップさせる
ビタミンKを多く含む食品(納豆、緑色野菜)── 骨をつくる働き
● 果物と野菜
● タンパク質(肉、魚、卵、豆、牛乳・乳製品)── 骨の質を高めるコラーゲンの材料
控えた方がよい食品
● リンを多く含む食品 (加工食品、一部の清涼飲料水)
● 食塩
カフェインを多く含む食品(コーヒー、紅茶)
● アルコール
また、運動することによって、骨が刺激を受けて骨細胞が働き、骨の形成を促す指示を伝えます。するとカルシウムが取り込まれてあらたな骨細胞が形成されます。骨は骨に対しての重さ(体重)や運動という負荷を感じて、身体を支えるために骨を強くします。
大切なことは「寝ているよりも座っているほうが、 座っているよりも立っているほうが、立っているよりも歩いているほうが、骨を強くするためにはよい」ということ。マメに動くことをこころがけたいですね。
また、カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、紫外線を浴びることで体内でもつくられます。夏の直射日光を長時間浴びることは皮膚が赤くなるなどダメージにつながりますが、適度な日光浴は骨の健康に役立ちます。
冬であれば30分~1時間程度散歩に出かけたり、夏であれば暑さを避けて木陰で30分程度過ごすだけで十分。 屋内で過ごす時間が長い高齢者や、美容のために過度な紫外線対策を行っている人には、ビタミンD不足が心配されます。
運動をかねて外出する機会をつくり、上手に紫外線と付き合っていきましょう。

バランスのとれた食事

バランスのとれた食事


骨粗鬆症の治療

いま骨粗鬆症は、おもに整形外科、外科、内科、婦人科の医師によって診療が行われています。これは骨粗鬆症が単に骨だけの病気ではなく、全身の代謝に関係している病気だからです。
骨密度検査は、骨の健康を知るうえで重要な手がかりです。 日本では、40歳以降の女性を対象に5年刻みに骨密度の節目検診を行う自治体が多くなっています。 特に閉経後の女性は、可能であれば1年に1度検診を受けるとよいとされています。
骨密度検診は、地域の広報誌やホームページ、保健センターに問い合わせするなどして確認できます。かかりつけの医師に相談するのもよいでしょう。
検診で骨密度が減っていると判定された場合は、指示された時期に医療機関で診断を受け、治療の時期を逃さないようにしましょう。
骨粗鬆症治療の目的は、骨密度の低下を抑え骨折を防ぐことにあります。治療の中心は薬物治療になりますが、骨粗鬆症の発病には食事や運動などの長年の習慣も深く関わっています。そのため、薬物治療とともに食事療法や運動療法も並行して行い、骨強度を高めていくことが重要です。
薬物については、老化によって減ってしまった骨を若い頃のように戻す薬はありません。
しかし、最近では早期治療により骨粗鬆症による骨折がかなり防げるようになりました。 現在使われている薬は、骨の吸収(骨を壊す働き)を抑える薬、骨の形成(骨をつくる働き)を助ける薬、吸収と形成の骨代謝を調節する薬の3つに大別できます。

早期治療が効果的

早期治療が効果的

人生100年時代への備え ── 今日は世界骨粗鬆症デー