Credit: Bas-Jan Zandt et al. 2011
Point
・臨床的な「死」の後10分間にもわたって脳波が計測された患者が存在していた
・測定された4名の末期患者の脳波には類似点がなく、死後の体験が人によって異なることが示された
・観察されたのはたったの4人にすぎず、生物学的も説明がなされていないことから、これを「死後の体験」と安易に結びつけることはできない。

昨年、カナダICU(集中治療室)に勤務する医師たちが、驚くべきケースに遭遇しました。4名の末期患者の生命維持装置を停止させたところ、そのうち1名の脳が、臨床的な「死」を宣告された後にも脳波を計測していたのです。

さらに、脳波検査(EEG)による観測の結果、死亡前後の4人の脳波に類似点が見当たらないことから、死後の体験が人によって異なっていることが示唆されています。

Electroencephalographic Recordings During Withdrawal of Life-Sustaining Therapy Until 30 Minutes After Declaration of Death.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28231862

医師たちは脈拍や瞳孔を確認して死亡を判断しましたが、その患者の脳は死後10分以上にもわたって、深い眠りの際の脳波「デルタ波」を示していたのです。そしてそれは、過去のラットの研究において存在が確認された「デス・ウェーブ(死波)」とも異なるものです。

デス・ウェーブの実験においては、ラットの首を切断して脳と心臓を分離させた後1分間にわたって脳波が検出されました。今回のケースにおいても医師たちはそのデス・ウェーブを疑いましたが、心拍停止から1分以内に死波は観測されませんでした。

下の図が、亡くなった4人の患者の脳をスキャンしたものです。彼らは「0」の時点で臨床的な「死」を迎えています。

Credit: Norton et al. (2017)

「黄色」の部分が脳の活動を示しています。例えば患者2(Patient2)を見てみると、死の10分ほど前に黄色の部分が消失し始めていることが分かります。そして、どういうわけか患者4(Patient4)のグラフには、0以降にも黄色の分布が確認できます。数値を見てみると、患者4においては10分38秒にもわたってデルタ波が検出されていました。

なぜ患者4は、鼓動が止まった後に数分間も脳波が検出されたのでしょうか。この点につき、機器のエラーであったことも考えられますが、当時不具合などは確認されておらず、医師たちは困惑しています。

このとき、患者4の身に何が起こっていたのかは知る由がありませんが、人の死の瞬間に奇妙なことが起こり得るのは確かです。2016年の研究では、人の死後数日間にわたって、1,000以上もの遺伝子が活動を続けることも分かっています。しかも、それらの遺伝子は死後に活動を生前以上に活発化させるというのです。

このケースにおいて不思議なことが起こったのは確かですが、これを直接「死後の体験」の存在と結びつけることはできません。観察されたデータはたった4人のものであり、さらにこの事象に対する生物学的な説明は、なされていないままなのです。

 

とはいえ、これにより私たちの「死のプロセス」について何らかのヒントが得られたことは事実。すべての生命が体験するであろう「死」の謎の解明に、私たちは少しだけ近づいたのかもしれません。

 

脳波から「夢の種類」を特定することに成功

 

via: sciencealert / translated & text by なかしー

 

死後の体験は人によって違う。死後「10分間」も脳波が継続するパターンも