ミドルと個人技で2ゴールを奪い、鹿島撃破に貢献

 浦和レッズのFW武藤雄樹は、来季のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権を狙ううえで大一番となった20日のJ1第30節・鹿島アントラーズ戦で2ゴールの活躍。チームを3-1の勝利に導いたが、その裏にはオズワルド・オリヴェイラ監督や大槻毅ヘッドコーチの存在もあった。

 鹿島戦の武藤はまさに絶好調だった。前半から相手の間でボールを受けて起点になるだけでなく、ドリブルで積極的に切り込むプレーを披露。相手ボール時には守備をサボらない献身性を見せていた。しかし、得点は生まれずに0-1でハーフタイムを迎えた。

 悪くないプレーを見せていた武藤に、声をかけたのが大槻ヘッドコーチだったという。シーズン途中には暫定監督も務めたコーチは、武藤に対して「足を振り抜け」と何度も声をかけたのだという。

 暫定監督を務めていた時期には、「シュートを打て、突き刺せ」という指示を送ったこともあるコーチは、武藤にそうした思い切りを求めた。武藤もまた、「前半にシュートを打てそうなところでパスを出したところもあったので言われたのだと思う」と、思い当たるフシがあった。

 それが無意識に影響したのか、1-1と追いついた後の後半15分にその場面が訪れた。相手の中盤の前に降りて縦パスを受けた武藤は、鮮やかなターンで利き足と逆の左足側に反転。MF小笠原満男を置き去りにすると、迷いなく左足を振り抜いた。まさに会心の一撃という言葉がピッタリの弾丸ミドルは、ゴール右に突き刺さった。武藤もまた「蹴った瞬間の感触が本当に良くて、これはいったな、と」と感じられるほどに文句なしの一発だった。


「俺の前ではゴールを決めてないぞ、と発破をかけられることもあった」

 1点リードを奪うと鹿島は反撃への圧力を強めたが、武藤は中盤の右サイドで守備を助けながらハードワークを続けた。オリヴェイラ監督は「興梠と武藤のどちらかを代えようと話していたなか、武藤の調子の良さを感じた」と、興梠を交代に指名して武藤を残した。そして、後半アディショナルタイムにはハーフライン付近の右サイドでボールを受けると一気にドリブル突破。90分以上をプレーしたとは思えないキレで3人を置き去りにすると、GKとの1対1を決めてダメ押しの一撃とした。

 オリヴェイラ監督は試合後「武藤は私が浦和に来た時に、コンディションや自信の面で不満があった。彼には勇敢にプレーすることを求めてきた」と言及。武藤にそのことを伝えると「オリヴェイラの練習を積んで、すごく体が動いていることを感じる」としたうえで、これまでにかけられてきた声を明かした。

「チームのために献身的にやってくれていると言ってくれて、そこで自信をつけようとしてくれたのかなと思います。ただ、『俺の前ではゴールを決めてないぞ』と発破をかけられることもありました。もちろん、そこで貢献したいとは思っていましたし、マリノス戦でゴールを決めた時は一緒になって本当に喜んでくれたんですよ。これからもゴールで助けたいと思っていたので、今日はその通りになって良かったですね。今日は2点とも自分のなかでは気持ちの良いゴールでした」

 武藤が触れた9月16日リーグ第26節横浜F・マリノス戦は、4月のヴィッセル神戸戦以来の今季2点目、まさにオリヴェイラ監督の就任から初ゴールだった。献身性を評価して常にスタメンで起用しつつ、ゴールへの野心を後押ししてきた指揮官にとっても、この大一番で武藤が試合を決める2得点をしたことは格別だっただろう。

 この勝利で、浦和は4位・鹿島との勝ち点差を1に詰めてラスト4試合を迎えた。常に労を惜しまずにプレーする背番号「9」は、「これを積み重ねて、天皇杯とかタイトルを決めるような試合で結果を出したい」と決意を語っていた。


(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)

鹿島戦で2ゴールを挙げた浦和レッズFW武藤【写真:Getty Images】