働き方改革の恩恵を受けているのは、恵まれたホワイト企業勤めの人だけなのでしょうか。社長から「休日出勤を強制」されている人が、弁護士ドットコムに相談を寄せました。

相談者によると、完全週休二日制(土日祝日休み)、1日あたりの実労働時間は7時間という契約で入社しました。ところが社長は「法的には週に40時間までは働かせていい」と言ってくるそうです。

さらに「(法的には40時間なのに)実働7時間×5日間だと35時間しか働いておらず、あと5時間は働くべきだ」「土日のいずれか出社するのは義務であり、割増賃金の支払いもしくは代休を与えたりする必要はない」とも社員に向かって指示をしているそうです。

滅茶苦茶な言い分に聞こえますが「私はまだ新人なので、納期に間に合いそうにない時は、長くて1日5時間ほど残業もしています。この残業については自主的なものと見なされ、残業手当は付きません」と話す相談者。

このように、「1日実働7時間」という雇用条件に反して、「週に40時間」の労働を迫る社長に問題はないのでしょうか。竹之内洋人弁護士に聞きました。

●「労働基準法と労働契約の意味合いを誤解している」

ーーこの社長の言い分は正しいものでしょうか

「社長は、労働基準法と労働契約の意味合いを誤解しているのでしょう。

労働基準法は、あくまで契約上の所定労働時間は週40時間までの範囲内で決めなさいとしているだけです。週40時間までは契約した所定労働時間を超えて、ただ働きをさせていいわけではありません」

ーー社長は「法的には週に40時間までは働かせていい」と言っていますが、根本的に間違いがあるということなのですね

「そうです。相談者の労働契約は、平日に1日7時間働く義務があり(これを「所定労働時間」といいます)、それに対して月給が〇円支払われる内容と思われます。この場合、契約上はそれ以上働く義務はありませんから、社長が言う『週に40時間までは働かせていい』という理屈は正しいとは言えません。

ただ、契約や就業規則で定めれば、1日8時間、週40時間までは残業や休日出勤を命じることはできます(それ以上は、労働基準法の定める労基署への届出が条件となります)」 

ーー週に40時間まで働くことは法的に問題はないのですね。ただ、「法定時間内残業」として残業代が発生するのではないでしょうか。

「そうです。契約で定めた所定労働時間を超えて働いた時間については、別途残業代を支払わなければなりません。そうしないと本来の契約よりも時間当たりの賃金が低くなってしまいます。

ただし、労働基準法上、1日8時間、週40時間までは、残業代は通常の時間当たり給与額でよいことになっています。25%の割増賃金が付くのは、これを超えた時間についてです」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
竹之内 洋人(たけのうち・ひろと)弁護士
札幌弁護士会、日本労働弁護団員、元日本弁護士連合会労働法制委員会委員
事務所名:公園通り法律事務所
事務所URL:http://www.pslaw.jp/

悪びれず「タダ残業」…社長の無知はもはや罪 労働法制の誤解が痛すぎる実話