いよいよドラフト会議。プロ志望届を提出した高校・大学の有望選手や社会人・独立リーグ好プレーヤーにとっては、心臓バクバクの日々が続くことでしょう。1位指名を巡るスポーツ新聞の報道も過熱の一途をたどっています。

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 注目の一つが夏の甲子園金足農(秋田)を準優勝に導いたエース・吉田輝星君の進路でしょうか。吉田については巨人の指名方針が変更されたのは驚きました。

 系列のスポーツ紙が一度は1位に「輝星最有力」とスクープしながら、それから数週間後には「大阪桐蔭・根尾が最有力」と報じました。高橋監督から原監督への政権交代も影響したのではないか?と報道する夕刊紙もあります。いずれにせよ、巨人ファンの輝星君からすれば「エッ、俺じゃないんすか!?」という心境かと拝察します。

 しかし、これがドラフトです。古くは1985年PL学園清原和博の例がありますが、水面下では情報戦が繰り広げられ、ふたを開けてみるまで誰を指名するのかは当日まで五里霧中なのです。そんなわけで一度はジャイアンツドラフト1位が有力と報じられながらも、その後に回避となってしまった3つの例を検証したいと思います。

2006年高校生ドラフト
【回避】駒大苫小牧田中将大
【指名】愛工大名電堂上直倫

 この年、ドラフトの主役は駒大苫小牧田中将大でした。2年生として前年夏の甲子園決勝ではウィニングショットに150キロのストレートを投げ、胴上げ投手に輝き、その秋の明治神宮大会でも優勝。翌春の選抜甲子園には部員の不祥事で出場辞退となりましたが、夏の甲子園決勝では体調が万全でない中、斎藤佑樹を擁する早稲田実と延長15回引き分け再試合の死闘を繰り広げ、全国を熱狂させたのは語りぐさです。

 当然、巨人のスカウトも早い段階から田中を徹底マーク。長年、背番号18を背負った桑田真澄も晩節を迎えていたことから「エースナンバーの継承者になるのではないか」と話題になっていました。ところが当時、巨人の内野陣は高齢化が進んでいたことから、高校生ドラフトの1位指名は直前で田中を回避。「愛工大名電堂上直倫」に一本化されました。

 その後は、皆さんご存じの通り。田中は新興球団・楽天に入団すると、名将・野村克也監督や星野仙一監督の薫陶を受け、今ではニューヨーク・ヤンキースのローテーション投手として大活躍しています。巨人は堂上を抽選で外しますが、外れ1位で獲得した坂本勇人がチームの大黒柱に成長しました。終わってみれば、めでたしめでたしと言ったところでしょうか。

2007年高校生ドラフト
【回避】大阪桐蔭中田翔
【指名】仙台育英佐藤由規

 この年の高校生は大阪桐蔭中田翔仙台育英佐藤由規、成田・唐川侑己の3人が「BIG3」と人気を集めていました。中でも規格外のパワーを見せつけていたのが中田です。1年夏の甲子園で衝撃デビューを飾ると、世代のトップランナーとして高校通算87発の本塁打を量産。貴重な右打ちのロングヒッターということで、メジャーも含めた各球団が熱視線を送り、ジャイアンツドラフト当日まで1位候補に挙げていました。

 しかし、指名したのはみちのくの剛腕・由規でした。先発完投型の投手として、157キロを誇る本格派右腕を何としても獲得したいとの最終決定がなされたそうです。由規は5球団競合の末、ヤクルトへ。気持ちを前面に押し出しピッチングスタイルで、神宮のツバメ党に愛される存在になっていきます。巨人は外れ1位で熊本工のスピードスター藤村大介を指名。2011年にはセ・リーグ盗塁王に輝き、新風を吹かせましたが、28歳での現役引退は早すぎるとの声が多方面から聞かれました。

 そして中田翔北の大地で堂々の主砲に成長。素材としての確かさと、日本ハム特有の育成力が合致した結果でしょう。「巨人・中田翔」が誕生していたら、どんな成績を残していたか…を想像するのも、また楽しいものです。

2014年ドラフト
【回避】早大・有原航平
【指名】智弁学園・岡本和真

 この年のナンバーワンは早大の即戦力エース・有原航平。巨人も早い段階から最有力候補にリストアップし、その将来性を注視していました。実力は疑いようがない。それではなぜ回避したのか。まずはその年のチーム事情です。原監督の采配によってリーグ3連覇を達成しながらも、4番を固定できず、8人が入れ替わりました。シーズンを通じて軸を任せられるロングヒッターの獲得、育成が課題だったのです。

 そして競合か、単独か、もポイントになります。有原の競合は必至で、抽選負けの場合、ワンランク下の選手の取り合いになってしまう。しかし単独なら、シミュレーション通りの選手を確保できます。岡本は高校生内野手ながら、本職が一塁ということもあり、「助っ人外国人とポジションがかぶる」との声も当時、他球団のスカウトの間からは聞かれました。競合にはならなかったのです。

 結果的に、この年の岡本単独指名はスカウト陣の特大ホームラン。今季は史上最年少での「3割、30発、100打点」をマークし、巨人軍の屋台骨を支えるまでに成長しました。有原も日本ハムでの4年間で37勝と、申し分ない成績を積み重ねています。

 さて、吉田君の進路はどこになるのでしょうか。杉内俊哉が現役引退し、背番号18も空くことから、「巨人・吉田輝星」を諦めきれないG党の皆さんも、多いかもしれませんね…。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

エッ、俺じゃないんすか?巨人が最終的にドラ1指名しなかった金の卵たち